星を掴む馬鹿(久秀)[2/14]


 



そして話は冒頭に戻る。

座禅を組み、涼を取りながら己が欲に耳をすます久秀を見つけて、そのそばに彰道が寝転がってはや半刻経つ。

これみよがしに二人の間に剣を置いてじいっと久秀の様子を伺っている。

久秀は彰道の持つ剣に興味があった。

刀身に併せてか二掴みは長い柄には真田紐ではなくなめした獣皮が巻かれた珍しい作りで、鞘は漆こしらえの見事なものであるし、その内にいかな刃を収めているのか久秀の興味は尽きない。

それを彰道は知っている。

彰道に限らず、松永軍の者なら誰でも知っている。

事あるごとに久秀は剣を寄越せと彰道に詰め寄っているからだ。

何度か奪おうとして、その度に少なからぬ被害を松永軍は被り、一度として手にはできないでいる。

そしてまだ諦めていない。

命を狙われていると知りながら居座る彰道も大概だが、隙あらば寝首を掻くと公言している久秀も久秀である。

だが、剣の価値以上に萩原彰道自身が久秀には目障りでならなかった。


「卿自身には微塵の興味もない。むしろ目障りだ。消えてくれるとありがたい」

「俺は興味あるから、どっか行くつもりはない。ちなみに剣も渡さない」


手元に置いた木皿から煎餅を取るとばりばりと口にする。

ちゅんちゅんと雀がどこかで鳴く声以外物音のしないだだっ広い伽藍に咀嚼音が響く。

横になったままだから、ぼろぼろ床に屑が落ちるが彰道は気にも止めない。


「行儀が随分と悪いな。里が知れるぞ」

「はは、この程度じゃ身元は割れないさ」


彰道が口にする煎餅は久秀が直々に用意させたもので、彰道はそれがひどく嬉しかったらしく、昼の茶受けにはいつもこの煎餅を食べていた。


「誰が掃除すると思っているのだ」

「お前じゃないし、雀の餌にでもすればいいだろ」


溜め息を付くと腰を上げる。


「執務があるのでね、失礼するよ」

「じゃ俺も…」

「邪魔をしないでくれるかね?」


振り返り際、ぎっと睨むとようやく通じたらしく、しぶしぶ木皿を抱えて当て所なく歩き出した。






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