かぜがふく[2/2]


 



自分がこの地に数奇な巡り合わせと成り行きと打算と生死を賭した選択により辿り着いてから早三年が経とうとしている。

異世界から迷い込んだ怪異なる力と叡智を持つ勇者とも魔王ともなり得る資質を持つ男が周囲の全てを巻き込み世界を変える大冒険を────するなんて言う展開は、この三年間結局の所、なかった。

さらに言えば、未だ自身が天下を取ったわけでも、武将と言う武将を口説き落としはべらせているわけでもない。

確かに様々な事件で一枚噛み、あるいは一杯食わされ、若しくは一役買い、名を売るには到ったものの、夜の天下への道はまだまだ遠い。

なぜこんな事態になったのか。

冷静に考えるまでもなく、理由は相手が相手だからだとしか言い様がない。

パワフルかつキャラの濃さに賭けては右に出る者もいないし出たくもないし、付き合っているだけで体力は減るし、全員が主人公級だし話聞かないし。

あいつらムードとかフラグとか容赦なくクラッシュしていくんだよ、もうなんなの。

とにかく、人生とか人間とか捨ててまで暗躍している割に釣果はかんばしくない。

今日も今日とて例にもれず黒焦げで全裸である。

月夜を眺めて少しセンチメンタルかつホームシックな気持ちにもなろうものであった。


「…同人読みてぇ……」


思い出すのは自室に秘蔵した輝かんばかりの珠玉の同人誌たち。

彼らが身内の手に渡る可能性を考えると夜も眠れなかった日々は今や遥か遠い。

ホームシックと同時に、今更帰るわけにはいかないと言う気持ちも湧き上がってくるのは、その辺りの負の遺産の扱いとか認知とかがどうなっているか考えるだに恐ろしいからだろう。

友人と結んだ、死んだ時はお互いの同人誌を処分し合う約束が果たされている事を祈るしかない。

そう、自分がこの戦国BASARAの世界に来て随分と月日が流れた。

当然として萩原彰道の名を名乗るようになって久しく、同時に、帰ると言う選択肢がもはや自分の中からは消え失せている事を気に止めることもなくなった三年目。

今年もまた、終わりの見えない動乱の夏をこの世界は迎えていた。






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