ムーン・ライジング・フロム・マウンテン・ストーリー[5/6]
でも違いますって言っても説得力ないよね、この格好。
変質者以外の何者でもないし。
刀を右肩に構えた政宗が顎で刀を抜けと催促するが、さすがに政宗相手には抜けないので構えっぽいものをとる。
格闘技とか一切やった事ないんだけどさ。
「奥州筆頭伊達政宗、推して参るっ!らぁっ!」
「はやっ!」
「ちっ」
振り下ろされた刀にためらいはなく、向き合ってみて実感したが異様に速い。
幸村のようにリーチがない分、一撃のタメが短く次の一手に瞬時に切り替わる。
だが、異常なのは自分の方なのだとすぐに分かった。
「ちょこまか逃げてんじゃねぇ!忍か!」
体術の基礎さえない自分が何故か政宗の攻撃を避ける事ができた。
しかも一撃一撃を見てから、だ。
縦の一閃は右脚と共に体を引き、次の切り上げを左脚を軸に飛び退いて躱す。
たまに交えられる蹴りも腕で受けるが言うほどの衝撃もない。
「しゃぁっ!」
「おぉっと!」
足場が悪く避けれない一撃を剣の鞘で狙って叩き返す。
鞘に当たった刀は力負けして政宗の手から高々と弾き飛ばされた。
「っ!馬鹿力がっ!」
じんと痺れる腕に政宗は歯ぎしりをした。
股間をぶらぶらさせている変態の癖にやけに強い。
鍛えた体は見掛け倒しではないらしい。
動きを見れば本気でないのが丸分かりな相手に、本気の一撃を受け止められ、あまつさえ刀を弾き飛ばされれば独眼龍も形無しだ。
こんなわけの分からない相手と戦ったのは幸村以来だろう。
切り掛かるつもりもないらしい相手に、不本意だが話しかけた。
上がった息を悟られぬように。
「テメェ…なにもんだ」
抜いた六爪の次の一爪を突き付けられてはいるが、もうそれを怖いとは思わなかった。
「へ?」
「名前だ、テメェの」
細い腰に目を奪われていて聞き損ねたらしい。
「名前、名前ね!あ────萩原彰道」
本名を名乗りたくなかったのと、名前が外見の性別と食い違うのとで、ペンネームを名乗った。
「萩原、彰道ね。反乱軍の斥候か?にしちゃずいぶん強えし、反乱軍にテメェみてぇのがいるなんて聞いてねぇが」
刀で肩を叩く横柄な態度が様になっている。
やっぱり近くで見ると一段と格好いいな。
「反乱軍?奥州って伊達が平定したんじゃないの?」
BASARAではそうなっていたはずだ。
一揆はあったが反乱はなかったはずだ。
「……知らねぇのか、反乱軍を?」
「あいにくと一切知らないし関係ない」
みるみる政宗の顔が渋面になると、近くの岩を蹴り飛ばす。
「Holy shit!ただの変態かよ!こんな時に…時間を…無駄にした!」
「酷っ!てかもしかして今戦してて伊達軍ヤバめ?」
「テメェには関係ねぇ!」
苛ついているままに一段高くなっていた岩場から降りると、政宗はそのまま森へと凄い勢いで走り出した。
「ちょっとぉ!」
「付いて来たらぶっ殺す!」
見る間に小さくなる人影。
声をかけた時には森の中からはもう政宗の怒声だけしか聞こえなかった。
「ど、どうしろと…」
誰も彼もなんでこんなに放置プレイなんだ…。
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