ネイキッド・ハード・ギグ[1/30]
身体を揺さぶられる感覚に意識がゆっくりと浮上する。
暑くもなく寒くもない暗い場所。
耳朶を打つ声は耳触りがよく、起こすどころかもう一度眠りに誘うように聞こえる。
軟らかな何かが額を撫ぜていく。
「起きろ」
声が聞こえたので、うっすらと目を開けるが、暗いせいで閉じているのと変わりない。
すっと顔を撫でていたものが遠ざかり、横を何かが移動して湿気た空気が動く。
覚えのない温度のない何かに触れられるのは慣れないようでひどく心地よかった。
今まで触れた事がないような軟らかく弾力がある綿のような肌触り。
それをもう一度探して、とうに布団から畳にはみ出していた手をさらに伸ばすと、ゴムの塊が手の甲に押しつけられた。
「ん…」
「急に手ぇ出すな。踏んだだろ」
再び目を開けると小さな明かりが灯っていた。
それに照らされた部屋と一人の影。
「良く寝られたみたいだな」
「おはよう」
「もう昼だ」
どうやら夢ではなかったらしい。
その証拠に小十郎のかかとが俺の右手の甲を踏みにじっているが痛くない。
「足のけて」
「忘れてたな、悪かった」
手に乗った小十郎の足には温度がなかった。
他のものに触れた時は違和感はなかったが、温度感覚がない状態で触れた人肌は、まるで別物だった。
今度悪鬼が起きた時に温度感覚だけは戻してもらおう。
なんかもったいないし。
「わざわざ起こしに来てくれたの」
こんな辺ぴなとこまで。
言外に表しつつ、掛け布団をふみ脱いだまま横に寝そべると、壁一面の填め殺しの格子がぼんやりと見えた。
改めて今自分がいるのが座敷牢なのだと認識する。
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