ハルマゲドン・バスターズ[6/11]


 



人知れず猿飛佐助が奥州筆頭伊達政宗の下を訪れるようになったのは、去年の秋半ば、押し迫る冬に向け農民達を束ねた他領主を平らげ終わった頃だった。

年の瀬まではまだ間があったが、戦で疲弊した民を労う意味で税制の見直しや、大掛かりな秋祭りを行うべく、奥州の城が上へ下への大騒ぎをしていた時である。

騒がしいのは、上層部まで伊達色に染まった侍で構成されているからであって、単に忙しさが例年の倍はあった、と言うだけであったが。

さしもの伊達政宗も、城から逃げ出すことは叶わず、大人しく日々豪雪のごとく降り積もる仕事をこなしつづけていた。

そんなある一日に、猿飛佐助は甲斐からの書状を携え訪れたのである。

忍が部屋に通されたのは、政宗の仕事が本日はここまでで良いでしょうと小十郎に切り上げられた夜半も過ぎてからだった。

げんなりしたまま卓の上から見上げた忍は、襖の開閉で揺れる明かりの下でなぜか生き生きとしてこちらを見ていたのを良く覚えている。


「いっやー奥州って本当に飯が上手いね!三食上げ膳据え膳ありがとね旦那」


この忍、忍にあるまじき事に城の正面から入ってきただけでは飽きたらず、与えられた控え室で一日飲み食いして寛いでいたらしい。

曰く、勝手に出歩いて忍らしくしたら怒るでしょ、だとか、忙しいの邪魔しちゃわるいでしょ戦終わりの時期って本当軍備大変だしさ、だとか、ここって甲斐から遠くて遠くて俺様だってくたくただし昼寝くらいいいっしょだと。

他領主の城で布団引いて昼寝する忍がどこにいる。

この図々しさは真田幸村ではなく武田信玄により培われたものであるように感じた。

ささやかならぬ怒りを感じたが、城の正面から他国の使者としてきた者を、それが忍であっても無下にすることなど、国主の教えを叩き込まれた政宗にできはしなかった。






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