ダーク・アイスクリーム[16/30]


 



「まったく奥州に来てから酷い目にあってばかりだなー夢吉?」


小猿の夢吉がこくこくと同意する。

言葉は喋らなくとも、分かっていると返してくれる相棒は慶次には無くてはならない存在だった。

あるいは時に胸に疼痛を引き起こす郷愁を、忘れ、埋めるための卑怯な手段として連れ合いにしているのかもしれない。

だが、少なくとも義理の姉に笑って引き渡せるようになるまでは、夢吉見て誰かを思い出す事をやめられそうになかった。

昔だったら、我はそれほどに小さくないと、ずれた指摘が返って来ていた。

ほんの少し昔まで。


「片倉さんも政宗を大切にし過ぎなんだって」


枯れ笹に包んであったくこの実を夢吉が肩の上でぽりぽり囓る。

その仕草に、可愛らしい黄色い声が上がり、声に見合った可愛らしいお嬢さん方がこちらを見ていた。

それににこやかに笑って手を振ると、ちょっと驚いてから手を振り返してくれた。

雪国の娘の肌は白くて軟らかくて大好きだが、今日はどうやっても食い付きが悪い。

がっちがちに固めた【りいぜんと】のおかげで警戒はされなくなったが、やはり殴られた頬の腫れが引くまでは、ほいほい釣れないらしい。

楽しみが一つ減ってしまったわけだ。

ちょっと片倉さんを恨む。


「どっかにいいこはいないかね〜」

「女漁りかい、色男?」


夢吉が肩から飛び退いたのと、担いだ超刀を振りかぶったのは同時だった。

ごおっと吹いた風に舞い上げられた土埃に相手が目を瞑る。


「っぺ!土が…」


口に入った土を唾と共に吐き出す大男。

結い上げた髪が随分と高い位置にある。


「……誰だいあんた?」

「城で会っただろ?俺は萩原彰道。知らないとは言わせないぞ」


へらへらと髭面で笑っているのは確かに萩原彰道だった。






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