ダーク・アイスクリーム[20/30]
一瞬何の事かと思ったが、日本神話を思いだし、蝶の意味を悟った。
死人が渡る暗い三途の川よりも、神話にある死んだ魂が蝶となり進む美しい黄泉路を信じているのは慶次らしい。
蝶となって地底に着いた魂は、美しい砂を食べて永遠を黄泉で過ごす。
蝶になる方法を知らない魂は、行く先を失って力無く彷徨い餓鬼になったりとか何とか。
回りくどいが要は悪口だ。
「かなり失礼な言い回しだな」
「思った通り学が深いや。このご時世、古事記読んでるなんてさ」
ほんのり表情が緩んだのさえ微か。
構えた重厚な刀を危な気無く抜き放ち、その柄へ鞘を突き入れる静から動への転換。
「え?」
朱槍へと姿を変えた超刀を明らかに戦闘体制の慶次が振りかぶった。
「こんっなに人に勝ちたいと思ったのは、久し振りだよっ!」
「うおっ!?」
桜の花びらを散らす薄桃色の軌跡が、飛び退いた地面に突き刺さる。
荷車に踏み固められた往来をカチ割り飛び散る土くれ。
怪力から放たれる絶大なる縦一文字の一撃は、まごう事なき固有技の一目惚れ。
技レベルもなく範囲が慶次にしては狭いが、威力は初期技を軽く超えてくる。
「よっと!避けられたか」
小十郎に殴られた分の腹癒せとは言え、大人しく食らうには少々度を越していた。
他に恨まれる心当たりはないが、明るい喧嘩人であるはずの慶次から敵意さえ感じるこの喧嘩腰は、いかんとしたものか。
まだ繋がり切ってない頼りない手が、一撃を察した時から腰の邪鬼丸の柄を掴むかの所で戸惑っている。
「まだまだいくよっと!」
鞘を投げ捨てた慶次の二打目が間を置かず放たれた。
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