ネイキッド・ハード・ギグ[28/30]


 



「往生際が悪いじゃねぇか」


押さえ込まれた手首はびくともしないが、彰道の手はもう冷たくなり始めている。

覆いかぶさった身体が相変わらずの馬鹿力を発揮しているのが不思議なほどの出血。

傷口から滴る血は、ばたばたと着物に落ちて染みを広げる。

温かい血潮は際限などないように噴き出して確実に彰道の体力を奪っていた。


「もう立つ事もできねぇくせに」


相変わらずへらへら笑っている。

困った様に眉を下げるが、何も言わない。


「死ぬぞ、テメェ」

「死にたくはないって言った」

「なら趣味の悪い条件を撤回すれば、今から逃がしてやる。うまくすれば死なないかもな」

「できれば撤回したくもない」


馬鹿かこいつは。


「小十郎が条件飲んでくれれば八方丸くおさまるんだよ」

「随分と角の立つ丸だがな」


思わず吹き出した。

自身の生死を歯牙にもかけない、あるいは死ぬなどかけらも思っていない口振りに。

ふっと気が抜けてからかう様に笑ってしまった。


「そんなに欲しいか、俺が」


手首を掴む力が途端、強くなった。


「ほ、欲しいよ」

「……………」


客観的に見て、髭面全裸のおっさんが頬を染めるのは気色悪い。

しかも血塗れの死に損ないの、だ。

それがどう見ても本気にしか取れない顔で、じっと反応を伺っているわけだ。

だから、気色悪さより笑いが先に来た。


「はははははは」


腹がよじれて引きつれるまで笑ったのは久しぶりだ。

政宗様に見られたら気が違ったとでも思われるだろう。

だが、おかしくて仕方ないのだから仕方ない。

おろおろする彰道がさらに笑いを誘った。

己の傷を先に心配するのが普通だろうに、何なんだこの男は。

あべこべ過ぎる。

だが、そこがいいとでも女なら言うだろう。






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