星辰の檻の調べ(元親)[4/7]
「ははっ!この俺の目が節穴たぁ吹いてくれるじゃねぇか!」
「いや、だーいぶ節穴だと思うが」
手にしていた灯籠から船尾の南蛮製油壺に火を入れると、蝋燭を吹いて消した。
ぼんやりこちらを見ている男を睨み付ける。
「鬼ヶ島の鬼てぇのはこの俺よ!長曾我部元親よ!」
「知らないな」
思わず錨槍を床板に落とした。
「冗談だ。…そんな泣きそうな顔するなよ」
「し、してねぇ!」
真面目腐った顔で言われたら冗談だとは思わない。
「俺は嘘吐くのが好きなんだ、悪いな」
何事かと甲板から湧いて出た手下達に俺が呼ぶまで来るなと元親が怒鳴る。
船に乗った時もそうだったが、不自然なまでに兵卒に会わない。
俺に会わせないように人払いがなされている。
余所者を乗せる警戒なら見張りを立てるだろうが、乗船以降はりついているのは船長である元親本人。
本州四国間の渡しが散歩レベルの難易度だと言え舵一つ取っていないのは異様過ぎる。
兵卒程度では相手にならないと思われている。
つまり、正体はバレバレと見て間違いないだろう。
「ちなみに、人を困らせるのはもっと好きだ」
「…螺子曲がった根性しやがって」
「それくらいは覚悟してただろう?この萩原彰道を相手にしてるんだからな」
静かになった夜の後甲板に材木の軋みと、打ち付ける波音が大きく響く。
「いつから気付きやがった」
「最初からだな。どうせ信長にこれを取って来いとでも言われたんだろう?」
錨槍を担ぎ直した元親に向かい合って、床に置いていた木箱を包んだ風呂敷を持ち上げて揺らす。
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