陸地を行く
人魚


※足立さんと付き合ってるif話
※性的関係を匂わす描写があります




「透さんの顔って、正直普通じゃないですか」

彼女は唐突にもの言う事が多いので面倒臭そうな時はスルーを決めるが、今回は流石につまみを運ぶ手を止めた。

「……僕の事馬鹿にしてるの?」
「あ、違くて。普通なのになんか色気あるって言うか、創作意欲が湧く顔なんですよね。女の子のドールしか作りたくなかったのに」

改めても微妙に貶されているのだが。 まあ、でも彼女はこの普通な顔が好きらしい。

ふぅん、とだけ返してまた食事を再開した僕の顔をみやびちゃんはまじまじと見つめてくる。 食事中にあんまり見つめられるのは、あまり落ち着かない。というか若干ウザい。

「なに?」
「いや、どこに色気を感じるんだろうって」

そう言い放つとみやびちゃんは鞄からスケッチブックを取り出してガリガリと絵を描き始めた。角度的に見えないけど多分僕の似顔絵。

「なんかポーズ取った方がいいの?」
「作品作りというよりかは観察スケッチなのでいつも通りでいいですよ」
「ふーん」

お言葉に甘えて手元の携帯を弄りながら柿の種をビールで流し込む。 何が面白いのかは分からないけどじっとこっちを見て手元を動かすみやびちゃんが側にいるのは中々に気分が良かった。

単純に若い女の子がいるだけで華やぐのもあるが、冴えない一人暮らしの男の部屋に作家の彼女らしい、嫌ではない緊張感が走るから。



「色気を感じるってのはさー……」
「はい」
「単純に欲求不満なんじゃないの」
「はあ!?」

集中してる彼女を邪魔するのは可哀想だなと思って適当に過ごしたけど、10分15分も経つと流石に飽きてきてみやびちゃんに声を掛ける。

普通の顔なのに色気を感じるって、これ彼女なりの惚気なのか誘い方なのかなーなんて思ってたけど、違ったらしい。顔を真っ赤にして手を胸の前でクロスさせている。実にあざとい。

「僕の所為で味を占めちゃ……痛いんだけど」
「……変態」

強めに手の甲を抓られた。 文句を言うみやびちゃんの瞳は冷たい。

「なら喜んでたみやびちゃんも変態だよ」

照れ隠しなのかまたも僕の手の甲に伸びる手首を掴んでそのまま床に彼女の体を抑え込む。
体重をかけたまま僕自身の体をスライドさせて彼女の上に馬乗りになる。 押さえつけられた場所が痛いのか、みやびちゃんの瞳はしっとりと潤んでいる。

スケッチブックに描かれた精巧な僕もみやびちゃんの下敷きになった所為でくしゃりと歪んだが気にしない。
自分が押さえ込んだ下に彼女の全てがある。 支配しているという高揚なのか、満足感なのかは分からないが気分がとても良い。

彼女の首筋に自分の頭を埋め込むと甘ったるいバニラの香りがした。 すん、と香りを堪能して彼女の顔を見れば頬は赤く染まっていた。かわいいなあ、なんて。

「ちょっと!透さん」
「んーなあに?」
「……透さんがこういう事する時って…•」

折角の雰囲気を楽しんでいたのに、無粋だ。それでいて分かったような口を利く彼女が気に喰わなかった。
押さえ込んだ手首を意識的に強く握ればミシッと嫌な音が鳴るが無視して彼女の咥内を荒らしていく。

遮る様なキスを理解してますよ&翌ネ優しい笑みを浮かべ受け入れるみやびちゃんは普段の賢さはどこへ行ったのか馬鹿女そのものだ。

「ねえみやびちゃん」
「はい」
「愛してるからずっと側にいて」



結局の所、理由をくれる人なら彼女は誰でも良いのだろう。
何処までも行ける才能があるクセに臆病な彼女は手綱を握ってくれる人がいないとそこから動けない。

ヘッドホンの彼はずーっと側にいたのにね。 彼、今どうなっちゃってんだろ。

急に目標が無くなったら心がもぬけの殻になってしまってもおかしくない。 嗜虐的な好奇心がひょっこり芽生えてみやびちゃんに彼の様子を聞きたくなるが面倒事になりそうなのでぐっと堪えた。

それに目の前のうっとり惚けているみやびちゃんの相手をする方が楽しくて建設的だ。

もう一度ゆっくり唇を重ねると彼女の腕が僕の首裏に回った。





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