ネイキッド・ハード・ギグ[25/30]
「そこまでして欲しいもんか、男の貞操が」
「欲しいねぇ、心底」
正眼から肩へ構え直した小十郎の構えに対し、すてごろである彰道はどう出ても不利だった。
そもそも彰道に小十郎を殺すつもりがないのは明らかだ。
刀を振るう、しかも腕の立つ男を無傷で取り押さえるのは至難の技。
だが、彰道からは諦めた気配は微塵も感じられない。
「血を流せば頭も冷えるだろう?」
ひゅっと切っ先が踊る。
小さな明かりで橙に光る刃が、避けたはずの彰道の頬をかすめて翻る。
切り下ろしが衝きに変化し、横っ飛びで避けた背後の漆喰に穴を穿った。
ぞっとする話だが、彰道の眼が剣撃をつぶさに見ているのを感じた。
この男には武道の才はあるが、武道の基礎がなっていない。
ただ、見て、避ける。
日常の動作と同じ程度で回避しているが、それが驚くほど速い。
走法が独特で、円を描いて背後に回り込もうとするものだから、座敷牢の中で延々回るはめになる。
首を狙えば肘にかすって、また逃げられる。
畳を裸足で踏む音と刀が空を切る音の間隔がどんどんと短くなり、攻撃は剣舞に変わっていた。
そうして、器用に身をかわす彰道の隙を待つ。
常人では割り込めない意識の狭間が、少し、ほんの少しだけでも広がる瞬間を。
小十郎が今までと同じように突きの一撃を繰り出すと、唐突に軽い手応えが返る。
変化は刹那。
ぐらりと男の裸身が影絵のように揺れた瞬間、思うより速く、二撃目の突きを繰り出していた。
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