ダーク・アイスクリーム[7/30]
勘、と言うものは人一倍効く方だと自負している。
地中の土竜を刀で突き殺す芸当ぐらいはできる。
それが血筋なのかは分からないが、姉のたきほどではないにしても、嫌な気配を感じる勘は鋭い。
その勘に触る。
萩原彰道の存在はいつも強い警戒を俺に抱かせる。
まるで人にあらざる力、暗い声、鬼が────呼んでいる。
政宗様はただ妙な気配だと言っていたが、誰もいない部屋で背後を何かが横切ったような、何かの気配としか言えないものを濃厚にした、彰道の気配はそれだ。
ふとした瞬間に、近くにいるだけで産毛が逆立つ感がある。
だが、本人も周囲の者も、政宗様さえも気付いていない。
だから、良くないのだ。
こいつを政宗様に近付けては。
政宗様をこいつに近付けては。
良くない事が起こると、勘が告げる。
何故、よりによってこの男なのですか、政宗様。
利き手に手際良く下男が手当てをしていく。
それを彰道が座り込み横から覗き込んでいる。
いつものへらへらした笑いもなく、しごく真っ当な年相応の顔。
口を真一文字に結んで、大きい体をしょげさせている。
そわそわと、こちらをうかがう仕草は、やはり幼さを感じる。
「怪我させて、悪かった」
そう言うとうつむいてしまった。
下男は黙々と治療をしているし、静かさが耳障りだった。
手を伸ばす。
丁度良い高さに下がった彰道の頭を鷲掴みにするが、反応はない。
そのまま撫でるより乱暴に力任せに掻き回す。
痛んでいる風な髪は、癖が強いだけで指通りがよかったが、まとめて掴んで顔を上げさせると、ぶちぶちと千切れた。
「てめぇは、どうして俺を気にかける」
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