星辰の檻の調べ(元親)[2/7]
殿様と言うより山賊の親玉のような奴だったらしい松永久秀が、豊臣秀吉と相討ちになったと聞いたのは、耳の早い信長の口からだった。
信長が執心していたのは松永久秀が秘蔵する伝説の茶釜、古天明平蜘蛛だったのだが、その茶釜が松永の城から忽然と消えたと言うのだ。
信長の話は無駄に尺が長いので、先を促してもなかなか核心に迫るまで時間がかかったが、どうやら松永の死から信長の手下が城の荒探しをするまでの数日の内に、隠し部屋の奥から消えたらしい。
荒らされた形跡はなく、けれど正規の手順を踏んで開けられた幾重もの扉を見て、死んだ松永久秀が茶釜を取りに戻ったと噂となっているらしい。
「案外、その片目も節穴かも知れないな」
だが、事実は違うと信長は断言した。
松永久秀は傍若無人なりに人の心を掴む性分で、心酔している部下も多かった。
中でも、副将に相当する力を持っていた萩原彰道と言う男は心酔はなはだしく、小隊を連れた松永久秀が豊臣本陣を攻めている間、徳川軍を吸収した豊臣軍本隊十二万と軍師竹中半兵衛の足止めをしてのける、にわかには信じ難い命を受け、やり遂げる手腕を見せたと言うのだ。
大阪城の天守閣ごと松永久秀と豊臣秀吉が相討ちにならず、竹中半兵衛を討った萩原彰道が間に合っていたなら、歴史はさらに大きく変わっていただろう。
その萩原彰道が生きていて、主のために茶釜を取りに来た……信長はそう読んだ。
当たり前だが、豊臣秀吉と竹中半兵衛が討たれた戦場に、萩原彰道を打ち取れるだけの武将はおらず、また、徳川家康を人質にされて戦っていた本田忠勝は竹中半兵衛が討たれた直後に家康を救出し徳川軍を連れて離脱した。
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