アゲインスト・ザ・サウザンド・ソーズ[7/11]


 



「見つけた!萩原彰道────ッ!!!!」


うっわー。楽しそうに人の名前叫びながら馬で突っ込んで来ますよ、あの独眼竜。

その後ろから竜の右目と奥州愚連隊が追いかけて来てるし。


『後はうぬでどうにかしろ。腹もくちくなったゆえ、我は寝る』

「えぇっ!?」


血の染みが消えた剣が光ると以前と同様に静かになった。


「ジーザス」


彼らが殺る気満々に見えるのは自分だけでしょうか。









「あれが萩原彰道ですか、政宗様!?」

「間違いねぇ!あのcrazyな格好、奴だ!」


『くれいじー』の意味は分かり兼ねますが、イカれたとかそんな意味だと察します。

この戦場に武具どころか服さえ身に着けず立つなど、とても正気とは言えない。

両手放しを止め、政宗様が手綱を握るとさらに速度を上げて突っ走って行く。


「政宗様!」


止まるつもりはおありですか!

そう言う前に鞍で横座りになって、馬から飛び下りた。


「政宗様!無茶です!」


飛び下りた先にいた萩原彰道が口を開けたのが見えたが、すぐ政宗様の影に遮られた。









「らぁぁっ!」


馬の加速で勢いをつけた蹴りで萩原彰道の首を狙う。

目を丸くした顔を踏みにじる寸前、屈まれて避けられた。

でかいくせに素早い。

頭上を通り過ぎて着地するつもりでいたが、下からの突き上げる衝撃に体勢を崩す。


「なっ!」

「あっぶねー!」


一瞬で勢いが完全に殺され、俺は仰向けのまま、腰を支点に奴の右肩に担がれていた。


「何しやがんだ!」

「それはこっちのセリフだ!」


腹筋の力で上体を起こすと右手で顔面を殴ろうとするが、空いている左手で止められる。


「Shit!」

「なんで喧嘩腰なの!」

「あぁ!?テメェが人の戦かっさらったからだろが裸親父!まだ服着てなかったのかよ!やっぱり趣味じゃねぇか!」

「趣味じゃないから!さっきまで着てたから!」

「じゃあ脱ぐのが趣味か」

「誤解だぁ!」


蛇のように腰に巻き付いた右腕は、左手でいくら殴ってもびくともしない。

刀を抜こうにもその腕が邪魔だ。

身に着けた甲冑と六爪の重さに、俺自身でさえ動きを制限されるのに、体格のいい俺の体重がさらに上乗せされて奴の右肩にはかかっている。

ちょっとは重そうな素振りくらい見せてもいいものを、揺らぎもしないのがさらに腹立たしい。


「降ろせ」

「誤解を解かないと切られそうなんだけど」

「あぁ、切るぜ?」

「敵じゃないんだってば!」

「んなこた関係ねぇ!テメェがムカつく。理由なんざそれで十分だ!」

「超俺様!」


薄々だがこいつが俺に危害を加えるつもりがないのは分かる。

俺がこいつに興味があるのも確かだ。

たが、ムカつくもんはムカつく。

この俺相手に余裕かましてるのが気に食わない。


「政──伊達軍が危ないと思って、俺は助太刀しただけだ」


あげく助太刀か。

どんだけ上から物見てんだよ。


「危ないのはテメェの頭だ!俺に助太刀なんぞいるか!だいたい何なんだテメェは!」

「善意の協力者」

「答えになってねぇ」

「……通りすがりの無職?」


困ったように首をかしげる仕草に、頭突きを食らわせた。


「何にしろテメェはムカつく。本気で勝負しやがれ、萩原彰道!」

「結局それがしたいわけね…」


無理な体勢で頭をぶつけ合ったまま、俺は食いつくように彰道を睨み付けた。



 


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