ネイキッド・ハード・ギグ[8/30]


 



「……っ!」


低く掠れた声が聞こえる。男の声だ。

さっきから喘ぎを耐える声と激しい水音が、俺の頭を犯していた。

聞き覚えのある、あの男の声だと気付くのに随分時間がかかった。

当たり前だ。奴がここにいるわけがない、そう思ったからだ。

俺が無理したせいで死にかけてんじゃないかと、迎えに来た小十郎の屋敷は、思った以上に入り組んでいて俺は見事に迷った。

そのあげく、暗いどん詰まりで立ち往生。

どうしたもんかと、迎え酒で温くなった頭を掻いていると、すぐ横の襖から、随分いやらしい声が漏れていた。

まさか朝から一発やってんじゃねぇか、なんて下卑た思いで開けて覗いた向こうは、予想以上に色めいていた。

座敷牢。

ほの暗い明りで照らされた室内には誰もおらず、声は右手の引き戸、恐らく厠から。

俺は何か気になって、音もなく襖を開けると、錠前の掛かっていない格子戸をそっとくぐった。


「……も一回しなきゃ」


しっかりと聞こえた声にぎょっとする。

喘いでいたのは男だが、小十郎ではない。

戸の隙間から厠の中の明りが漏れている。

出刃亀だとは思ったが、覗かずにはいられなかった。

同じ明りでも狭い厠は明るく照らされて、中の様子がよく見えた。


(………なっ!?)


鍛え上げられた大きな体躯、ざんばらに伸びた髪と髭、見間違えようのない男、彰道の姿があった。


「……うぅ………」


こちらに気付かぬまま、床に座り込んで自慰に耽っている。

身体に見合った大きな逸物を熟れさせて左手でぐちゃぐちゃ慰め、あまつさえ、女の様に右手で己の胸を腫れるほどに揉んでいる彰道に絶句した。

板間には既に吐き出した精液が飛び散り、ぎちぎちに勃起した奴のものから白濁混じりの先走りがだらだらと新たに滴り続けている。

同性の自慰を見たのは初めてだった。

戦場で猛りを治めるために抜く事は誰しもままあったが、覗く趣味などない。

だが、同性という枠の中で考えていたおぞましさからは、この男の姿は遠かった。


「苦しっ…、…」


身悶えする下半身が精液でぬめっている。

熱に浮かされた肌は上気し、快楽だけ追い求める目は濁る。

俺なんかよりはるかに男臭い汗の匂い。

起立した男根も、手も、骨の造りも俺より大きい。

なのにそれを見て俺は確かに欲情していた。



 


- 29 -

|
おにがきたりてTOP
HP
.