星を掴む馬鹿(久秀)[5/14]


 



今し方仕上げたばかり、まだ墨も乾かぬ書簡を損なえば、また一から書き直しになってしまう。

虚しさを愛しいと思うも、面倒な庶務を好んでやり直そうと思った事はない。

最近はどこぞの馬鹿と付き合うよりは遥かに有意義であるから紙に向かっていたが、それとて本意からは縁遠い。

だから火薬を使うのは避けたかった。

自室を焼き払うより、風魔が来るまで適当に相手した方が、面倒事は少なくて済むはずだと見当をつける。


「暇つぶしにもならんね」


振りかぶった剣の半ばで致命を狙った苦無を弾き飛ばす。

刺客は怯みもせず前身。

二人が左右から刃を突き出す。

ゆるりと左を火薬を撒く仕草だけで牽制し、右を薙ぎ払い、場所を空ける。

ひたひたに血の染みた畳を踏みながら移動すると、襖を切り裂いて武者姿が襲いかかってきた。

さすがに顔をしかめる。

松永軍の鎧と面当ては見覚えのある三人衆のもの。

叫びながら突き出される未慣れね槍にさらに眉根を寄せた。


「三人衆になれぬ事が不服だったか」

「三人衆など屑だっ!!俺が!!俺こそがっ!!」

「高慢はいつも破滅の一歩手前に現われる。身の程をわきまえたまえ」


確かに並の兵ではない太刀筋。

されど、三人衆にはやや劣る。

いつでも代えを用意されている三人衆の、その代えにさえ選ばれぬ腕にいくら自惚れたとは言え、哀れなまでに世を知らぬ。

快く思わぬ者に誑かされたか、踏み止どまれずに奈落に落ちたか。

いずれにしろ、文字通り私を捕って食いそうな猛執に我知らず舌なめずりする。

ぎすぎすと突き刺さる視線は琴線をくすぐるものだ。


「俺達を舐めるなぁっ!!!!!」


一歩下がった時。

背後の障子が蹴倒される気配がした。






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