ダーク・アイスクリーム[3/30]


 



ぴきぴきと自分のこめかみに青筋が走る音を聞きながら、道場を睥睨する事しばし。

蜘蛛の子を散らすようにその場にいた伊達の人間は持ち場へすっ飛んでいった。

当然だ。

これ以上ここにいたら俺が焼きを入れてやる。

残ったのは馬鹿────萩原彰道ただ一人。


「ぐっもーにん、小十郎。何?報酬先払いして………くれるわけないか」


詰め寄って胸倉を掴むとしょんぼりと目を逸らした。

たっぱがあるので上を向かれると無精髭の浮いた顎と喉仏しか見えない。


「テメェどう言う了見でうちの若いのを使ってやがる」

「いやー、ちょっと練習をしようかと」

「ほぅ…」


さらに青筋が大きくなる。


「何の練習だ?」

「ひ、秘密」


両の手で首筋を力一杯掴んで締め上げる。


「鬼ってやつが首を絞められても生きてられるか試してやる。先に首の骨が折れちまうかも知れねぇが構わねぇな?」

「構う!ものすごく構います!」


ごぼうの一本抜きで鍛えた握力は、自身の骨を軋ませながら彰道の首を確実に締め上げる。


「言います!言わせてもらいます!」

「最初からそう素直だと可愛げもあるんだがな」


放した首にはぐるりと指型が付いていた。

うなじには爪の後も付いているだろう。

本気で絞め殺すつもりで首を絞めたが、こいつは少々冷汗をかいたぐらいでピンピンしている。


「………」

「なんだ、人の顔をじろじろ見て」

「いやー、いい男だなぁーと」

「………………」


こいつの口から出る軽口は混じりっ気なしの本気だけだろうが────鬼は嘘を吐かないなんぞぬかしたのを信じたわけではないが────かけらも嬉しくない。


「俺はね、手加減の練習をしてたんだよ」

「なんだと?」

「手加減てやつが一切できないんだよ、俺」






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