アゲインスト・ザ・サウザンド・ソーズ[6/11]
「どうなってやがる……」
訝しげにひそめた眉で、小十郎のただでさえ厳めしい顔が、さらに凄みを帯びるのを見ながら、政宗もほぞを噛んだ。
「先、越されちまった、って事か」
「呑気に言わないで下さい、政宗様」
本陣に向けて走る伊達軍が対面したのは、反乱軍のもの言わぬ屍ばかりだった。
まだ遠くの方からは叫び声が聞こえるので、反乱軍自体は殲滅されていないようではある。
「妙ですね。死んでるのはどれも反乱軍ばかりです」
政宗が手近にあった仏を足先で裏返すと、見事に鎧ごと背骨に届く深さで腹を裂かれている。
よほどの力か、人の脂でも切れ味が落ちない刀がないとこんな芸当はできない。
どの仏も似たり寄ったりな傷を負っている。
「どこかの軍勢が精鋭を集め隠密に動いていると考えた方が──」
「多分一人だ」
「一人でこれをやってのけたと?」
政宗が数歩先を顎で指したので、そちらを向く。
政宗がおかしそうに指したのは、鉄柱兵、のそばに落ちている鉄柱。
「これは…」
「ついさっきな、こんな芸当ができそうな奴に一人会ったばかりだぜ」
芯まで鉄でできた一抱えの太さの鉄柱が半ばから切り落とされている。
とても刃筋が通っているとは思えない曲線の断面。
刀の切れ味を示すように鉄柱の縁は、触れば切れそうな鋭さを持っていた。
「萩原彰道…ですか」
「可能性は十分あるぜ」
「でもなぜこの様な真似を?」
「Ha!やつのcrazyな頭に聞いてみりゃわかるだろ?……小十郎、馬を用意しろ」
「やはり行きますか」
らんらんと目を光らせ、声を低くする政宗に小十郎は溜め息をつき、仕方なしに騎馬隊に馬を用意させるよう告げた。
「生臭い!生臭いよ!」
体温で血の腐敗が進むと魚が腐ったような悪臭が全身から立ちのぼる。
とてもではないが我慢できる程度のものではない。
「悪鬼!助けてプリーズ!」
『うぬは騒がしい』
あらかた片付き静かになった戦場に彰道の情けないわめき声が響く。
「マジ無理!吐きそう!吐く!」
『手間のかかる…』
そう言いつつ助けてくれる悪鬼が、本当はイイ奴だって俺は知ってる。
ありがとう悪鬼。
酷い目に合わされてる率が高いけど、ツンデレなだけだって分かってる。
ありがとう、俺のドラ●もん。
『これでよいであろう』
「わぁ!ありがとう────って!また全裸かよ!」
ほのかな光りに包まれた血塗れの体は、あっという間に血の染み一つないすべっすべの肌をさらす裸体となった。
「せっかく服着たのに!」
『あのままでも良かったが』
「ありがとう!礼は言うけど感謝はしない!」
訂正。ドラ●もんじゃなくてサディスティック星の住人だ。もしくは魔界的いい人。
「また服を探すか…」
『その時間はないだろうがな』
「へ?」
そこらの仏から服を剥ごうと考えてたのに。
遠くから砂埃を立てながら高速で何かが接近して来るのが見えた。
「デジャヴ?」
なんかオープニングでみた事ある気がするなー、あの馬の乗り方。
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