星の散る夜に(久秀)[3/3]
そう呟いたきり、萩原彰道は静かになった。
解けて広がった髪の中で、焦点の合わない目が事切れたままこちらを見ている。
鎧に開いた穴は幾つかは向こうまで突き抜けて残り少なくなった最後の血を垂れ流し、見える範囲の肌も血と火傷で汚らしく汚れていた。
何度殺そうとしても死ぬ事のなかった男の、余りに余りなあっけない最後。
雷に焼かれ、剣を失い、竜に討たれた憐れな鬼。
この私に進んで関わろうとしたばかりに、命を落とした馬鹿者だ。
「独眼竜に右目、卿等は天下を統べる智と武に優れてはいたが、少しばかり運が足らなかったらしい」
「……まつ…ながぁ…あ…ぁぁぁぁぁっ!!!!」
伏していた右目が首だけになっても喰い付かんばかりの勢いで血を怨嗟を吐く。
「なんだ、まだ生きていたのか」
出番が終わったのに役者が舞台に残る事ほど興ざめする事もないだろう。
「独眼竜は死んだのだ、右目だけが生きているのは、おかしいだろう?」
踏み込んで薙いだ剣先が右目の喉を切る。
見開いた目を憎悪にたぎらせた片倉小十郎が最後に声なく主の名を呼んだ。
ごつりと顎が石畳に落ちる。
これでもう、この場に私以外に生きている者はいなくなった。
彰道に言った通り、静かになった。
果たして風魔は最後に声なき声で何を呼んだのだろうか。
どうせなら、彰道にも私の名を呼ばせればよかった。
仮にも主なのだ。
あれは喜んで呼んだだろう。
騒がしさにかけては我が軍で右に出る者はいなかったあれは、最後にどんな声で私の名を呼んだろうか。
少し気になった。
その程度にはこの男の価値を私の中に認めていたのだろう。
「卿の言う通り、私は少し寂しいのかもしれんな」
こちらを見ている彰道が答えるはずはなかった。
明日はきっと卿等のために盛大な篝火を上げる事になるだろうと、誰にともなく一人呟いた。
また退屈な日々が始まる。
おにがきたりて異聞
星の散る夜に
end
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