ネイキッド・ハード・ギグ[26/30]
脇の下を通り過ぎた黒龍が向かう先にぎょっとした。
そこにあるのは油がたっぷりと張られた明かり。
細長く伸びた首があっさり切り落とされると、皿が火の点いた縄と油ごと畳に落ちる。
手を伸ばした。
今の自分なら落ちる前に拾えるはずだ。
皿の縁が指にかかり、宙の油をすくい上げるまではよかった。
縄は皿に落ちて、皿の内で火が上るが外には広がらなかった。
しかしそれは一瞬よりも長い隙を生み出していた。
ごつりとした骨を切る手応え。
さらに踏み出し、刃を肉へとねじ込むと、阿とした彰道の顔がさらに近くなる。
柄をしっかりと掴んだ黒龍は、確かとは言い難い畳の上での踏ん張りにも答え、十分な威力を発揮した。
広く平らな肩骨の下を刀の背が擦れながら通る不快な雑音と共に、彰道の背へと顔を出したのは刃先と血。
勢いのまま壁に突き刺されば、素早く手を放し、反撃を警戒して離れる。
「かっ…」
ごほっと彰道が吐血する。
黒龍は明かりを拾おうとした彰道の左の肩口より下、左脇腹のすぐ上、左胸を突き抜け、その身体を縫い止めていた。
肺を貫き、心の臓の脇を抜ける刀傷は致命傷に違いない深さ。
拍動に合わせ、胸から血が細く強く噴き出す。
それは背中でも同じで、白い漆喰に黒々と飛沫を飛ばしている。
全てを照らしているのは、彰道の手から転げ落ちた明かり一つ。
広がった油が畳を焼いているが、火を消化するほど黒血がだくだくとこぼれ落ちる。
息をする度に血を吐く彰道はどこかぼんやりと傷を見ている。
刀を抜けば流れ落ちる血がこの男を殺すだろう。
小十郎は冷徹な思考で刀を引き戻した。
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