ハルマゲドン・バスターズ[7/11]
何より、政宗が待ちに待っていたあの男からの書状を携えているとなれば、てぐすね引いて待っていたとさえ言える相手だ。
こちらから言い出すまでもなく、忍が懐から綺麗にたたまれた書状を恭しく取り出した。
興奮のままに受け取ったそれは、間違いなく真田幸村からの果たし合いを求める書だった。
中を読むために広げようとした鼻先に、さらにもう一通、書が突き出された。
「あ?」
「ごっめーん、こっちが本命なんだわ」
邪魔をされ苦々しく眉間に皺を寄せた政宗が、忍から引ったくるように受け取った書を見て我が目を疑った。
目を見開いた政宗がつぶさに書を観察する。
送り主は、甲斐の虎武田信玄御人。
真田幸村の物とは異なる、格式を異する紙質から、国として公式な物だと分かるそれ。
怪訝な顔付きで睨みつけた忍が俺様にあたらないでよと肩をすくめてみせた。
「うちの大将からさ」
書の名を指して言うまでもないことをわざと言うのは、明らかに小馬鹿にしているのだろうが、そんな安い挑発に乗るほど伊達の名は安くない。
この忍はそれさえ考えておちょくっているのだから、質が悪い。
「見りゃ分かる」
指を振り払い、一息に書を広げる。
豪快を字にしたような、書家のような字がつらつらと並び、最後に確かに武田信玄の花印が押されている。
何よりの、その内容が、どう見えても甲斐の虎の考えそうなことしか書いていない。
本物と見て間違いないだろう。
「同盟組みたいんだって、あんたと」
書の概要は、曰く甲斐と奥州の利を持って武田と伊達の益となさん、越後の龍には手出し無用、と。
何かしら嫌みを言ってやろうと口をもごつかせはしたが、それは飲み込むことにした。
「良いぜ、理由なんざ分かりきってるからな」
その夜、調印された武田と伊達の甲斐奥州同盟は、誰知られる事なく冬を越えた。
夏を迎え、その存在感を際立たせるに至り、政宗の独断に腹を据えかねた者達をあぶり出すほどに、ただの一存でこの同盟は締結されたものだった。
しかし、片倉小十郎は何も言わなかった。
それが何よりこの同盟が奥州の地の、ひいては伊達政宗の益になることの何よりの証明だった。
故に、いつ何時であろうと、猿飛佐助は甲斐からの使者として伊達政宗の私室へと立ち入る事を正式に許されたのであった。
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