ダーク・アイスクリーム[22/30]


 



一撃、二撃。

一拍置いて兜割り。

華を散らしながら横薙。

左右から二度切り上げ、さらに大振り。

締めに唐竹割りを食らわす。

滑らかで途切れない連撃を対する萩原彰道はどこかぎこちない、けれど神速の捌きで防ぎ切っている。

政宗が言った通り武芸を習った事がないと見る者が見ればすぐにわかる動きだ。

町人衆の腕自慢達もそうだが、へその下の丹田や胸の水月を意識して動く事を知らないのだ。

手足を突っ張る力だけで動くから、滑らかな足捌きでも踏み込みが自然甘くなり、真価を発揮できない。

鍛練はしなくとも、さすがに基礎くらいは慶次も手習いしていた。

今は亡き血の繋がらない父から受ける武芸の稽古を慶次は楽しみにしていたくらいだったし、幼い頃の利家との戯れも鍛練の一部だった。

だが、今になって鍛練をしていなかった事を少し後悔した。

政宗の六爪を力技でもぎ取った力を身を持って知った。

重いのだ、軍神にも引けを取らぬ神速の一撃が。

叩き込んでいるこちらの刀の方が弾かれて甲高い残響を発する。

互いに決定打の無いまま打ち合えば、より負傷の多い萩原彰道が先に音を上げそうだが、打ち合うほどに剣先が鋭さを増し、その先は見えない。


「あんた強いねぇっ!!」


軒先の板が小石が名も知らぬ草が、萩原彰道のかわりに切られて風に舞う。

何度打ち合ったか、固めていたはずの髪が解けて視界にかかるようになってきた。

夢吉はどこか安全な所へ退避したのか、刀を抜いてから姿が見えない。

俺は夢中になって我武者羅に切りかかっていた。

夢吉がどこへ行ったかなど、気付きもせずに。






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