ダーク・アイスクリーム[30/30]


 



予定外に早く接触してしまったが、計画は十分に余裕を持って進めている。

これくらいの変更があったところで問題にはならない。

でなければわざわざ俺様がで張ってくるわけがない。

旦那や大将の今後の進退、ひいては天下取りを左右するほどの重要性を持って秘密裏に進められる奥州甲斐同盟の、よりにもよって締結間近に起こった奥州反乱。

同盟延期を申し入れるはずだった日に現われ、わずか一騎ほんの数刻で反乱軍を鎮圧、いや、殲滅せしめた男。

伊達の切り札か、同盟を内から切り崩そうとする豊臣あるいは織田の手のものか。

どちらだろうといつかは武田の脅威になる事は間違いない御仁なら、早い目に表舞台から消えてもらうのが上策だ。

真っ向から戦して勝とうなんてのは、うちのお盛んな上司に任せておいて、忍は忍らしく汚い手で仕事をこなせば良い。

くすぐったいくらい優しく撫でる手も馬鹿正直に心配している目も演技だとしたら俺様の目も欺ける大した技量だが、嘘だろうと真実だろうと、旦那の敵であれば容赦はしない。

そう日を置かずに殺すだろう相手に佐助は微笑みかけた。

いつも通り身体とは裏腹に心は凍て付いた忍のまま、萩原彰道という男の真意を、言葉の裏の意味を汲み取らんと鋭さを増していく。

裏など読まなくていいのは真田の旦那くらいだ。

月の終わりには奥州の地を踏むだろう主を思い出すと、嘘の笑いに少しだけ本当の苦笑が混じった気がした。






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