一番星道中記(佐助)[4/5]


 



畳が抜けて床から部下達がつくしん坊よろしく生えて手拭いを受け取っているのを佐助は背中越しに見た。

渡しているのは嫌いな男番付の三番に入る萩原彰道。

無駄に場所を取る身体を拭くためだと旅籠屋にあるありったけの手拭いを抱えているのを見るのももう三度になる。

まだ梅雨には早いが気の早い雨雲が山に掛かってだあだあと長雨を招いているのだ。

雨程度で忍が足止めされるわけはないが、侍の癖に馬も使えぬどっかの馬鹿侍のせいで足は遅々として進んでいない。

いっそ数人掛かりででも馬鹿を担いだ方が早くないかと、木の上の部下と何度か密語で話し合ったぐらいだ。

担ぎ棒に手足を縛り付けて鹿か猪の様に運ぼうと言ったら何故か部下全員が拒否してきた。

滝壺にうっかり落としたとしても俺様の責任じゃないから良い案だと思ったが、萩原の人身掌握は深刻な度合いで真田隊の集団意識を浸食している。

萩原はざっくり言えば阿呆だが、真田の旦那のような他の物が一切見えていない馬鹿ではない。

いや、旦那が本気で馬鹿だとは思ってないぜ?ただちょーって熱いなーって思うだけでさ。大将の為に奮闘する素敵な主だぜ?いや、真面目な話。






- 159 -

|
おにがきたりてTOP
HP
.