アゲインスト・ザ・サウザンド・ソーズ[1/11]
「テメェら根性見せろっ!」
小十郎のドスの効いた声に伊達軍が沸き立つ。
最悪な事に政宗が見つかる前に相手方の反乱軍が動き出してしまった。
寄せ集めと言えど元は奥州にひしめいていた有象無象の武将達。
血の気の多いのが揃っている上、伊達憎しの一念で団結しているので、どんな卑怯な手だろうとためらわず使ってくる厄介な相手だ。
政宗不在の情報が漏れるだろうとは思っていたが、ここまで動きが速いとは読んでいなかった。
「苔の一念か」
思わず意地の悪い笑みがこぼれる。
それを見た兵達は血の雨が降ると震え上がった。
政宗の抑止役としての命を離れて戦場に立つ事はそうないが、政宗を咎めると同時に己を押さえている小十郎は、政宗なしで戦場に立つとタガが外れて羅刹と化す。
伊達主従は二人で一つ。
決して片方だけ戦場に立たす事なかれ。
伊達軍の心得に上げられる不文律を破るのは往々にして件の主従自身であるのだから、手に負えない。
「いつもの事だ、戦が始まりゃ政宗様も帰ってくる!」
「そうだそうだ!」
「筆頭なら家出してても帰ってくるぜ!」
笑いながらの野次が飛ぶ。
伊達主従は両方いれば無敵だが、一人でも空恐ろしいほど強い事を付いてきてよく知っている伊達軍は、政宗不在だろうと覇気が衰えない。
「なら政宗様が帰ってくるぐらいの間は耐え抜いて威勢のいいとこ見せろや!」
「「「Yeah-ha-!!!!」」」
平野のこちらには伊達軍旗と大漁旗。
むこうには雑多な、今は見る事もなくなったものも多くある家紋入りの旗。
あの旗のほとんどは今後二度と掲げられる事はなくなるだろう。
「せめて綺麗に燃えな」
ちらちらと黒い光が小十郎の目のうちで燻っていた。
「伊達に盾突いた落とし前、テメェらの命で払ってもらうぜ!」
一番駆けに続けと足軽が騎馬が一気に駆け出す。
こうして総大将不在のまま伊達軍対奥州反乱軍の戦いの火蓋が切って落とされたのだった。
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