ダーク・アイスクリーム[25/30]
彰道の一撃は速かった。
振り下ろすと同時に、盾にした紅槍に衝撃が突き刺さる。
距離を無視して届いたのは、刀にまとわりついた黒い炎。
そこから衝撃派を伴った身の丈ほどある炎が刃の形で無数に放たれている。
狙いを定めているとは思えない乱撃だが数が多過ぎる。
間髪なく叩き付けられる炎に歯を噛み締めて慶次は耐えた。
紅槍に当たって砕けた刃は炎に戻って火の粉を盛大に散らす。
肌に落ちた火の粉は雪のように暖かさを奪っては消えていく。
火の粉の吹雪は本物の吹雪さながらに、慶次の体温と体力を削り続けた。
紅槍を掴む指先が冷えきって、感覚が無くなり寒さに歯が鳴り始めるが、まだ刃の嵐は止まない。
ほんの数瞬しかたっていないはずだとわかっていても、死の恐怖が背を駆けた。
防ぎ続ければ負ける。
なら踏み込むしかない。
けれど、隙を見出すまで体力が保つかを試していられる時間は慶次にはなかった。
「うおおぉぉぉぉっ!!」
紅槍を掲げて走り出す。
避けようのない刃に何度も足をすくわれそうになりながら、一撃食らうごとに力を奪われる黒い炎に耐えながら。
恐ろしいものにぶち当たっていく恐怖に鈍りそうになるが、広げられた翼のような炎の内に飛び込んだ。
黒い炎に包まれても、ぎらぎらと不気味な目が光っていた。
自分の手を咥えた彰道に向けて渾身の力を込めて一刀を振り下ろす。
走る力、倒れ込む力、全てを預けたこれ以上ない一撃。
俺を焼き尽くそうと雪崩れてくる翼の形の炎さえ切り裂いて。
刀を振り下ろしたままの彰道の、守られていない胴、そこを狙って袈裟掛けに。
殺意さえ超えてただ一撃を見舞う刹那。
互いを食らい合った火と風が耐え切れずに弾け飛んだ。
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