ダーク・アイスクリーム[11/30]
「随分sexyな格好してんじゃねぇか萩原彰道?」
驚いて丸くなった目が俺を映す。
やはり瞳の縁が不規則に揺らめいている。
「伊達政宗…」
「また誘ってやがんのか?あん時は自分で腰振ってやがったからな。でかい図体して尻使う方が向いてんじゃねぇか」
突き飛ばす勢いで押すと、水ごり様に敷かれたすのこにでかい尻で尻餅をつく。
「お前も…こりないな」
呆れた様に目尻を下げる姿に怒りは見て取れない。
その事に、悟られないよう胸を撫で下ろした。
正直、本気で激怒されて殴り掛かられたら堪らないと身構えていたが、少なくとも命の心配はしなくていいようだった。
「Ha!俺が忘れられねぇんじゃねぇかと思ってな」
「確かに、啼き叫ぶ政宗はいやらしくて忘れられそうにないな」
「すぐに忘れろ」
「断る」
真剣に言い返されて寒いものが走った。
「いやーあの時の政宗は可愛かった。あられもない事を口走りながらよがってなぁ」
「黙れ」
「次犯る時は俺が上な」
極めて軽く言っているが内容はえげつない。
情事の合間に見た限界直前の雄々しい分身を思い出して全力で抗議しようとした耳に、唸るような声が届いた。
たはと止まった目の前で、親指を立てたままの格好で彰道も固まっている。
いや、正面にかかった俺の物ではない影から後ずさっているが、彰道の背後には、もうろくな間はない。
背にしている井戸を囲む竹矢来。
横へは距離がありすぎる。
だが、逃げ場がないのは俺も同じだ。
「何をなされているのですか政宗様?」
静かだが、凄みのある声は間違いなく小十郎のものだった。
なんでここにいるんだ小十郎。
今の話を間違いなく聞いていただろう怒気を放つ小十郎から、俺は右の白壁へ向かって、彰道は左の母家に向かって飛びすさった。
「待たねぇか糞餓鬼共ぉっ!!!!」
ぶんっと何かを振るった音が聞こえたが、右目の死角であったし、振り向いて確認しようとも思わなかった。
勢いよく踏み切って瓦をよじ登り転がりながら道に着地すると脇目も振らずに逃げ出した。
背後で弁明を遮る打撲音がしたが、けして振り返ろうとは思わなかった。
けっして。
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