ダーク・アイスクリーム[6/30]
突然、打ち込んだ剣先が膨らんだ鎬を滑り落ちた。
力負けした小十郎の木刀の上で、きしりながら打ち下ろされる俺の木刀。
その先に小十郎の左手首を見て、血の気が引いく。
踏ん張りを効かせて、崩れたかまえを立て直しにかかる。
わずかひと瞬き。
間に合え!
「「…っ!」」
辛うじて手首をそれた剣打は拳を掠めながら板間に鈍い音を立てて当たった。
逸れはした。
だが、風には血が舞った。
「小十郎っ!」
投げ出した木刀が床に跳ねる音。
その横にぽたりと落ちる小十郎の血。
「血!止血っ!応急処置!」
「騒ぐんじゃねぇ。浅い」
しかめっ面で傷を押さえていた右手を小十郎がのけると、左手が見えた。
確かに、傷自体は浅い。
だか、皮膚がこそげ落ちた擦過傷は手の甲を覆うほどに範囲が広く、とても安心できる程度ではなかった。
「どこが浅いって!」
「これぐらい後で手当てすれば…」
「今すぐする!」
無事な、けれど血の付いた右手を掴むと、道場から小十郎を引きずり出した。
「屋兵!怪我人だ!薬!医者!」
「この程度で医者を呼ぶな」
「何言ってんだ!こんな広い傷に家庭の医学で治療して病原菌が入ったらどうするんだ!破傷風になったら刀が握れなくなるぞ!」
「びょうげんきん…」
ずりずり渡り廊下で繋がっている母屋へ引っ張っていると、屋兵が早足で薬箱らしきタンスを持って来ているのにかち合った。
用意よく木桶に水までくんでいる。
あの速さで水をこぼさず移動してたのか…。
「屋兵、治療できるのか?」
「あっしらにゃ擦り傷なんて日常茶飯ですからね。しっかり治させてもらいますよ」
「がっちり頼む!」
握っていた右手を屋兵に渡すと、廊下のど真ん中で治療を始めた。
別に他に通るのは猫くらいなので問題ない。
大人しく治療されている小十郎は静かだった。
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