ネイキッド・ハード・ギグ[27/30]


 



刀が抜けた長細い傷から一気に血があふれ出した。

思わず手で押さえたが、外だけではなく内へも噴き出し、肺胞を次々と血が満たせば、息に乗って鼻や口からもあふれ出す。


「えぶ、ごぷっ」


喋ろうにも、喉からせり上ってくる血が泡立つだけ。

息苦しさに呻く。

痛みとは無関係に身体が酸素を欲していた。


「馬鹿な事を考えるからだ」


壁にもたれて見た小十郎の顔は確かに────ヤクザだった。

月を背に東京湾に沈み逝くコンクリート詰めの犠牲者を見る様な微笑が、炎に照らされて影を踊らせている。

頬傷がぎらぎらした目とあいまって、見る者を凍て付かせる笑み。

今のあんたなら、ベネチア国際映画祭で助演男優賞も夢じゃないよ。

銀幕の前で子供が本気泣き入るよ。

惜しむらくは、それが演技じゃなくて本気だって事です。

早く死なねぇかなとか絶対思ってる小十郎から逃げるため、壁ぞいにずるずると移動を試みる。

なんとか逃げろ自分。

この場を乗り切れば、超鬼畜な僕ドラえもんが助けてくれるかもしれないし、くれないかもしれない。

今更ながらに活きがり過ぎたと思う。

中身はただの腐女子だし!

経験値が低い自分にはまだまだ小十郎は高い壁だったのかもしれない。

生きていればまたチャレンジする機会もあるさ。

それまでにハードルの低そうな元親とか慶次辺りを喰ってレベルを上げればいい。

じぃっと自分が死ぬのを今か今かと待ち構えている小十郎の視線が訝しげに細められる瞬間、手で掬った血を目潰しに浴びせかけた。


「なっ!」


片手で目をかばった小十郎に右肩から体当たりを仕掛けると、瞬発力に優る身体がみぞおちに食い込む。

だが、脚が震えてそのままもつれて小十郎を押し倒した。

血を流し過ぎて、まともに立てなくなっているのに気付かなかった。

驚愕に目を見開いた小十郎が振ろうとした手から黒龍をはじき飛ばし、押さえ付けながら、それ以上自分が身動きが取れなくなった現状に頭が痛くなった。






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