甲斐に落ちた一番星(武田軍)[2/4]


 



萩原彰道。

そう名乗る謎の男をうちの旦那、武田軍騎馬隊隊長である真田幸村が拾って来たのは、二月ほど前にさかのぼる。

全裸で刀だけ持って歩いていたのを、気付かないまま馬で轢いたらしい。

奥州に程近い所まで遠駆けに出ていた事もあり、相手は伊達の人間である可能性が高かった。

胸に罰って書かれていたあたり、伊達軍らしい無茶な勝負の負け組にも見えた。


『伊達の重鎮をうっかりひき殺しました、と言い訳しても独眼竜殿は許して下さらぬだろうから、見つからぬように持って帰ってきたから、どうにかして始末しろ佐助』


旦那の黒い一面を俺は垣間見た。

しかも誘拐だよそれ。

仕方なく、上田城の裏山にでも埋めるかと馬の尻から蹴り落とすと、男は何事もなかったかのように、起き上がり挨拶をした。


『ひき殺されかけた事は忘れるから、ここに置いてくれ、伊達の人間じゃないから』


勘違いでこそこそ帰るはめになった旦那と、勝ったら置いてと言う萩原彰道の手合わせは熾烈を極め、本気で火焔車を繰り出す旦那と互角以上に渡り合ったあげく、彰道は勝利をもぎ取った。

これほどの使い手が未だ誰にも知られずにいたのかと、誰もが思い、旦那もその実力を認め、滞在を許した。

そしてその日から、鬼のような巨体による暑苦しい求愛と、真田忍軍の威信をかけた萩原彰道の身元調査が始まったのだった。






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