ムーン・ライジング・フロム・マウンテン・ストーリー[2/6]


 



『トンネルを抜けるとそこは不思議の世界でした』ってのは常套句だが、『トンネルを抜けると全裸侍でした』ってのはまずないんじゃないだろうか。

と言うかまずいんじゃないだろうか。

ペンネーム萩原彰道。

見知らぬ森の中で刀だけ抱き締めて倒れてました。

刀だけってのは比喩でも何でもなく、全裸です。

でも問題そこじゃない。
もっとすごい問題があるよ。





なんか股の間にぶら下がってますが!?





なんかって言ってもこの世の人間の半分は持ってますがね!

しかも人様よりかなりご立派っぽい。いや、重要だけど今はどうでもいい。

ささやかながらあったはずの胸はアニキな胸板になり六つに割れた腹筋とご立派へと続き、太くて悩んでた脚はたくましくスネ毛天国へと激変。

ぷにぶにしていた二の腕も脂肪が削げ落ち、みっちりと筋肉が盛り上がり、手は刀の重さを感じないほど力強い。

個々のパーツが大きくなっていて、全体で見るとかなり背が伸び、厚みも増している。

股を覗いて調べたが、完全に男になっていた。

#photo3#

よっしゃ!じゃなかった、なんでやねん!

腐女子としては生まれ変わってフォモになりたいって願望は多かれ少なかれあるけど!

明らかに嫌がらせだよ!


だって


胸に


【罰】


って書いてあるもん!


起き上がって体を調べた時いやがおうでも目に入ったのは、胸に墨らしきもので大きく書かれた【罰】の文字。

悪鬼の口答えに対する罰らしい。

素っ裸が、なのか、男の体が、なのか。

両方の可能性が高い。

おかげで素直に喜べない。

何より全裸だし!


「夢?夢だったらいいなぁ」


低く太くなった声にびびりつつも、ギュッと頬をつねってみるが痛くない。

あ、夢?


『戯けが。うつつに決まっておろう』

「うひょっ!?」


再び聞こえた例の声に驚いて奇声をあげる。


『うぬの痛みは消したと言ったはずだ』


声が笑っているが、その出所がいつの間にか光りだした左手に握った刀だと知れて、叩き付けてやろうかと思ったが、今以上にヒドい事態になると嫌なので堪えた。


『軟弱な女の体で狩人など務まらぬから男にしたまでよ。全裸は罰だ。さらに言えば今後口答えすればその場で全裸にする』

「すっごく嫌だ!」


どこにいようと全裸にされるのか!?


『なれば良く働け。我はこの刀【邪鬼丸】の内で寝る。用もなく起こしても全裸だ』

「ちょっ!ここどこ!?ファンタジー的な詳しい説明は!?」

『汲み取れ』


そう言ったきり、刀は輝きを失い、静かになった。


「………」


刀を抜いてみるが変わった事は起こらず、磨き上げられた刀身にこれから見慣れるであろう見慣れぬ男のアホヅラが映っていた。


「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!」


当たる先を無くした憤りが叫びとなってほとばしったのを聞く者がいたなど彰道は知るよしもなかった。



 


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