ドウタヌキ?


第六回放送まで


ある人は言う「人間ほど脆弱な生き物はいない」と。
確かに人間は爪も牙も毛皮も持っていない。しかしこれほどまでに世界中ありとあらゆるところに分布している生物というのは、人間ぐらいのものではないだろうか。
極寒の氷の上でも、灼熱の砂漠でも、人間は適応する。
そしてバトロワごっこ2日目の夜。
日は落ち、満月と星明かりだけが島を照らす中、多くの参加者に自覚はなかったが、前日よりはるかに「行動しやすく」なっていた。
闇に目が慣れたのだ。
そしてゲームそのものにも慣れてきた、コツが掴めてきた。
だから前夜に比べ、行動している者が多かった。
この適応力は主催者側にとっても予想外のことであり、またその「慣れ」に気づいているのは今のところごく少数の人間であった。
此処に一人、例外がいる。
ジョーカーとして途中参加となった大佑だ。結局のところ彼の有利は大当たり判定武器を持っていることと他の参加者に存在を知られていないということ・・・そしてこれは緊急決定で配布されたものだが、本来ゲームバランスに影響を及ぼすアイテムでありながら大城の機転によって破壊された『簡易レーダー』、これを所持していた。
大佑の参戦を知っているのは浅葱とガラのみ(浅葱に見られていたことを大佑は知らないが)であり、不意を突くのには充分だ、が、騙し打ちとなると難易度が上がる。
参加者名簿は配布されているのでそれに記載されていない大佑が、それも逹瑯やガラと共にやんちゃでならしている彼が声をかければ必ず警戒される。
その辺りは大佑もよく分かっているので、逹瑯とガラ以外には徹底して不意を突く作戦でいくつもりであった。
健一のように「騙しやすい」人物であればまた話は別になるが。
ざっと名簿を見たところ、あと騙せそうなのはせいぜいシドの明希ぐらいなものだ。大佑は闇の中を苦心しながら進んでいた。
逹瑯かガラを手にしたAK47で襲撃することを思いながら歩いていた。
彼は気づいていない、致命的なミスをしたことに気づいていない。
禁止エリアへ誘導し健一をゲームオーバーに追い込んだのは見事だった、スタンガンを取り忘れたのは凡ミスだが・・・そして今となってはもうその致命的なミスに気づきようもないが。
健一は逹瑯に関する重要な情報を一つ、知っていた。
完全に大佑を仲間だと思っていた健一が言わなかったのは彼らしいド忘れだが、大佑がもう少し逹瑯の話を振っていたらきっとそれを思い出し口にしただろう。
健一は逹瑯とミヤが一緒に行動していることをソフィアのジルから聞いて知っていた。
逹瑯とミヤが一緒に行動している。
この事実に狼狽するのは二人をよく知る人物だけであろうが、いや、そもそも「バンド対抗戦」で「一緒に行動している」ことに驚かれるのはこの二人ぐらいのものだろうが・・・
大佑がそれを知ったなら逹瑯とバトルしようなどとは思わなかっただろう。
むしろ避ける方向に動いただろう。
自分の悪友が最凶で最鏡のタッグを組み、ゲームの局面を大きく掻きまわしていることなど知らずに大佑は逹瑯を探して進んでいた。

大佑
【武器】AK47(カラシニコフ)、簡易レーダー
【所属】スタッズ
【状態】青
【行動方針】《ジョーカー》として途中参戦、逹瑯とガラを優先して倒す。
【特性】?



幕間―敗者控室―

教室の片隅でDの英蔵はかつあげされる高校生よろしく同バンドのリズム隊二人に囲まれ、引きつった笑みを浮かべながらしゃがみこんでいた。
戻って来たばかりの恒人は少々ご機嫌斜めといった顔で英蔵を見ている。
長い、というよりは深い付き合いの英蔵にはそれが表面的なものであることは分かっていたが、このリズム隊がタッグを組めばもれなくいぢられる身の上であるため安心はできない。
まあ、教室に入るなりろくに言葉も交わしたことがないような相手からにも「ツンデレちゃんだー」と呼ばれたことに恒人は多少困ってはいたのだけれど。
物言いのせいで勘違いされやすいが恒人はあまり「怒る」という感情がない。
英蔵は自分がゲームオーバーになった経緯をしどろもどろになりながら話していた。
二回目である大城はにやにやしながら聞いていて、恒人は話が進むほどに呆れた顔になっていく。
「ひでじぞうさん!」
「いや、俺を某国営放送に出てきそうなキャラクターっぽく呼ぶのやめてよ」
「普通に呼びました、空耳でしょう?」
「え、あ・・・うん」
「英蔵さん、そんな阿呆な理由でゲームオーバーになったんっすか?」
「もうマジで反省してます、ごめん・・・」
「ひどい、ひどすぎる・・・」
「あ、でもね、ほら言ったじゃん!ゲームオーバーになってからだけど涙ちゃん助けたの!」
「それルール違反でしょう・・・」
真面目な恒人はこんな《ごっこ遊び》でも規律は守るらしかった。大城が隣で笑い転げている。
正当な意見ではあるため英蔵は返す言葉がない。
「っていうか俺は英蔵さん待って・・・あ、いや英蔵さんと大城さん待ってたんですよ」
「え・・・そうだったの?」
「銃声がしたから一回離れて、すぐ廃校に戻って来たんです・・・でも会えなかったから」
「ツネちゃん寂しかったんだ〜」
大城に笑われて恒人は口を尖らせる。
「違いますよ、バンド対抗戦なら固まってたほうがいいと思っただけですっ・・・つーか英蔵さんが大城さんと一緒に行動してないってのがそもそもおかしいでしょうがっ!!!」
「だから、それは、うっかりしてて・・・」
「どっちも『ひ』で始まる名前なんですよ!普通分かるでしょ!!」
しゃがみこんで視線を合わせてくる恒人に英蔵は余計なことを言う。
「ツネ・・・パンツ見えてるよ」
「「ちぇりおおおおおおおおおお!!!」」
リズム隊の拳による突っ込みは・・・かなり痛かった。
そして一方、暴走中の先輩盲目な骨ボーカルを残してゲームオーバーとなったメリーの面々。
「どう考えてもあれだ、ガラ君のせいだよ!」
結生の言葉にネロが力強く頷く。
「だな、そもそもアイツが全部悪い」
「いや、お前のゲームオーバーは違うんじゃ・・・」
「ガラ君が悪い!」
二番目にガラの煽りを食ったテツの言葉を無視して健一も頷いて言う。
「大佑君がああなのはガラ君のせいだよ」
それこそガラの責任ではなかろうが、テツはしかたないなと肩を竦めて口を挿むのをやめることに決めた。
「そもそもバンド対抗戦で京さん一筋ってのがどうなの!?」
自らの迂闊さもあったが90%ぐらいガラのせいでゲームオーバーになった結生はご立腹だ。
キリトの性格は宇宙の法則みたいなものなので誰も突っ込まない。
ガラに対する包囲網は着実に狭まりつつあった。
「ってゆーかみんな和んじゃって・・・俺がスピーカー管理役になってることに関する突っ込みはないのね」
ぽつりと呟くユッケの肩をサトチが叩いて爽やかに笑う。
「頑張れユケツ!!」
「じゃあ手伝えよバカヤス!!」
「嫌だ!!」
すっかり和んだ教室の真ん中、ソフィアの松岡と都が中央の机の上に立ち、両手を拡声器のように口をあてて呼びかけた。
「みなさ〜ん、こうしてるのも退屈やろ!?都から提案やで〜!」
「どうですか?ここは一つ・・・誰が優勝するのか賭けをしません?ま、一口500円でどうですか?」
この言葉にそれなりに暇だった敗者面々はすぐに乗った。
まぁ、全員ゲームオーバーになっているバンドを除き、皆が自分のメンバーに賭けたのだが。
ちなみにメリーはイヤミを込めてガラに賭けた、負けたらガラに払わせるつもりで。
既に脱落しているバンドや個人参加の者は、イノランかムックの二人に賭けた。


幕間―管理システム―

「危険乱数という名称がややラノベっぽくてアレならば・・・イノラン君は水のような人間です」
台車に積まれた箱を整理しているタクヤの言葉にヒデは「うん?」と目を細めた。
「液体であるが故に形にとらわれず、液体であるが故にどんな形にもはまります、しかし流動しているから掴むことができない。色を垂らせば何色にも染まるでしょう、凍ることも気化することもあるでしょう、しかし・・・水なんですよ。俺と同じ属性です、だから俺とイノラン君はずっと・・・友達だったんです」
タクヤは表面にだけ笑みを張りつけヒデを見る。
「ヒデさん。武器配布は確かにランダムでしたが、あの《マーダー指令》が入ったマシンガンだけは、イノラン君に渡るように計算して配りましたね?」
Y・J氏が少し驚いた顔でヒデとタクヤの顔を見比べる。
「どうだろうね」
ヒデはにっこりと笑ってタクヤを見る。
「そういえば」とY・J氏が口を開いた。
「昨日ヒデは『調停役が調停放棄したらどうなる?』ってイノランのことを言ったけど、正しい意味がようやく分かったよ」
「う〜ん?」
「調停役であることはイコール調停する能力があるってことだもんね、だったらその逆だってできる」
ヒデは面白そうに頷いた。
「そういうことだよ。イノランちゃんが一番このゲームを引っ掻きまわしてくれてる」
「この先活躍しそうなムックの二人をあえて見逃した、それに手榴弾のトラップに生首のトラップ、引っ掛ける糸にいたっては様々なところに張り巡らせてある。それから・・・あえて、知ったうえで『命中力が極端に低い』ネコパンチバズをJの手に渡るようにした」
タクヤがひょいと肩を竦めて言う。
「一番怖いのはイノラン君の場合、計算してやってるんじゃなくて思いつきの気まぐれでやっているってとこやけどね。じゃあ敗者控室のみなさんにお弁当配ってきますよ」
「お願いね〜」
先輩格であるタクヤがそんな雑用で行ったら、ある意味戦々恐々な事態になりそうではあるが、Y・J氏が行くのも変な話、というか彼の場合、他の参加者に突かれたらうっかり喋ってはいけないことまで喋ってしまいそうなのでしかたがない。
タクヤが台車を押して部屋を出ようとした時、Y・J氏が声を上げた。
「コータ君とムックチームが接触しそうだよ!」


アンジェロのベーシスト、コータは休める場所を、正確には『ゆっくり考えをまとめられる場所』を探して歩いていた。
実兄であるキリトが《主催者反撃ルート》を突き進み、ゲームオーバーとなった以上、その意志を継ぐのが弟として、そしてメンバーとしての務めだ。
コータにとってキリトは自慢の兄であり、自慢のメンバーなのだ。
タケオもゲームオーバーとなった今、コータは自らの頭で《主催者反撃ルート》の方法を見つけ出し、そして成功させなければいけない。
しかし今のところコータにその方法は分かっていなかった。
コータは足を止める、視線の先、木にもたれかかるようにして背の高い人影が立って空を見ていた。
「・・・誰だ!?」
「おわっ!!!」
人影は驚いたように飛びあがるとこちらに懐中電灯を向けた。
「・・・コータさん?あ、逹瑯です、ムックの逹瑯。武器はこれです、バタフライナイフ」
そう言って逹瑯は手に持ったバタフライナイフを掲げて見せた。
「俺はサバイバルナイフだ、戦うつもりはないよ。主催者反撃ルートの方法を探してるんだ」
「ああ、キリトさんと同じですか」
ホホホーとどこかで鳥の声がした。ハトか?とコータは首を傾げる。ハトって夜中に鳴くものだったろうか、いや梟かもしれない。
逹瑯はくるくるとバタフライナイフを回転させて笑った。
「いやあ、やっぱ疑われるとまずいからなぁ。実は俺、一人じゃないんっすよ」
へらへらと笑う逹瑯をコータは怪訝そうに見る。逹瑯をよく知るものであればこの時点でなにかヤバイと感じ取っただろうがコータはそこまで付き合いが深くなかった。
「ミヤ君、下りてきなよ。相手先輩だし」
逹瑯がそう言うと同時に木からミヤが飛び下りてきた。先ほど逹瑯は空ではなく木の上にいたミヤを見ていたのかとコータは一人納得する。
「こんばんは」とミヤは丁重に頭を下げてから言う。
「主催者反撃ルートの方法なら分かりますよ」
「え!?マジ!?」
「えらくマジです」
予想外の言葉に驚くコータにミヤはあくまで静かな声音で言う。
「偶然思いついたんですよ。しかし俺らは適当に遊ぶつもりなんでやる気はないんです」
「・・・それ、教えてくれない?」
「う〜ん、いいですよ。ある意味で簡単なことなんですよ。首輪を外せばいいだけの話ですから」
そこでミヤは少しだけ微笑んだようだった。
「え?首輪なんてないだろ」
「この《ごっこ遊び》の場合は制服が首輪の代理なんですよ」
「あ!!!じゃあ・・・」
「そうです、制服を脱げばいいんですよ、脱いではいけないルールは記載されてないし、脱いでしまえば禁止エリアに引っかかることもない、場所を主催者側に知られることもありませんから、そのまま廃校に突撃です。まあ・・・パンツ一枚で行くことになりますけどね」
そんな単純なことだったのかとコータは唖然とした。同時にその方法ならばキリトは分かるだろうし実行するだろうことも分かった。
「そうか、助かったよ。サンキュー!」
「お役に立てて光栄です」
淡々と言うミヤと、軽薄な笑みを浮かべている逹瑯に礼を言ってコータは歩き出した。
適当な場所でさっさと制服を脱いで廃校へ突撃しようと思いながら。
武器がサバイバルナイフだけというのは少し不安だったが、やるしかない、キリトの後を継げるのは自分だ。
去って行ったコータの背中を見送ってから、逹瑯はにんまりとした顔でミヤを見る。
「ミヤ君って博打好きだよねぇ・・・」
「まあ、後で土下座してあやまるさ」
「マゾかっこいい!!」

少し離れた茂みの中でコータは足を止めた。下手に屋根がある場所よりも人に見つからなくていいだろうと思って周囲を見渡す。
パンツ一枚で突撃というのは多少抵抗があったがキリトはやったのだ、ならば自分にもできる。
「よし、やるか!」
そう言ってブレザーに手をかけた時、
ピ。
ピ。
胸のランプが点滅を始めた。
「・・・は?」
意味が分からない、何故だ。
誤作動?このタイミングで?
このタイミング・・・
「・・・っあああ!!!」
《大まかなルールは原作BRになぞる》。そう、ルールブックにもしっかり掲載されていた《主催者側に不利になる動きをしたものは、強制的にゲームオーバーとする》と書かれていた。
「と、盗聴されて・・・」
まともに口にしてしまっていた、《主催者反撃ルート》を進むと、そしてその方法までもミヤとの会話で、全部筒抜けだ。
ピピピピピピ。
そこでコータは気づく、後ろを振り返る、闇の向こう、もう姿の見えないミヤの顔を思い浮かべる。
《主催者反撃ルート》の方法に気づくほど頭の回る男が、盗聴器の存在や強制ゲームオーバーに思いが至らないなんてことがあるだろうか。
だとすれば、
だとするならば、
ランプが激しく点滅する。
「た、謀られたっ!!!!!」
長い電子音と共にランプの色は赤に変わった。

ミヤ
【武器】レミントンM870、ギターの弦、水倉りすかのカッターナイフ
【所属】ムック
【状態】青
【行動方針】優勝を狙う、策戦を立てて不意打ち攻撃
【特性】策士リーダー
(アイテム《鳩笛》を所持しています)

逹瑯
【武器】サイボーグクロちゃんのガトリング砲、バタフライナイフ
【所属】ムック
【状態】青
【行動方針】優勝を狙う、ミヤの立てた策戦に従う。
【特性】俺様サドモード
(ルナシー全員が《ジョーカー》である可能性を疑っています・イノランが《マシンガンのマーダー》である確証を得ています)

【コータ アンジェロ ゲームオーバー】サバイバルナイフ放置。

【残り17人】(アンジェロ脱落)



「大佑、大佑」
山道を進む大佑に声をかける人物がいた、聞き覚えのあるその声に大佑は懐中電灯をの光を当てようとするが「明かりは消してくれ!居場所が他のヤツにバレる!」と阻まれた。
しかたなく、大佑は懐中電灯を消す。
漆黒の闇が下りた。
「なぁ、ガラだろ?さっきは悪かったって、どこにいるんだよ!」
「姿は見せない、でも話がある。俺も急に逃げて悪かったよ、話を聞いてくれ」
「え〜!?とか言っていきなり撃ってきたりしねぇだろうな!」
「俺の武器は鉈だ、安心しろ」
大佑は深く息を吐く。闇の中、ガラがどの方向にいるのかさえ分からない、少し湿り気のあるその声は暗い森の中で響き渡り、半ば幻想的な雰囲気だった。
「・・・話ってなんだよ?」
「俺は京さんを優勝させるために動いてる」
一瞬きょとんとした大佑だがすぐに吹き出すように笑った。
「ま、あ・・・そうだろうよ」
「大佑、お前もそうしないか、どっちにしろ優勝はないんだろ?それに・・・京さんを攻撃できるのか?」
「できるできない以前に勝てる気がしねぇんだよ」
つーか誰もしてねぇだろと大佑は肩を竦める。
「だったら俺達、バラバラのまま手を組まないか?一緒には行動できない、俺に爆弾を抱えて歩く趣味はないからな」
「って俺は爆弾かよ!!」
ガラは少し笑ったようだった、相変わらず、どこに隠れているかは分からない。
「そしてもっと危険な爆弾がいる」
「・・・逹瑯か?」
「ああ、あいつが危ないのは大佑もよく分かってるだろ、だから・・・逹瑯を倒してくれないか?」
元よりそのつもり、などとは言わず大佑はあえて迷ったように唸ってみせる。
「大佑が他の参加者を倒してくれたら京さんの優勝率が上がるんだ、どうだ?」
「ん・・・まあ、俺も優勝は京さんがいいな、って思ってたしなぁ」
「だったら決まりだ、頼んだよ・・・大佑、やっぱりお前は良いヤツでもある、俺の親友だ」
そのままフェイドアウトするように声が遠ざかっていき、気配も消える。
「・・・まったく、友達がいのない連中だよ、なぁ!」
そうして大佑はその犬っぽい整った顔に満面の笑みを浮かべて簡易レーダーを取りだした、斜め後ろ、ガラを示す丸い光が遠ざかっていく。
追う気はもうなかった、提案としては悪くないし、ガラを後回しにしたところでさほど大きな方針転換はないから同じことだ。
そのまま進んでいくと、丁度進行方向、レーダーが拾えるギリギリの地点に参加者がいることを示していた。
簡易レーダーをポケットにしまい、懐中電灯の明かりは点けずに身を隠しながらゆっくりと進んでいく。
・・・いた。
いた、というか・・・。
明希だ。
ラッキーだとか思うよりも前に呆気に取られた。
明希は暗い山道の真ん中で、自分の懐中電灯の光を追いかけて遊んでいた。
いるよなぁ、ああいう猫。って感じだ。
これがバトロワごっこの最中と思えば、不思議ちゃんを通り越して不審火ちゃんだった。
しかし、まぁ・・・明希だし、と大佑は意を決して声をかける。
「明希?俺だよ、大佑」
怖くならないように気をつけながら懐中電灯で自らの顔を照らしてみせると明希はぱっと顔を輝かせた。
女子ブレザーのスカートをふんわりなびかせてぴょこんとこちらを見る。
「大佑お兄ちゃぁぁぁぁん!!」
駆け寄ってこようとした明希はそのまま地面に倒れた。
「・・・・・・」
早い話が背後から出てきたマオによる脳天踵落としを喰らって地面に伸びたのだ。
突っ込みは攻撃に含まれないがメンバーに踵落としを決めるヤツというのも珍しい気がする。
大佑はドン引き!とばかりに頬を痙攣させて笑ってしまう。
明希をレーダーが感知したのはギリギリの距離であったため、僅かな差でマオの存在を見落としていたらしい。
「パキしこっ!」
そのままマオに引きずられて、木陰へと引っ込むシドの二人。
そーいやマオのほうが身長低いのによくできたなぁと、どうでもいいことを思った。
「いだい〜!マオ君、大佑さんだよ!」
「どう考えても怪しいやろっ!!逃げるぞ!!」
マオは騙せない、大佑はAK47を構える。
「そうだよ〜明希ちゃん、早く逃げないと食べちゃうぞ!」
「きゃー!」
ずがん!!
「のわっ!」
普通に発砲してきたのをすんでのところで避けた。大佑はガサガサと葉音をならし斜面を駆け下りていくシドの二人を追いかける。
幾重もの銃声が夜の山に響くが、シドは逃げながら、大佑は視界不良の中であるせいか、どちらも判定を当てるに至らない。
ついに大佑はシドの二人を見失い、山のど真ん中で立ち往生するはめになった。
「・・・最悪だ!」
ここまでの時点で気づかれた方も、元より知っている方もいるだろうが、大佑・・・けっこうなレベルの馬鹿である。

大佑
【武器】AK47(カラシニコフ)、簡易レーダー
【所属】スタッズ
【状態】青
【行動方針】《ジョーカー》として途中参戦、逹瑯を優先して倒す。ディルメンバーには手を出さない。
【特性】?

マオ
【武器】ソードオフ・ショットガン、《少女趣味−ボルトキープ−》、ジェリコ914
【所属】シド
【状態】青
【行動方針】優勝を狙う。
【特性】ドSスイッチON!!
(特殊ルールにより《復活》しました、多くの情報を持っています、《少女趣味》が使いこなせるかどうかは不明です、大佑の存在に気づきました)

明希
【武器】匕首、ニューナンブM60、青龍刀
【所属】シド
【状態】青
【行動方針】優勝を狙う
【特性】ドMスイッチON!!
(アイテム、無線盗聴器を所持、大佑の存在に気づきました)

ガラ
【武器】鉈
【所属】メリー
【状態】?
【行動方針】京を優勝させるためディルメンバー以外の参加者を倒す(奉仕型マーダー)
【特性】?
(大佑が参戦したことを知っています)


浅葱は営林所にいた。普段の仲の良さ故か引きの強さはピカイチである。
まあ地図に記載されている場所を巡るのならば行っておかしくない所ではあるけれど。
次の放送までには禁止エリアになってしまうから見ておこうという程度の気持ちで営林所までやってきた浅葱は、その前に二体の《死亡カード》が並べてあるのに気づいた。
ディバックも二つある。
何気なくのぞき込んで驚いた。
「英蔵君とツネ・・・なんで一緒に?っていうか英蔵君!《全身複雑骨折》ってなに!?」
浅葱にもきっちり突っ込まれた、これで英蔵はゲームオーバーになった姿を《死亡カード》も含めメンバー全員に見られたことになる。
これがDの落とし所と言われる所以である。
浅葱は恒人の《死亡カード》を見た。
「・・・《失血死》ってことは《致命傷判定》を受けて時間切れ、か」
ポケットの中にあるリラックマの絆創膏ケースを思えば妙に寂しい気もする。
ゲームオーバーになったことは先の放送で分かっていたことだけれど。
しかしそれならば、英蔵の《死亡カード》と並んでいることはなんとなく察しが付く。
「英蔵君の隣で時間切れを待ったんだろうなぁ・・・」
他から見れば突っ込むところだが、基本的にメンバーが大好きすぎる浅葱にとってはむしろ評価を上げる行為だった。たぶん可愛いとか健気だとかこんな時にもお茶目だとか思っているのだろう。
「うん、そうそう、そう思ってたよ」
いきなり答えないで下さい!!
「しょうがないじゃない、聞こえるんだから・・・あと俺は正当に評価してるんだけど?」
そう拗ねたように言って浅葱は再び視線を落とす。
「こっちの、たぶんツネのディバックは開けられた形跡がないねぇ」
ゲームオーバーになった時間を考えればさほど不自然なことでもないが、問題はそこではなく・・・恒人ならば、である。
浅葱はディバックを開けてみた。水やらパンやらが入った一番上に折りたたんだ紙が置いてあった。
おそらくはルールブックのページを破ったもの。
軽く口角を上げて浅葱はその紙を開く。
『マシンガンのマーダーはイノランさんです、ヒサシさんもマシンガンを所持しています。
ステルスマーダーは隆一さんです。ムックのお二人と黒柳さんはゲームに乗っています。
気を付けて下さい。大城さんを倒したのはイノランさんです!
D 恒人』
走り書きでそうあった。内容には驚いたが、浅葱は誰も見ていないのに自慢げに頷いた。
「やっぱりツネってこういう気回しが上手でしょう?」
地の文にメンバー自慢をしないで下さい。
「ふふふふっ。良い子だなぁ後で御褒美あげないと!」
そろそろ突っ込み放棄してもいいですか?
「さすがだよツネ!こんな有益なメッセージを俺に残してくれるなんて!これはとっても役に立つね!」
最早その場で踊りだしそうなテンションで浅葱は歌うように言う。
別段ピンポイントで浅葱に向けたメモでもなかろうが・・・
浅葱か涙沙の手に渡れば幸いレベルのものをしっかりゲットしてしまう辺り、やはり引きが強いのか。
マオが復活であることを書かなかったのは、恩義を感じたからだろう。
「ホントにツネは良い子!」
疲れもあるのだろうが浅葱のテンションはぶっちぎったまま戻ってこなかった。
ちなみに褒めちぎられている当人は敗者控室で真っ赤になって俯いているのだが。
しかも音声しか聞こえていない敗者控室では浅葱が唐突に恒人を褒めだしたようにしか聞こえないのでいたたまれない時間を過ごしていた。
浅葱はすっかり浮かれた様子で、そのまま営林所を去っていく。
そもそも何をしに来たのだかすらも忘れてしまったらしい。


その営林所の裏に大佑が来ていた。
「あれ!?誰かいたのに行っちゃった・・・」
簡易レーダー片手に途方に暮れている。
「えっと、此処どこだ、地図地図!」
役に立たないジョーカーである、はたして起爆剤になり得るのか、微妙なところだ。
地面に地図を置いて懐中電灯で照らして気づいた、何か光る物が落ちている。
ダガーナイフだ。
拾って、それが《ごっこ遊び》用の物であることを確認して、大佑は顔をほころばせる。
「ラッキー、武器拾っちゃった。やっぱ日頃の行いがいいよね!」
こんな時ばかりは逹瑯にどつかれれば良いのにと思う。こうも邪気のない笑顔を浮かべられるとどつけるのは愛がある逹瑯ぐらいのものだろう。
そして懐中電灯で再び地面を照らして気づく。
《死亡カード》が落ちている。
《ガゼット 葵 大型の刃物による二撃》と書かれていた。
すぐにガラが鉈を持っていたことを思い出す。
「ってことは此処ってガラのテリトリー?」
動物か、君等は。
「そうだ、逹瑯を倒すんだった。アイツはどこにいるんだろ・・・」
そんな感じでヘタレジョーカー移動中。

浅葱
【武器】斬馬刀
【所属】D
【状態】青
【行動方針】メンバーと合流、島の謎を解明
【特性】ヴァンパイア
(アイテム、双眼鏡を所持、大佑がジョーカーとして参戦したことを知っています、恒人が残した情報メモをゲットしました)

大佑
【武器】AK47(カラシニコフ)ダガーナイフ、簡易レーダー
【所属】スタッズ
【状態】青
【行動方針】《ジョーカー》として途中参戦、逹瑯を優先して倒す。ガラと協定、ディルメンバーには手を出さない。
【特性】ヘタレワンコジョーカー



Dの涙沙とGLAYのテル。異色コンビは道の真ん中を歩いていた。
あまりにもキャリアに差がある故、意見を言うのすら憚られるほどだが、テルのサバイバル能力は皆無と言って良い。
涙沙はずっと「別行動」を持ちかける機会をうかがっていた。
今まで誰とも会わなかったのは運が良かったからだ。
ここまで参加者が減れば、それをひしひしと感じる。
恒人までもがゲームオーバーになってしまった今、涙沙はなんとしても浅葱と合流しなければならない。それは残りがヒサシしかいないテルも同じはず。
「残念だったね、恒人君」
黙りこくっている涙沙をどう思ったのかテルがそう声をかけてきた。
「ええ、しっかりはしてますけど、やっぱ周り先輩ばっかやし、運動神経は良い方じゃないから、難しかったんやと思います」
もういっそ早くゲームオーバーになって甘いものでも食べたい、恒人だったらなにかお菓子を持ってきているだろうから分けてもらおう、と完全に集中力を切っていたその時。
「トノ!」
とテルが声を上げて手を振った。
その先にはヒサシが無表情で立ってこちらを見ている。
手には箱型の・・・銃の知識がなくともこのゲームの元ネタのおかげで知名度が飛躍的にあがったから分かる。イングラムサブマシンガン。
「・・・っ」
思わず手に持った日本刀に力を込める。
「てっこ、ちょっとどいて」
ヒサシの言葉にテルは首を傾げながらも横に退いた。イングラムの銃口は涙沙に向けられる。
ぱぱぱぱぱぱ、という音と赤いレーザー光線を涙沙は側転するように避ける。
「え!?ちょっと、なんで撃ってるの!?」
状況を飲みこめていないらしいテルがおろおろするが、ヒサシはそれを無視してゆっくり横にズレながら再び銃口を涙沙に向けた。
もはやここまで、と涙沙は地面を蹴る、空中へ飛び上がり日本刀を高く振り上げながら、赤いレーザー光線を身体に受けながら叫ぶ。
「ちぇりおおおおおお!!!!って避けへんのかいっ!?」
当然ここまで振りかぶれば余裕で避けてくれるだろうと振り下ろした日本刀の先ではテルがやはりきょとんと首を傾げながら突っ立っていた。
ああ、そうか。
涙沙は納得する。この善人気質は間違いなく浅葱に通じるものがある。
人を疑わないのではなく、人の善性を信じるスタイル、あるいは美学。
似ているからこそ、一緒に居づらかったのだ。
似ているようで違うから合わせるのが難しかった。
似ている部分と違う部分に惑わされて噛みあわなかった。
暗い夜道に長い電子音が二つ鳴り響いた。


涙沙にあやまり倒されているテルに背を向けヒサシは走り出す。
日本刀は邪魔になるので回収しなかった。
予想外の結果になってしまったが、テルの性格を考えれば仕方がないような気もする。
今夜中に一人でも多く、確実に参加者を減らさなければならない。
ならばそろそろ、アレを使ってもいいか。
「てっこ、今度なんか奢るから、悪い」
そう呟いてヒサシは夜の闇に消えていった。

ヒサシ
【武器】イングラムM10、コルト・ウッズマン、エリミネーター
【所属】GLAY
【状態】緑(かすり傷判定)
【行動方針】無差別マーダー
【特性】?
(謎の箱形アイテムを所持)

【涙沙 D ゲームオーバー】日本刀放置
【テル GLAY ゲームオーバー】

【残り15人】


集落C、夜の海風が吹き抜ける平屋建ての家々の間をディルアングレイの親子コンビ、薫と京が歩いていた。
「考えてみたら、こんなにのんびりするのって久しぶりやな」
「のんびりはできてへんし」
薫の言葉に京は呆れ顔だ。
「いや、忙しかったから。京君と夜道を並んで歩くなんて本当に久しぶりやない?」
「それはそやな、二人だけいうんは珍しいかも」
既に大御所クラスとなったディル、プライベートで遊ぶ機会もなくなってきているし、ツアー先などでの散策も大勢のスタッフに囲まれていた。
二人きりになることが珍しいと言える。
最早バンドは巨大化し、常時人に囲まれているのだ、京はそれを嫌い引きこもることが多かったがリーダーである薫はそういうわけにはいかない。
京に対して不満はない、むしろそのためにリーダーになったとも言える薫は積極的に表に出ることを引き受けていた。
他者に対して過敏な京にその役目を負わせようとも思わない。
気が乗れば京も出てくることはある。
「しかし心夜は脱落かぁ、なんか意外やなぁ」
「殺しても死ななそうやけどね。まあよほど武器が悪かったんやろ、でなきゃアイツが脱落するわけないわ」
毒舌仲間に毒舌を吐いて京は可笑しそうに笑う。
「まあウチはみんな生命力がゴキブリ並みやしね」
「ゴキブリ並み?スリッパで叩いたら死ぬわ、プラナリアにしといて」
「あんなんが分裂して増えていったら俺が過労死するて!」
周囲に人の気配はなく、一番の活動時間であるせいか冗談の応酬も冴える。
「心夜も優しいとこはあるんやで、コンビニで買ったジュースとか間違えたからって俺にくれるし。ああいうのツンデレって言うんやろ?」
「いや、アイツの場合は本気で間違えて、本気でいらないから薫君にあげてるんやろ」
「・・・え!?じゃあ俺は」
「ゴミ箱扱い?」
「・・・けっこう本気で傷ついた」
頭を下げた薫越しに見えた物に、京は足を止める。止めてそちらへと歩き出す。
「どうしたん?」
「あっちでなんか光った」
家と家の隙間に入って行き、小さな体を伸ばして塀の上を見て、京はそれを発見した。
監視カメラだ。
「やっぱりあったんか・・・」
「撮影もされてるんやな」
予想範囲内のことではあるがこうしてカメラを見つけると妙に緊張してしまう。
「まあええわ、無視しとこ」
薫の言葉に京は頷き、そして目を見開いた。
薫も慌てて振り返る。
細い隙間の入口に人が立っていた、月光に照らされ伸びた影が二人のところにも届いている。
「こんばんは」
人の良さそうな笑みを浮かべたのはリュウイチだった。
薫は即座にS&Wをかまえ銃口を向ける、ルナシーメンバーは警戒する、そう決めていたからだ。
なによりも支給武器一覧を手にしているため、リュウイチは銃を持っていることは分かっている。
リュウイチは肩を竦め、自らもデザートイーグルを構える。
京は薫の陰からそれを見て、《愚神礼賛》を盾にしようとして気づいた、そもそも薫の陰に自分が隠れてしまうほどの幅しかない場所、そんなところで長めに作られた《愚神礼賛》を自由に扱えるわけもない、今でさえ、斜めに持つのが精一杯なのだ。
「くそっ・・・」
毒づく京に薫が囁く。
「京君、後ろの塀乗り越えて行けるか?」
「できなくはないけど、薫君どうすんねん!?」
「俺は此処に残る」
「阿呆。薫君置いていけるか」
まさか京からそんなことを言ってもらえるとは、たかだか《ごっこ遊び》でそんな台詞が飛び出してくるとは思っていなかった薫は感動してしまう。
「ねぇ、君等はやる気なの?」
「俺達は・・・」
薫が答えようと思った瞬間、リュウイチは発砲していた、轟音が響き渡り、夜だというのに鳥が驚いて逃げて行く。
薫は点滅するランプに構わずS&Wの引き金をひいた。京もまたワルサーPPKを薫のベルトから抜き取り、リュウイチに向けて撃つ。
避けはしなかった、しかし当たり判定はでない。
「なんで!?」
驚く薫の胸のランプから長い電子音が響き赤に変わる。
「ゲームオーバーだね、薫君どいて」
そう言われても後ろに京がいる以上、たとえゲームオーバーだろうが退くわけにはいかない。
「弁慶の立ちナントカってことにしといてください」
「ああ、立ち往生ね。ふふ・・・素敵じゃない」
人の良い笑顔で言ってリュウイチは二人に歩み寄ってくる、京がもう一度発砲したがやはり当たり判定はでない。
「薫君、ごめん」
「はい?」
京が薫の横から強引にすり抜け、リュウイチの方へと駆けだす。振りかざせないのなら棒状の武器の使い道は限られる。本来『釘バッド』の形状を持った《愚神礼賛》は振り下ろすのが最適であるが、そしてもし振り下ろせていたのならば勝敗は変わっていただろうが、頭への攻撃は禁止である以上選択肢は一つしかなかった。所謂『突き技』である。
京もかなり身体を鍛えている人間であり、身体能力はずば抜けている。
格闘技経験こそないものの、それは見事な突き技であったが、プロ並みの格闘技経験のあるリュウイチはそれを掌で受け止め、京の眼前にデザートイーグルを突きつけた。
「勝負あったね」
「そうみたいですねぇ・・・」
歯がみする京にリュウイチはにっこり笑って言った。
「じゃあ一緒に来てくれない?」
「・・・は?」
思わずきょとんとする京にリュウイチは微笑みを深くする。
「縛られて担がれていくか、自分の足で着いてくるかの二択ね」
「・・・・・・は?」
突発的な事態に弱い京は首を傾げたまま固まってしまった。


【武器】愚神礼賛−シームレスバイアス−(超大当たり判定武器)
【所属】ディルアングレイ
【状態】青
【行動方針】????
【特性】混乱中
(《支給武器一覧》を持っています)

リュウイチ
【武器】デザートイーグル、防弾チョッキ、S&W M500 ワルサーPPK
【所属】なし
【状態】青
【行動方針】????
【特性】?

【薫 ディルアングレイ ゲームオーバー】

【残り14人】



「お、一人発見!」
馬鹿犬、もとい大佑は簡易レーダーを見ながらそう呟き、さっそくそちらへと歩き出す。あまり学習能力がないらしい。
木々の隙間からのぞけば見えたのは探し求めていた人物、木に長い身体をもたれさせ、ぼんやりしている逹瑯の姿。ラッキーと顔をほころばせ一気に駆けだす。
「たつろーーーーー!!!」
「お!?大佑〜〜〜!!!」
そして二人は長年離れていて再開を喜ぶ友の如く両手を広げ、走り寄り、そして互いを蹴り飛ばした。
「痛いっ!!なにすんだよ!!」
「そっちもやっただろうがっ!!」
支給武器以外での攻撃は禁止であるが、これは突っ込みと判断されたのか警告は鳴らなかった。
「ってか大佑がなんでいるんだよ、会いたかったぞ馬鹿野郎!」
「俺はジョーカ・・・いや、お手伝い?」
「今、ジョーカーって言っただろうが!敵だな!飛んで火に入る夏の虫!」
ガトリング砲を構える逹瑯に大佑は慌てて手を振る。
「ちょ、ちょっと待ってよ、話せば分かるって!」
「うるさいっ!こんな巫山戯たゲームの主催者の味方するだなんて見損なったよ、大佑!俺ら友達じゃなかったのかよ!裏切り者っ!」
「違うっ!違うんだ逹瑯!俺だって好きでやっているわけじゃないんだ!親友であるお前と戦おうだなんて思ってないんだ!信じてよっ!!」
「うるさいっ!うるさいっ!信じられるもんかっ!ガラまでゲームに乗っちまってもう誰も信用できないんだよ!なんでみんなこんな馬鹿げたゲームで殺し合えるんだ!みんな仲間だったのに!」
「そうだよ逹瑯!こんなこと馬鹿げてる!俺達はみんな仲間だ!だから俺のこと信じてよ!」
「うるさいって言ってるだろ!もう誰も信じないっ!なら俺が生き残ってやる!」
「逹瑯!逹瑯はそんなヤツじゃないだろ!ひねくれてたって本心は優しいヤツじゃないか!正気に戻ってくれ!」
「もう遅いんだよ、俺は・・・俺は・・・もう人を殺してしまったんだ!もう戻れないんだ!」
「たつろーーー!!」
「・・・盛り上がっているとこ悪いが」
割って入った静かな声に逹瑯は硬直し、大佑は驚く。
「お前ら、うるさい」
向き合って三文芝居をしていた二人の間に立っているのはミヤで、冷やかに二人を見下ろしていた。
「なんでミヤ君が!?レーダーには一人しか・・・」
「レーダー?お、いいもんもってんじゃん!」
ジャイアンよろしく大佑の手からレーダーを奪い取った逹瑯はそれを見てにんまりと笑う。
「たぶんさ、ミヤ君、俺がもたれてた木の上にいたから重なって一人に見えたんだよ」
「・・・なっ」
いくら大佑でもミヤがいると知っていたらこんな馬鹿な特攻は仕掛けなかった。
二人とも火力の大きそうな武器を持っている。
なるほど、飛んで火に入る夏の虫だと大佑は肩を落とした。
「大佑は馬鹿だねぇ、手ごたえなさすぎ」
逹瑯は歌うように言ってぐりぐりとガトリング砲を大佑の頭に突きつける。
「マジかよ・・・」
ミヤはその様子を見て、しばし考えるように目を閉じ言った。
「大佑さん、銃を置いてもらえます」
「え?ああ、うん」
大佑が(ミヤを恐れて)AK47を置くのを確認してから今度は逹瑯に言う。
「逹瑯、お前もガトリング砲を置け」
「へ!?なんで!?」
「いいから」
妙な迫力に押され、逹瑯もガトリング砲を置く。
「大佑さん、サブの武器は持ってますか?」
「うん、ダガーナイフ」
「逹瑯はバタフライナイフ持ってたな」
「・・・持ってるけど?」
ミヤは微かに口角を上げて言った。
「どうせ遊ぶなら銃より刃物同士のほうが楽しいだろ?」
その言葉に悪友二人は顔を見合わせ、嬉しくてたまらないという笑顔を浮かべた。

ミヤは簡易レーダーを見て周囲を確認しながら、二人が戦う姿をちらと見た。
刃が鈍く月光に輝き、ぶつかり合う。
バタフライマイフとダガーナイフではスペックに差があるであろうに、刃がぶつかっても同じように跳ねかえるだけだった。
いや、二人でそのように演出しているのかもしれない。
刃をぶつけ合いながら闇夜に舞う二人は本当に楽しそうだった。
「大佑、やるじゃん!」
「逹瑯もね!ガラ君は京さんを優勝させるんだってはりきってた」
「だよなぁ!って言うかおめぇもだろ!?」
「うん!実はねっ!」
じゃれあう二人にミヤは時計を確認する、12時を回ったところだった。
そろそろかな、とミヤは目を伏せる。
周囲に人はいない、簡易レーダーの使い方はもう覚えた。
ラッキーなアイテムが手に入ったと思い、もう一度「そろそろかな?」と思う。
逹瑯がやりそうなことを予測するのは簡単だ。
笑みがこぼれるのを堪えて、戦っている二人に視線をやる。
大佑がダガーナイフを振りかぶり、逹瑯が派手に転がってそれを避ける。
ごろごろと転がっていく逹瑯を見て大佑が可笑しそうに笑った。
「お前、なんだ・・・」
大佑の顔が凍りつく、立ちあがった逹瑯は大佑が置いた武器、AK47を手にしていたからだ。
派手に転がったのはそれを取るため。
「ず、ずるいだろ、それ!!」
「ゲームのルールは破ってねぇよ」
大佑は助けを求めてミヤを見るが、感情の伺えない視線が返ってくるだけなので諦めた。
諦めて無邪気な笑顔を愛すべき親友に向ける。
「そうだよな、逹瑯はそういうヤツだ。でも・・・だからずっと・・・友達だよな!」
「モチのロンだべ!」
大きな銃声が響き渡り、大佑の胸のランプが赤に変わった、その時・・・
最早おなじみと化してきたハウリング音が響き渡り、全員にもれなく耳慣れた声が島中に響き渡った。

ミヤ
【武器】レミントンM870、ギターの弦、水倉りすかのカッターナイフ、簡易レーダー
【所属】ムック
【状態】青
【行動方針】優勝を狙う、策戦を立てて不意打ち攻撃
【特性】策士リーダー
(アイテム《鳩笛》を所持しています)

逹瑯
【武器】サイボーグクロちゃんのガトリング砲、バタフライナイフ、AK47、ダガーナイフ
【所属】ムック
【状態】青
【行動方針】優勝を狙う、ミヤの立てた策戦に従う。
【特性】俺様サドモード
(ルナシー全員が《ジョーカー》である可能性を疑っています・イノランが《マシンガンのマーダー》である確証を得ています)


【大佑 スタッズ ゲームオーバー】(ジョーカーなのでノーカウント)


『みなさんこんばんは。リュウイチです。河村隆一だよ』

地面に葉っぱを撒き散らして、木の上で仮眠していたイノランが落下した。
尻もちをついて顔を歪め、しかしそれどころではないとばかりに声のした方へ顔を上げる。
「な、なにやってんの?」

『俺は今、シドの二人が呼びかけをした展望台にいます』

「マオ君、リュウイチさんだよ!」
袖を引く明希にマオは目を細めて言う。
「なんでまた・・・呼びかけなんか・・・」

『そしてディルアングレイの京君を人質に取ってまーす』

飲みかけのペットボトルの水を残らず自分の足にぶちまけ、Jは固まっていた。
「・・・・・・・・・はい?」

『彼を殺されたくなければ30分以内に此処へ来て下さい、じゃあ京君からも一言』
『・・・いや、来んでええし』
『はい、人質なのは本気だからね〜バイバイ』

「人質だなんて、《ごっこ遊び》で・・・」
浅葱もまた呆然としていた。
浅葱さんなら行きませんか?《ごっこ遊び》で人質。
「行くに決まってるじゃない」
じゃあ有効なんじゃん・・・・
問題は、誰にどう有効かということだ、が。

「ミヤ君、止めてもいくからね!」
荷物を慌ててまとめる逹瑯の肩をミヤが掴む。
「ガラさんなら確実に行くから、ってことか」
「そうだよ!」
「誰が止めるって言った?つき合わないとも言ってない」
ミヤは既に荷物をまとめ終わっている。
逹瑯はきらっきらな笑顔でミヤを見た。
「行くぞ」
「うんっ!あ、大佑!俺に任せといて!」
親指を立てて闇へと消えていく逹瑯を、既にゲームオーバーとなった大佑は親指を立て返して見送った。
「ガラを頼んだよ・・・」


幕間―敗者控室―

室内は静まり返っていた、スギゾウと真夜があんぐり口を開けたまま固まっている。
しばしその静寂が続き、誰が口火を切ったかその後は喧々囂々。
興奮する者、走り回る者、奇声を上げる者、頭を机に打ちつける者とちょっとしたヤバイ集団が出来上がっていた。
「おわっ!どうしたんっすか!?」
「なにかあったんですか?」
教室の扉を開けたのはゆうやと恒人、後輩気質の二人は空になった弁当の容器をまとめて片付け、洗ってくると出て行ったきりだった。
手にバケツと赤く染まった雑巾があるところを見ると、どうやらヒデがキリトを襲撃した後始末をしていたらしい。
扉の近くにいた戒が一瞬自分も手伝うべきだったかと我に返り、いやそれどころではないと思いなおした。
「大変なことになってんだよ・・・」
「なにが起これば飲み会!時刻は朝の4時!みたいなテンションになるんですか」
生真面目な恒人は目の前の光景にやや呆れているらしかった。
「簡潔に言うとだな、リュウイチさんが京さんを人質にとって拡声器で呼びかけたんだ」
これにはゆうやと恒人の驚いた声がハモる。
「人質って・・・これ、《ごっこ遊び》ですよ!?」
「だから混乱してるんだ、それもよりによって・・・」
戒はちらりと流鬼を見る。机に頭をぶつけていた。
「京さんを、だぞ?」
これには説得力があったのか、ゆうやと恒人は視線を合わせて頷いた。



30分をかけ、逹瑯とミヤはようやく展望台近くまで辿り着いた。丘の上にある四阿には確かに二人の人影があり、リュウイチはともかく一人は京で間違いない。
四阿から死角になるルートを選び丘の下ギリギリへと移動する。
「ぐっちゃ、どうすればいい?」
いつの間にかあだ名呼びになっていることを気にした風もなく、ミヤは簡易レーダーに視線を落とす。
「これがあるからな、誰が近づいてきたらガラさんだと思っていいだろう、そこで協力を申し出る」
「俺、信用されなくないかな?」
しゅんとした逹瑯にミヤは目を細めた。
「状況を考えろ、疑われない」
「・・・なんで?」
「オマエは悪ふざけの度を分かってるからだ」
ミヤは周囲に視線を飛ばしながら簡易レーダーを操作する、自分達のすぐ上に二つの反応、そして。
細い目をかっぴらいて袖を引くミヤに逹瑯はなんとか照れを押しこんで顔を向ける。
「どうしたの?ミヤ君」
「・・・これ、とんでもないことになるぞ」


「無駄やと思いますけどねぇ、《ごっこ遊び》ですよ、これ」
京は四阿の端にもたれたままだるそうに言った。
《愚神礼賛》はリュウイチがいる側に置いてあるし、デザートイーグルの銃口はこちらをむいていた。
面倒くさくなってきた京は状況を確認しながらも諦めモードだった。
というよりなんでこんなこじれているんだとうんざりしていた。
「でも面白いじゃない?盛り上がるし」
「・・・そんなもんですかねぇ」
言いながらも京は一つだけ引っかかっていた、あの弟分のことである。
まさか来ないよなと思う反面、来るだろうなぁとも思う。
それを止める手立てもないわけだけれど、来て欲しくはない。
リュウイチが時計を見て拡声器のスイッチを入れた、30分が経過したことと、念を押すためだろうかと京がぼんやりそれを見ていると、反対側、藪を突き抜けて飛んでくる影があった。
「どりゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
と空気も割れんばかりの雄たけびを上げ、鉈を振りかざして飛んできたのはやはりガラだった。
リュウイチは宙を飛ぶガラ目がけて発砲する。
当たり判定が響いた、これまでの経験からいって一発で仕留められるだろうとそう思って、それに気づいた時にはもう遅かった。
当たり判定が出ている間は移動禁止だが、ジャンプしている最中に止まれる人間はいない。
ガラは充分な飛距離を出す跳び方をしていたし、まして手は動かしていいのだ。
「ごっしゃああああああああああああああああああああああ!!!!」
脳が揺らぎそうな奇声を発しているのも誤魔化しなのか、京とリュウイチの間に割り込むようにして、ガラは鉈をリュウイチの胸に叩きつけた。
さすがにリュウイチの足が数歩下がり、四阿の柵ぎりぎりに追い詰められる。
当たり判定はやはり出ない、ガラがそれに狼狽した隙に未だ点滅しているガラのランプ目がけてリュウイチはもう一度発砲した。

その1秒前、突然の出来事に唖然としている京の耳に馴染んだ声が聞こえた。
「京君!こっち!」
考える間もなく、手を伸ばして《愚神礼賛》だけ取りかえすと、四阿の柵に手をかけ、背中向きに飛んだ。衝撃はない、受け止めてくれた声の主がにんまり笑う顔が見えるだけ。
「敏弥・・・来たんかい」
「俺もおるでぇ」
隣で堕威が親指を立てた。
「お前ら阿呆ちゃう?」
再開の挨拶はそこまでだった、リュウイチが人の良い笑みを浮かべてこちらを見ている。
「ガラ君はゲームオーバーだよ。まさかこんなに大勢くるなんて、予想外。好かれてるんだねぇ」
言いながら発砲するのを京が今度は確実に《愚神礼賛》で打ち返すがやはり当たり判定は出ない。
錘を両手に構え臨戦態勢になった敏弥に京が叫ぶ。
「無駄や!その人だぶん・・・防弾チョッキみたいなアイテム持ってる!!」
「そんなチートみたいなアイテムあるんかい!?」
堕威がコルトガバメントを構えたまま不服そうに言った。
リュウイチは目を細め、銃口をこちらに向けた状態で少しずつ後ろに下がって行き、四阿の陰に入った所で背を向けて走り出した。
3対1では分が悪いとでも思ったのか、他に作戦があるのか、恐る恐る3人が四阿の向こうをのぞくがリュウイチの背中はもう遠かった。
逃げたようだ。
「まこっ!」
それを確認すると京はその場で座り込んでいるガラの前にしゃがんだ。
「お前なにしてんねん、馬鹿やなぁ・・・」
ガラははにかむように笑う。
「だって、京さんに優勝してほしかったから」
「こんなことされても嬉しくないし」
「でもこれは《ごっこ遊び》だから、本物じゃありませんから」
首を傾げる京にガラは微笑む。
「本物だったらこんなことしませんよ、そりゃ守りたいぐらいは思うでしょうけど、命かけたら嫌がられるでしょうし、命って重たいですから、どんな状況でも自分から奪おうなんて思いません。考えてた末に・・・やっぱりできないでしょう。でも《ごっこ遊び》だから本当はできなくて、でもどこかでしたいことをやってみただけです」
ガラは赤が灯った自分のランプを撫でて京を見る。
「敬愛している人のために死ねる妄想ぐらい許して下さいよ。どんなことになっても実行なんてしませんから」
「・・・当たり前や、阿呆」
こつんとガラの頭を叩き、それから京は満面の笑みを浮かべた。
「まこ、ありがとうな」


丘の下、ムックの二人は難しい顔で上を見ていた。
「とんでもないことになっちゃったね・・・」
「ああ、予想外だ、とんでもない・・・」
「京さんもガラもさぁ、絶対気づいてないよね」
「だろうな・・・」
「どうするかな?拡声器のスイッチ入りっぱなしだったから、今の会話島中に放送されたって知ったら」
これに対するミヤの返答はなかった。たぶん誰も答えられないだろう。
二人はこの場所にいて簡易レーダーを見ていた。そして展望台に向けて三人が向かっていることに気づいたのだ。
一人はガラとして残る二人、呼びかけなどという目立つことをしたリュウイチを倒しに来たマーダーという可能性はまずない。一人ならばイノランだと思ったかもしれないが二人である。
どこの馬鹿がリュウイチと京などという取り合わせを襲撃しに来ると言うのだ、猛獣の巣に飛びこむようなもので、優勝狙いならばなおのことやるわけがない。
となれば、である。
そもそも京が人質に取られたということは一緒にいたはずの薫は既にゲームオーバーになっている可能性が高い、ならば・・・残る二人のディルメンバーであろうという結論を出した。
危ないことが好きなミヤもガラを助けに来た(自分で倒すためにだが)逹瑯も、そんな恐ろしいバトルに首を突っ込む気など起きなかった。
「ミヤ君・・・俺、ガラの仇を討ちたい!」
急に声を震わせて縋りついてくる逹瑯をミヤは呆れた顔で見る。
「お前、いきなり三文芝居始めるのやめろよ」
「ガラと大佑の仇は俺が打つんだ!」
「いや、大佑さんはお前だろ。じゃあとりあえず死ねよ、今ここで」
「ひどっ!」
「・・・防弾チョッキとか言ってたな」
自らの罵りにショックを受けている逹瑯を無視して、ミヤが薄く笑う。
「手なら思いついた、おそらくだが・・・」
「ホント!?」
「考えてみろ、このゲーム抜け穴はあるが武器の性能は公平だ。これがヒント1」
「・・・もっとヒントちょーだい!」
「ヒントその2、頭部への攻撃は禁止」
「わかんな〜〜〜い!」
「防弾チョッキというアイテムがチートに無敵なものじゃないって考えるんだ」
「ん〜。ミヤ君に任せる!」
「危ない橋だぞ?」
「オッケーに決まってんじゃん!」


リュウイチは丘を駆け下り、森へと入って行った。追ってくる気配がないことにまず一息つく。
そして先に展望台から降りたことで気づいた。
会話のほとんどがスイッチ入れっぱなしにした拡声器のせいで島中に響き渡っていたことを。
「・・・まずったね」
京が叫んでいた「防弾チョッキを持っている」と、あの声量である、拡声器はしっかりキャッチしていたはずだ。ということはほとんどの参加者にリュウイチが『防弾チョッキ』を着用していることが知れ渡ったはずだ。
「逆手に取るぐらいしか方法はないんだけれど」
マーダーであることも同時に知れ渡った、そして『防弾チョッキ』を所持しているとなれば積極的に襲撃してくる人間はいないはずだ。
マシンガンの所有者であったとしても、向こうから避けてくれる。
そうなれば参加者が残り少なくなった今、大人しくしているのが無難ではあるのだが。
ポケットに入れてあったデザートイーグルの説明書を取り出してリュウイチはため息をつく。
そこには『極悪マーダーになること』と明記されていた。




【武器】愚神礼賛−シームレスバイアス−(超大当たり判定武器)
【所属】ディルアングレイ
【状態】青
【行動方針】?
【特性】?
(《支給武器一覧》を持っています)

堕威
【武器】コルトガバメント
【所属】ディルアングレイ
【状態】青
【行動方針】?
【特性】?

敏弥
【武器】錘(二本)
【所属】ディルアングレイ
【状態】緑(かすり傷判定)
【行動方針】?
【特性】?
(ヒサシを《マシンガンのマーダー》だと思っています)

リュウイチ
【武器】デザートイーグル、防弾チョッキ、S&W M500 ワルサーPPK
【所属】なし
【状態】青
【行動方針】????(極悪マーダー)
【特性】?

ミヤ
【武器】レミントンM870、ギターの弦、水倉りすかのカッターナイフ、簡易レーダー
【所属】ムック
【状態】青
【行動方針】優勝を狙う、リュウイチを倒す
【特性】策士リーダー
(アイテム《鳩笛》を所持しています)

逹瑯
【武器】サイボーグクロちゃんのガトリング砲、バタフライナイフ、AK47
【所属】ムック
【状態】青
【行動方針】優勝を狙う、リュウイチを倒す
【特性】俺様サドモード
(ルナシー全員が《ジョーカー》である可能性を疑っています・イノランが《マシンガンのマーダー》である確証を得ています)

【ガラ メリー ゲームオーバー】(メリー脱落)

【残り13人】



静寂が訪れた島、展望台から距離のある山の中腹で黒柳はゆっくりとその場に座り込んだ。
「みんな・・・派手だな・・・」
しかし自分はといえば、誰も倒せていないし、そもそも人と遭遇していない。
「なんなんだよ、日頃の行い?ああ、酒飲みてぇなあ」
がしがしと頭を掻き、だるくなってきた身体を伸ばしていると、視界の端に映るものがあった。
赤いランプの光だ。
誰かゲームオーバーになった者がいるのかと、黒柳はそちらへ歩き出す。
光源はアンジェロのコータだった、先程の一騒ぎに動揺があったのか落ち着かない顔で黒柳を見て、丁重な挨拶をした。
「えっと、死因は?」
「コレが爆発しました」
コータが首輪を指差して言う。
黒柳は首を傾げた、此処が禁止エリアなわけはない、だったら黒柳もゲームオーバーになっている。
アルコール不足で動かない頭を必死に回すもなかなか答えは浮かばない。
「ああ、お酒さえあればなぁ・・・今のおれはらっきょうのないラッキーマンだ・・・」
「その場合は追手内洋一では?」
以外にもコータから冷静な突っ込みが入ったが、関西人に囲まれた中部圏の人間として突っ込みには答えない主義の黒柳は頷くに留める。
仕方がないので地の文が解説すると、ラッキーマンは既に変身後の姿なのでらっきょうがないという言い方するなら変身前の追手内洋一ではないか、とコータは言いたかったのだ。
「酒が飲みたい」
「そんなこと俺に言われても・・・無理です」

黒柳能生
【武器】ベレッタM92、ファイティングナイフ、ビリー・カーンの三節棍
【所属】ソフィア
【状態】緑(かすり傷判定)
【行動方針】優勝を目指す
【特性】なんちゃってクール
(真矢の助言に従い元ルナシーメンバーは一応警戒しています)


合流したディルの3人は薫のゲームオーバー地点へと向かっていた。もちろん話を聞くことはできないが京の顔を見せておいたほうがいいと敏弥が言うのでしぶしぶである。
ちなみに普通に言えばいいものをにやつきながら言ったため、脇腹に本気のグーパンチを京から頂いた。
集落の家の隙間、3人の姿を見つけると薫はにこやかに手を振ってきた。
「とりあえず無事だったし合流できたし結果オーライや。あとは俺らでなんとかするから薫君は気にせんとゆっくり休め」
取り様によってはこれが本当のようにも聞こえる台詞を爽やかに言う堕威に薫は苦笑し、それから京を見る。
「これなら情報やないし言ってもいいやろ、京君」
「・・・なに?」
「これが本当なら俺が言わなきゃいけない言葉、やっと分かった・・・みんなで一人も欠けることなく一緒に帰ろう、で正解?」
京は黒目がちの瞳でじっと薫を見た。
どうやら正解らしい。
「じゃ、俺らでがっつり優勝しちゃうから年寄りは休んでて!」
「敏弥あとでしばく!!」
あまり長く会話するのもよくないだろうと三人は早々にその場を離れた。
「あ、そいえばさ」
敏弥が思い出したように言う。
「あの時、拡声器のスイッチ入りっぱなしだったから京君とガラ君の感動的な会話、きっとみんなに聞こえたよ」
空気がけたたましい音を立てて割れる。
堕威は引きつった笑いで、京は無表情で敏弥を見た。
「・・・あれ?俺なんかマズイこと言った?」
「残りあと10何人やねぇ、もれなく抹殺や」
淡々と言って歩き出す京の背中を見送りながら、堕威は敏弥の頭を叩いた。
「お・ま・え・はあぁぁぁっ!!せっかく薫君が黙ってたんに!!」
「え!?なに!?ごめん!!」
「知るかっ!!」


【武器】愚神礼賛−シームレスバイアス−(超大当たり判定武器)
【所属】ディルアングレイ
【状態】青
【行動方針】優勝を狙う
【特性】暴走?
(《支給武器一覧》を持っています)

堕威
【武器】コルトガバメント
【所属】ディルアングレイ
【状態】青
【行動方針】優勝を狙う
【特性】?

敏弥
【武器】錘(二本)
【所属】ディルアングレイ
【状態】緑(かすり傷判定)
【行動方針】優勝を狙う
【特性】?
(ヒサシを《マシンガンのマーダー》だと思っています)



ぱぱぱぱぱっと軽快な銃声が鳴り響く、当たり判定を喰らっていないのが奇跡だ。
マオと明希ははぐれないように互いを確認しながら逃げていた。
第二のマシンガンのマーダー、ヒサシの追跡から。
マオが情報を持っていたからヒサシの姿を確認するなり逃げることができたが、火力の大きい武器からの追跡は辛い、当たる範囲が広いので止まって打ち返す暇すらない。
盗聴無線はヒサシが一人で行動していたため役に立たなかった。
なんとか遠くへ逃げようとするも、ヒサシは退路を断つように動き回っているため、なかなかそれができない。
「マオ君、大丈夫?」
体力においては自信のある明希の言葉にマオは首を振る。
「そろそろ辛い・・・明希しこ、あそこ!」
マオが指差した先にあったのは倉庫、退路は断たれるが撃ち返すことならばできそうだ。
逃げられないのなら応戦するしかない、幸い銃器ならある。
ソードオフ・ショットガン、ジェリコ914、ニューナンブM60、ショットガンに自動拳銃にリボルバーだ、応戦さえできればマシンガンにだって勝てるはず。
できるかぎり木々に隠れながら倉庫へとシドの二人は飛び込む。
その姿をヒサシはゆっくりと観察していた。
そしてサブの銃器であるコルト・ウッズマン(皮肉にも彼等のメンバーであるしんぢに支給されたものだ)を取り出した。

倉庫というので物がたくさんあることを期待したのだが、残念なことに家具が積みあげられたキャスターがあるだけだった。しかしそれはかなりのサイズであり、二人で隠れるにも余裕がある。
奥の真ん中にあったそれの後ろに滑り込んで息を整えながら視線を交わし合った。
「いいか明希、よく聞けよ。このゲームじゃ頭部に当たり判定は出ない、だから身体を隠していれば頭は出しても大丈夫なんだ。頭と腕だけ出して打ちまくれ」
「でも、腕に当たり判定喰らったら?」
「腕の怪我ぐらいではゲームオーバーにはならないし、当たり判定中も手は動かせる、とにかく距離を詰められないように撃ちまくるんだ」
「うん、わかった」
「明希はジェリコとニューナンブ。俺はショットガン、俺のは一発ごとに少し間が空くから明希は撃ち続けるんだよ」
「わかったよ、アナタの言う通りにする」
「それで明希、もしダメな時はそこの裏口から逃げるよ、いいね」
明希は深く頷いてマオを見る。
「絶対生き残ろうね、それで優勝だね」
「明希様、気合い入ってるな」
「しんぢとかゆうやとかさ、あとメンバーじゃないけど恒人君にもお世話になったし、ネロさんやユウナさんのこともあるもん、俺、負けないよ」
ドアが開き靴音が響く。
「じゃあ明希、行くぞ」
マオは右側から手を出す、明希を裏口に近い方へ置いてしまうあたり心底甘く優しいが、それをわざわざ口にするほど素直でもないマオは、自然な調子でそう導いた。
明希は青竜刀を置いて、二丁の拳銃を構えている。
しかしヒサシは扉の向こうへ隠れているらしい。
確かにこの状況で身をさらすわけもないが、何故か嫌な予感がした。
二種類の発砲音が交互に響いたのは明希がやったのだろう、ヒサシが一回引っ込む。
しかしマオの位置からは見えた、ヒサシの銃・・・マシンガンではなく自動拳銃の光は真っ直ぐにマオ達の足元、キャスターの下辺りを射している。
視線を下げたマオも見た。キャスターの下にある菓子箱型のメタリックな物体。
天辺に赤い小さな光があってその光が描かれている文字を照らし出していた。
『爆弾』と。
罠だったのだ、ヒサシは最初からこれを狙っていた、当たり判定が出ないはずだ、此処へ導くためにマシンガンを乱射していたのだから。
明希の名前を叫んだのと、ヒサシの銃の発砲音は同時だった。
そして耳をつんざくような爆音が響き渡り、赤い光が飛び散る。
倉庫はその音で振動すらしていた。
「マオ君!?」
「爆弾だ!逃げろ明希っ!」
マオのランプは点滅している、しかし明希はマオが覆いかぶさって庇ったせいか無傷だった。
「でもっ!」
「行けって俺が言ってるんだよ!行って優勝しろ、絶対だっ!」
その言葉に明希は駆けだした、小鹿のように跳ねて裏口から飛び出る。
ヒサシとてその姿を見なかったわけではなかったがその数秒の間、マオは寝転がったままキャスターの隙間からソードオフ・ショットガンを弾切れになるまで撃ちまくって時間を稼いだ。
明希が裏口から出て行って、足音が近づいてくる。
「・・・ヒサシさん」
マオのランプがすでに赤に変わっていることを確認してヒサシはすぐに歩き出した。
「ヒサシさん、武器!」
思わずショットガンを掲げるマオをちらりと見てヒサシは言う。
「そのアイテム。『爆弾』のルール。それで倒した場合は武器の回収は不可」
「そ、そうなんですか・・・」
ヒサシが裏口から出て行く姿を見て、マオは祈るように目を伏せる。
「大丈夫、明希は逃げ足速いから・・・」
こうして奇跡の復活を遂げたマオは、登場時にメンバーを助け退場時にもまたメンバーを助けた。
彼の本質がよく見えた展開であり、彼の性格を知る敗者控室にいた人達は顔を見合わせてなんとなく気恥ずかしい笑みを浮かべたのだった。

明希
【武器】匕首、ニューナンブM60、ジェリコ914
【所属】シド
【状態】青
【行動方針】優勝を狙う
【特性】???
(アイテム、無線盗聴器を所持)

ヒサシ
【武器】イングラムM10、コルト・ウッズマン、エリミネーター
【所属】GLAY
【状態】緑(かすり傷判定)
【行動方針】無差別マーダー
【特性】?

【マオ シド ゲームオーバー(二回目)】

【残り12人】


気がつくと夜明けだった、禁止エリアにだけ気をつけて逃げ続け、明希はようやく一息つく。
ディバックから取り出したペットボトルの水を一気にあおった。
シドはもう自分一人だ、マオが逃がしてくれた、もう優勝するしかない。
「明希君?」
声をかけられたのはそんな時だった。
木の陰から出てきた人物に明希は目を丸くする。
「浅葱さん・・・」
イベントなどで一緒になったことがある人物。
深くは知らないけれど・・・
「大丈夫?」
「あのっ、ダメなんです!」
「え?」
「恒人君が浅葱さんと涙沙さんは攻撃しないでって最後にお願いされたから・・・」
「ツネと行動してたの!?」
今度は浅葱が目を丸くした。
「はい。それでそう頼まれたから、戦えないんです・・・」
「そっか、ツネと一緒にいてくれたんだね、ありがとう。でも俺も戦う気はないよ」
浅葱の穏やかな笑みに明希は首を振る。
マダーキラーチームの崩壊、親しかったサクラとの戦闘、ヒサシからの襲撃、いかに頭がおめでたい明希といえ浅葱が攻撃してこないとは思えなかった。
もう残り人数は少ない、ここから先は本当に優勝争いになるだろうとヒサシに襲撃される前、マオも言っていた。
「だから、ごめんなさいっ!」
ディバックを掴むと明希はまた走り出した、その姿を成す術もなく見送りながら浅葱は小さく息を吐く。
2日目の夜は明けた。
明希を追うより、もうすぐ始まるであろう放送を待つため浅葱は地図を片手に空を見上げた。


朝6時、6回目の放送が始まった。何故か『第九』からのスタート。やはり統一するつもりはないらしい。
『二日目終了お疲れ様!ヒデちゃんで〜す。なんともカオスな夜が明けました、いやあ楽しかった!楽しかった!ではゲームオーバーになった参加者の名前を読み上げます。ディルアングレイの薫君、メリーのガラ君、アンジェロのコータ君、Dの涙沙君。そして実は復活したのはシドのマオ君だったんですがゲームオーバーになりました。あとね〜俺、ちょっと頑張ってジョーカー入れたんだけどこの子もゲームオーバーで今夜は7人倒されました、残りはあと12名です。それから北側にある倉庫が爆破されたので立ち入り禁止になりました、注意してね!!あとちょっと、みんな!気合い入れていこ〜〜〜ぜ〜〜!!では禁止エリアの発表です!!』


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