ネイキッド・ハード・ギグ[16/30]
「反乱軍を一人で鎮圧した大男がいるんだって?」
「ああ」
もう城下町はその男の話題で持ち切りだよと、慶次が笑いながら入れっ放しだった茶をすする。
政宗様が飲まなかったので余っている茶菓子を慶次に渡すと、俺も茶を口に含んだ。
温いがいい渋みが出ている。
「じゃあ本当なんだなー!政宗が貞操狙われてるって!」
ぶばっ。
書類には掛からなかったが、茶が畳を濡らした。
「がはっごほっ!」
「大丈夫?片倉さん?」
慶次のでかい手が背をさする。
鼻から茶が吹き出して痛かったが、そんな事はどうでもいい。
「だ、誰が政宗様の貞操を狙ってるだぁ!?」
「その男がさ!なんでも、勝負に勝ったら政宗を好きにしていいって条件で再戦するらしいって、女の子が騒いでたよ?」
はい鼻水拭いてと渡された懐紙で思い切り鼻をかむと、慶次に投げ付けた。
「汚っ!」
「今すぐその噂、消してこい」
「無茶言うねぇ、片倉さんも」
指先でつまんだ紙を屑入れに捨てると苦笑いする。
「政宗様が再戦したがってるのは確かだ。だが、あいつに、彰道に政宗様を好きにさせるつもりはねぇ」
「へー、彰道って言うんだ!」
「政宗様と戦う条件に、負けたら何でも言う事を聞けと抜かしやがった」
まだ持っていた湯飲みが机にぶつかって音を立てる。
「政宗様を好きにするなんぞ身の程知らずが!例え政宗様が負けたとしても、この小十郎が体を張って政宗様をお守りする!」
青筋立てた小十郎に若干慶次が引く。
「彰道ってやつが貞操狙ってるのは本当?」
「好きにするってだけで貞操だとは一言も言ってねぇ」
「じゃあ、片倉さんは政宗とそいつを戦わせたいの?たくないの?」
「…………」
本心を言えば、今すぐ萩原彰道の首を刎ねてやりたい。
今なら屋敷にいる彰道を殺せば、見つからなかったと言い訳すればすむ。
政宗様は落胆なされるだろうが、危険は少ない。
だが、最善の手かと言えばそうでもない。
条件を諦めさせ、抱き込む事ができたなら、あれは大きな戦力になる。
「戦わせたくねぇ」
「だろうね。片倉さんは政宗の事が大切で仕方ないって感じだし」
「まぁなんとかするさ。慶次、お前は噂を消して回っとけ」
「わかったよ、貞操って部分だけでも消えるように努力するよ」
ふぅと息を吐いて会話は終わった。
小十郎は政宗の分も仕事をこなすべく机に向かう。
床にこぼれた茶を拭き終わった慶次は、立ち上がりその背を見下ろす。
まさか、政宗の貞操が前だけとは言え既に奪われた後だとは言えずに、努めて平静を装ってその場を後にした。
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