鬼畜の星、鬼の星(佐助)[2/6]
おれは酒よりも、用意した肴を摘む。
炙った干物に、菠薐草のお浸し、鴨と葉物の汁、猪の角煮。
「しっかしまあ、ずいぶん豪勢なもの食ってるよねー」
佐助の言葉に苦笑いする。
あまりに雑穀やら薄味の漬物だけの、質素すぎる戦国時代の食卓では俺は満足できなかった。
白いご飯さえなく、味噌醤油塩砂糖は高級品でどれも薄味。
上杉謙信が塩を送った話がある様に、甲斐には海がないので魚はほとんど手に入らない。
味が薄くバリエーションもなくどれも色味が茶色くては、ご飯を食べても元気が出ない事この上ない。
前田家があれだけ旨そうな物ばかり食えるのは、加賀百万石の領地と略奪があってこそだ。
むしろ前田の男の胃袋を満たすために信長はあんな広い領地を与えたんじゃないかとか思ってしまう。
俺は毎日一食は綺麗な姉さん方とお座敷で舌に合うものを食べている。
おかげで遊び人だとか、女遊びが激しいだとか噂が絶えない。
お館様から貰っている禄──要は給料──を残らず食い潰し、足りない時は町のならず者をのしてカツアゲしたのを元手に、花札や半丁で荒稼ぎし、それでも足りない時はお館様に頼んで密命を請けて臨時収入を得ていた。
それもこれも美味しい物を食うためである。
この酒の肴もかなり値が張るらしく、佐助は幸村に取られない様に皿を分けて確保するみみっちさを見せていた。
口に運ぶ度にへにゃりと顔が綻ぶ忍が可愛くて仕方ない。
「こんな旨い肴なんて久し振りだよ!」
「そりゃあ良かった」
薄給と聞こえたる真田忍が噛み締める至福を見て、俺も至福を噛み締めた。
上から見下ろすと、簡易な着物の間から左の乳首が丸見えだったりする。
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