ムーン・ライジング・フロム・マウンテン・ストーリー[3/6]


 



伊達政宗は思わず足を止め、腰の刀に手を掛けた。

今しがた聞こえた雄叫び。

まだ戦局は開いていないはずだが、既に小競り合いが始まっているのかもしれない。

小十郎の鍋に殺意を感じて、戦が始まり事がうやむやになるまで身を潜めるため林にわけ行ったが、敵の伏兵を見つけたのだとしたら、思わぬ所で利を得た事になる。


「気の短い敵さんもいたもんだ」


にやりと口角を上げ、牙を思わせる歯を剥き出すと、重装備を思わせぬ足取りで茂みを揺らす事なく影を前進した。

もう物音は聞こえないが、隠すつもりもないらしいおかしな気配で場所は知れた。

気配は一つ。

あるいはその一つ以外すでに死んだか。

すぐに開けた広場のような所に政宗は出た。

ずいぶん昔は川だったのか岩が山積し、木が生える事もできないらしく周囲から枝が張り出して縦長に続く自然の伽藍となっている。


「んなとこがあったとはな」


調べが浅かったと己に対して舌を打つ。

だが、この拠点を見つけた以上、潰せば相手の策もご破算だ。

百や二百の兵なら楽に収まる広場にいるのは、気配通りただ一人の男だった。

こちらにはかけらも気付いていないらしく、平らな岩の上で仁王立ちして刀を抜き放っている。

だが政宗の気を引いたのは男が全裸だった事だ。

一糸まとわぬ姿で、周りに誰もいないと思い込んでいるせいか、前を隠す素振りもない。

こんな珍妙な場でなければ政宗でさえ見惚れたであろう鍛え抜かれた体躯が、視界を遮るものがないため遠目にも分かった。

背骨にそって隆起する背筋、女にはない締まった尻、振り返ると見える……男として悔しいくらいアレな伝家の宝刀。

そしてその胸に書かれた文字も読めた。


「罰…?」


なんなんだあの男は。

政宗の頭には疑問符しか浮かばない。


「取りあえず突っ込むか」


考えるのを止めた政宗は隠れるのを止め、広場に足を踏み入れた。



 


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