ダーク・アイスクリーム[4/30]
慣れない顎の無精髭を撫でながら、視線の合う高さまで身をかがめた。
「手加減なしなら、俺は政宗を殺せる」
わざと一撃を受けて相手を捕まえて殺す芸当くらいはできる。
反則技にかけては今の俺に勝る相手もそうはいない。
なんせ、痛みがない上に生半可な怪我では死に様がない無敵モードなんだから。
「だろうな」
「!」
政宗を侮辱されて怒るだろうと予想したが、小十郎は怒るどころか、微笑を口の端に乗せていた。
「政宗様がてめぇごときに負けるわけがねぇ、くらいは言うと思ったんだが」
「負けはしねぇ。だが殺し合いなら、てめぇに分があるのは間違いねぇ。なんせ、殺し方もろくすぽ分からねぇ化け物だからな」
「そりゃな。死ににくいとかってレベ…程度じゃないからな」
背筋を伸ばすと、動いたせいで乱れた襟を正す。
胸板が厚いので、少し動くだけで前が乱れるのは面倒だ。
これがワイシャツならボタンが飛んでるな。
「まー、とにかく手加減を覚えん事には、面倒だし」
右手でくるりと回す木刀は実は4本目だったりする。
伊達兵と打ち合う時に思わず当てそうになった強打を、無理に曲げて床に叩き付けたせいで、半ばからへし折れたからだ。
つい力が込もってしまうが、あの戦場の武将のように、ちょっと力を込めるだけで簡単に人を殺せるだけの力が俺にはある。
試してみたが、素手で薪割りもできた。
カルシウムと脂肪でできた骨は、セルロースが主成分の丸太よりはるかに弱い。
文字通り人間は捻り潰せる存在になった。
だが、政宗をその対象にはしたくない。
確かに政宗との喧嘩は楽しいだろう。
けれど、決して、殺し合いたいわけじゃない。
政宗からぐぅの音も出ない完璧な勝利をむしり取り、美味しく美味しく小十郎を賞味する事こそが、今回の目標なんだから。
「付き合え、小十郎!」
びしっと木刀の先を小十郎に向けた。
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