星の散る夜に(久秀)[1/3]
夜、燃え盛る業火は美しい。
天を焦がす盛大な送り火を見て美しいと呟く人を目指す。
いまわの際さえ何の痛痒も無いのはありがたい。
一歩踏み出す度に体から零れ落ちた命が石畳に跳ねて、けれどすぐに先達の血に混じり分からなくなる。
握った剣は半ばから砕け散ってへし折れ、焼け焦げた陣羽織から焼き付いた鎧が剥き出しになっている。
せっかく久秀と揃いにした具足なのに、塗った漆も漆喰も分からぬ程に血に汚れて。
もう剣からは悪鬼が去り、悪鬼の力を失った今、辛うじて形を保てているこの身も、刻一刻と筋繊維が千切れて、生きながらに腐り始めている。
怪力を出すどころか走る事さえ危うい身体は、石畳の血路の上で眠る兵卒と同じ屍だ。
ただ動くか動かないかの違いだけで。
悪鬼は無事に逃げられただろうか。
久秀は無事だろうか。
そんな事ばかり考える。
篝火が燃え移ったのか、久秀が爆破したのか、燃やせる物は全て燃やし尽くさんとするそれで延々と本堂までの道が囲まれているが、門を守って死闘の末に邪鬼丸ごと討たれ倒れていた自分には分からない。
随分と長い間気を失っていた気もするし、ほんの数分だった気もする。
意識を取り戻せたのは偶然だろう。
長くは保たなくとも、最後に久秀に一目会うくらいはしたかった。
本気で、殺すつもりで向かい合った小十郎と、後から駆け付けた政宗には、紙一重で負けたが相応の深手を負わせた。
もしかしたら久秀が勝っているかもしれない。
一縷の望みに賭けて、石畳を血の尾を引きながら歩く。
道すがら直に仲間入りする松永軍と伊達軍の入り乱れた死体が、幾つかはとどめを刺されず転がるのを見ていると、もう殺さなくて良いのだとぼんやり感じる。
過去になった血を置き去りにして、最後の門に手を掛けた。
収まる鞘をなくした役立たずの剣を投げ捨て、門に着いた手に力を込める。
プチプチと指先の血管が潰れ、再び籠手から血が滴ったが、重い音を立てて門は開いた。
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