ムーン・ライジング・フロム・マウンテン・ストーリー[4/6]
抜き放った刀、【邪鬼丸】は刀と見せかけてその実、剣だった。
こしらえこそ刀のものだが、鞘にも反りはなく、刃も直刀で両刃。
叩いてなめしたように異常に薄い刃、と言うよりも極薄過ぎて刃先と刀身の厚さが同じ金属板が、刀の柄の先に付いているのは酷く違和感があった。
とても物を切るだけの強度があるようには思えない。
「大丈夫なの、これ?」
ひゅっと振り回すと、筋力が付いたからか針金を振り回すほどの力も要らず、すっぽ抜けそうな重さに感じる。
試しに足下から突き出た長細い岩に叩き付けてみたら、何の抵抗もなく岩の表面を薄切りにした。
切り取られた岩がのっぺり滑らかな切り口を晒したので、薄ら寒くなってすぐさま剣を鞘に収めた。
「……どうしよう」
「Ha!何をどうしようってんだテメェ」
「どおぉぅっ!?」
慌てすぎて剣を取り落としそうになったのも無理はない、はずだ。
一度聞いたら忘れられないあの声、あのアクセントが真後ろから聞こえのだから!生で!
「面白ぇもん振り回してんな」
ガバッと振り返った瞬間に叫び声を上げなかった自分を褒めたい。
ど、どっどど、独眼龍政宗ぇぇぇぇぇっ!!!!
「Crazyな格好しやがって、自慢のつもりか」
頭一つ小さい────どうやら自分の背はかなり伸びたようだ────伊達政宗が鼻を鳴らし、眼帯で隠していない左目の鋭い視線を下に、主に股間の辺りに向ける。
ここで恥じらったら男として気持ち悪いよね。
隠すべきなんだろうけど隠す物ないし。
こう言う時は、男はどうやって対処するんだ。
やらないか?は絶対違うし。
「ま、まぁ、見せて恥ずかしいほどのもんじゃないけどね」
男らしい対応ってこれでいいのか?
とりあえず堂々としとこう。
ムッとしたらしく眉間に皺をよせた政宗の顔はそれでも整っていて、上目遣いで見られると存外に可愛い。
「…食えねぇオッサンだな」
「オッ……!」
「テメェ以外に誰がいるってんだ?俺から見りゃ十分に親父だぜ」
傷付いた!
男になって10分と経たずオッサン・親父呼ばわりされて傷付いた!
生の声でなじられて嬉しかったのは墓の中まで持って行く秘密だ。
「そんなに年は変わらんわぁ!」
「Ah〜じゃあ老け顔だな」
「可愛くねぇ!顔は可愛いのに!」
「ぶはっ!」
口をついて出た本音に政宗は盛大に噴いた。
実際の所、この世界で政宗に可愛いなんて言う人間は小十郎くらいなもんだろう。
そばまで来ていた政宗が刀に手を掛け、心の距離的に数歩引く。
「Crazyなのは見た目だけじゃねぇってか、露出狂」
「好きで真っ裸なわけあるか!ほら!罰って書かれてるし!」
「そう言う性癖か、同情するが手加減はしねぇ」
「え?刀抜いちゃうの!?」
「テメェも抜けよ。ここにいるって事は最初からそのつもりだろう?」
完全に敵視されたらしい。
しかも何か勘違いされているらしい。
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