第五回放送まで(前半)
第四回放送を聞き終え、昼食のパンを囓りながらDのベーシスト、恒人は思考する。多くのパロロワと原作との一番の相違点は魔法じみたアイテムや能力があることではなく《自分のまったく知らない参加者》が多く参加しているという点であると。
(もっといえば世界観すら共有し得ない参加者がいるということ)
「殺しあえ」と言われて放り出された時、自分の全く知らない相手を信じるという行為はそれこそ不可能に近い、極限状態の中で見知らぬ他人を信じること、難しすぎる。
この点においてみれば今回のごっこ遊びは原作BRに近い。
ほとんどの人間と一度はどこかで会っているし、そうでなくとも存在は認識している。
「見知らぬ他人」ではない。
さらにこれが単なるごっこ遊びであることを考えれば、バンド対抗戦とはいえどもバンド外の人間と行動することはそこまでリスクの高いことではなかったはずだ。
ヒデがあの放送をするまでは、の話だが。
あっさりと崩壊してしまったマーダーキラーチーム、誰が悪かったわけでもなかろう。あそこでゆうやがタクヤに狙撃されなければあんな結果にはならなかったはずだ。
運が悪かった。
しかしこうなってくるとバンド外の人間と行動するのはあまりにも危険すぎる、はずなのだが。
「しちゃってんじゃん、俺・・・」
聞こえないようにポツリと恒人は呟いた。
とはいっても《復活》のマオとのほほんとした明希がステルスマーダーであるはずはない、ないのだけれど・・・
「明希〜ちゃんと見張れよ〜」
「う〜!マオ君、交替してよ、疲れたんですけど!?」
ニューナンブM60を構えたまま窓に張り付いている明希がぶーぶーと不平をたれるがマオは涼しい顔。
「あの、俺が変わりましょうか?」
「いいのいいの、恒人君は座ってて、かわい子ちゃんは俺の視界にいてよ」
「かわい子ちゃんって・・・」
「マオ君、俺は可愛くないって言うの?」
「俺のほうが可愛いやろ、喋ってないで見張り見張り!」
「寒しこ〜〜!!じゃあスカートめくるから代わって!」
「明希のパンツ見ても楽しくないからイヤだ」
「じゃあ恒人君のを・・・」
「めくらないし、めくらせませんよ!?」
なんじゃこの二人・・・
喉元まで出かかった突っ込みを飲み込んで恒人は食事に戻る。
研究所のジュラシュックパークを模した場所、大型の孵卵器にもたれかかる恒人の向かいではマオがこちらを視線によって肉体の貫通を試みているとしか思えないような目つきでこちらを見ている。
恒人の、Dのメンバーである浅葱も「天然」と言われる部類ではあるけれど、この二名、まるっきり異文化だった。
明希とゆうやでいるときはそれほどでもなかったはずだ、ゆうやのテンションの高さには驚かされたが明希はおっとりした人だなぐらいにしか思っていなかったのだが。
マオとセットになった瞬間、変なスイッチでも入ったみたいだ。
恒人も英蔵と他のメンバーに対する態度が違うとよく指摘されるが、ここまでではなかろう。
それはともかく、この先のことだ。
《復活》したマオからもたらされた情報は有益だった、有益すぎて本を読み終わる前にレビューを読んで内容を知ってしまったような背徳感すら感じる。
イノラン、GLAYのヒサシがマシンガンを所持している《マーダー》で、ソフィアの黒柳もやる気、サクラとハイドも一緒に動いていて危険、そしてムックの逹瑯とミヤもかなりハイスペックな武器を所持している上に策戦を立てて襲ってくるので危険、ディルアングレイの京、薫コンビにも注意が必要、そしてヒデがステルスマーダーと言ったのはリュウイチのこと。
スナイパーだったタクヤはもうゲームオーバーなので考えなくていいとして、これだけの情報である、残っているはずの浅葱や涙沙と合流できればこれ以上有利なことはないだろう。
しかしこの一時同盟はあくまでマオの気まぐれにすぎないのだ。
適当なところでゲームオーバーにされてしまう危険性があるし、仮に上手く浅葱や涙沙と会えたとしてもすんなり合流を許してくれるかすら怪しい。
浅葱と涙沙の居所に関して、マオは「移動しまくってるから分からない」と言っていたがその言葉も本当かどうか微妙なところだ。
疑心暗鬼というより普通に疑わしかった。
それにしても、大城が本当に自分を捜しにすぐ傍まで来てくれていたことは感動だ。
後で改めて礼を言わなくてはいけない、英蔵のゲームオーバーに関してはマオが露骨に言葉を濁したので戻ったら問いたださなくては。
恒人がとるべき行動は上手くこの二人と別れて、この情報を持った上で浅葱か涙沙に今後の方向性を相談すること。
そして・・・
恒人は左腕を撫でる。
回復アイテムをなんとしても探し出さなくてはいけない。
あれからもう1時間以上経過したのであと5時間弱で自動的にゲームオーバーになってしまう。
《致命傷判定》である。
−腕がなくなってるか、なら失血死ってとこか・・・
あまり楽しい想像ではない。
ぎゅっとその腕が握られた、いつの間にかマオが間近にいて恒人の顔をのぞき込んでいる。
「明希のバカに言われたこと気にしとん?」
「いえ、別に気にしているわけではないですけど」
ぎゅうううと握る手に力が込められた。
「あ、あの痛いっす!」
「ん?ああごめんごめん、これだけ二の腕細かったら片手で掴みきれるかな〜と思って」
淡々と放たれた言葉の真意が掴めない、いや真意もくそもそのまんまの意味なのかもしれないが。そもそもいくら華奢とはいえ一応成人男子の恒人の腕を片手で掴みきれるわけもないのだけれど。
「俺、一時期けっこう太っててさ〜散々言われたから恒人君みたいに華奢で細い子見るとなんかうにゃうにゃなんだよね」
うにゃうにゃってなんだ?言葉を濁したつもりなら一番重要な部分が濁されている。
「明希ってば体鍛えちゃて昔は柔らかかったのにさぁ・・・」
「俺が体鍛えたってマオ君に関係ないでしょ〜」
明希が窓の外を見たまま口を挟んでくるのを無視してマオはなんとか片手で恒人の二の腕を掴みきろうとする作業に戻った。
「細いなぁ・・・恒人君、何でできてるの?」
「今、マオさんが掴んでいる部分に関して言えば骨と筋肉と皮でできてると思いますけど・・・」
「ふうん、お砂糖とスパイスと素敵な何か・・・じゃなくて?」
「いやあ、俺は男子なんで違いますねぇ」
「そうなの、俺はお砂糖とスパイスと素敵ななにがし等でできてるけどね」
返答に困るボケだった。
「ああ、マザーグ・スーですか俺はアレが好きですね《おやすみ 赤ちゃん 木の上で 風が吹いたらゆりかご揺れる 枝が折れたらゆりかご落ちる あかちゃんもゆりかごもみんなまっさかさま》ってやつ!」
「なんでよりにもよってそんな怖いのチョイスするんですか、しかもなんでそんな怖いの暗記してるんですか、あとマザー・グースです、切るとこと伸ばすとこ間違ってますよ」
マザーグ・スーだとアジア人っぽい響きだ。
思わず突っ込む恒人にマオが拍手を送る。
「恒人君突っ込み上手いな〜、俺は明希にいちいち突っ込むの怠いから任せたわ」
そんなもの任せられても困る。
ようやくマオは恒人の腕を放して煙草に火を点けた。
「まあ食事が終わったら回復アイテム探しに戻ろっか〜」
「そうっすね」
《研究所》フロントに置かれていた《死亡カード》、GLAYのジロウとソフィアのジルのものにはどちらも《鋭利な刃物による斬殺》と書かれていたので、青龍刀を所持しているサクラ&ハイドチームである可能性が高い。
荷物は荒らされていて、役に立ちそうなものは何もなかった。
恒人がパンを食べ終わったのを見てマオは煙草を携帯灰皿に押し込んで立ち上がる。
「さあ行こうか、あんまり時間もないしね、人質・・・じゃなかった恒人君」
今、なにかものすごく不穏な言葉が聞こえた気がしたが。
立ち上がりかけたまま固まった恒人にマオは微笑みかける。
「今のは本音・・・じゃない、冗談だよ」
−だ、だれか助けて・・・!!
マオ
【武器】ソードオフ・ショットガン
【所属】シド
【状態】青
【行動方針】優勝を狙う、恒人と一時同盟(人質?)、回復アイテムを探す
【特性】ドSスイッチON!!
(特殊ルールにより《復活》しました、多くの情報を持っています)
明希
【武器】匕首、ニューナンブM60
【所属】シド
【状態】青
【行動方針】優勝を狙う、恒人と一時同盟、回復アイテムを探す
【特性】ドMスイッチON!!
恒人
【武器】ジェリコ914
【所属】D
【状態】紫(致命傷判定・かなりの不安)
【行動方針】シドチームと一時同盟、回復アイテムを探す、情報をメンバーに持ち帰る
【特性】ツンデレちゃん
(涙沙がテルと行動していることは告げられていません)
関西人に囲まれた中で唯一の東海出身としていろいろ守ってきたものを放棄してソフィアのベーシスト、黒柳は叫んだ。
「残ってるの俺だじゃねぇかっっっっ!!!」
虚空への突っ込み、勿論返答はない。
ソフィアは黒柳を残して全滅だった。まあ全滅トップバッターを飾ったのはガゼットだったので《一番最初に全滅》という事態は回避したが。
「いや、逆に考えろ、これでもう何にも縛られず、俺は自由に動ける・・・とか言ってどう考えても数人で動いてるヤツが有利じゃねぇかよ!!!」
さすがに2日目の昼。バンドメンバー同士で合流できた人間もいるだろう。
赤松やジルはともかく、松岡や都が早々に敗退したのは予想外だ。
「いやクールになるんだ、能生(よしお)・・・オマエはヨシオちゃうてワルオやろって突っ込み禁止!!」
誰も突っ込んでないから落ち着け。
あなたのクールさがなんちゃてなのは周知だから落ち着け。
「幻聴が・・・ダメだ、酒飲みたい・・・」
そういやアル中気味でしたな、まあなにはともあれ黒柳である。ゲームに乗ると決めたはいいが不運に不運が重なって現在、サラマンダー状態。
完全にラリってるテンションのまま山頂へたどり着いた。
廃材置き場。前夜、月をバックに京とメリーのテツの死闘カッコ笑いカッコ閉じるが行われた場所だ。
黒柳はそれを見つけた。廃材置き場の頂上にハンカチが結ばれた長い棒が刺さっているのを。
少し首を傾げてから黒柳は廃材の山を登り始める、やけに安定している足元にまた少し首を傾げた。
廃材置き場の上、ほぼ平らなそこの真ん中に刺さっている長い棒、放置されたディバック、そして《死亡カード》。
手にとって見れば《テツ(メリー)、撲殺》と書かれていた。
ほとんど反射的に黒柳は錘を持っている、自らが討ちもらしたディルアングレイの敏弥を疑う。
死亡カードを置いてディバックを漁れば武器の説明書が出てきた。
「《ビリー・カーンの三節棍》ね・・・ちょうどいい、貰っておこう」
黒柳はディバックを置いて三節棍を引き抜いた、結ばれたハンカチがまるで旗のようにばたばたと揺らめく。
黒柳の中で敏弥に対する疑いが濃くなった、二本の錘を所持している彼ならば、この使い勝手のよさそうな武器を置いていく理由がある。
「しかし・・・」
黒柳はまた首を傾げた。《死亡カード》が置かれている位置と、三節棍が刺さっていた位置にはそこそこの距離があった。
ということは三節棍にハンカチを結んで刺しておいたのはテツ(メリー)を倒した相手と考えるのが妥当だろう。
「まるで、墓標、弔いだよな・・・友人同士だったのか?いや、そもそもメリーのガラ・・・彼がマーダーなら同じバンドのこいつも優勝狙いのマーダーだった考えるべきか?・・・ダメだ分からん」
とにかく有効なサブ武器が手に入ったと、それでかたづけておこう。
どうせこれから会う人間は全員敵なのだから。
誰がマーダーであるかなんてもうどちらでもいい、残っているのは黒柳一人だ。
ハンカチを解くとタイミング悪く強風が吹いた。
春の嵐が天空へとハンカチを運んでいく。
まるで本当に「弔い」だった。
黒柳能生
【武器】ベレッタM92、ファイティングナイフ、ビリー・カーンの三節棍
【所属】ソフィア
【状態】緑(かすり傷判定)
【行動方針】優勝を目指す
【特性】なんちゃってクール
(真矢の助言に従い元ルナシーメンバーは一応警戒しています)
「解せない、んだよなぁ・・・」
空に向かって紫煙を吐き出しながらミヤはそう呟いた。
「なにがよ?」
へらっとした顔の逹瑯に言われてミヤは唇を尖らせる。
「ネロさん達だよ、変だと思わないか?」
「ん。ネロとゆうやとユウナさんがゲームオーバーになったみたいだね」
「生き残ったのが明希と恒人君。おかしいだろ」
髪を再びお団子にしようと奮闘中の逹瑯は気がなさそうに「ん〜」と返事をした。
「仲間割れじゃねぇの〜?」
「この状況であれだけの人数、それも仲良しじゃない面子を集めるのは確かに安易ではあるが、考えてもみろよ、あの中に《裏切り》ができそうな人がいたか?」
「ネロと明希はまず無理だろうね、ゆうやも無理だな。他の二人はよく知らないけど」
「残ったのが明希とゆうやならまだ分かる気がするんだが、襲撃されてたまたま残ったのが明希と恒人君って考えれば・・・まだ納得がいくんだけど」
「じゃあそれじゃね?リーダーなにがそんなに気になるのさ」
「・・・直感」
「なんらかの異常事態が起きたとしても、だよ。残ってるのが明希と恒人君だったら今度会っても簡単に倒せそうだからいいべ。あ、二人が一緒に行動してるとは限らないか」
髪をお団子にするのを諦め、手櫛でときながら逹瑯はぼんやりと言う、だいぶ疲れてきているらしい。元々そこまで身体が丈夫なタイプではないのだ。そんなところもミヤと正反対。
「シドはもう明希だけ、警戒しなくてもいいだろうな。Dはまだ3人残ってる、か・・・何かが引っかかるんだよな・・・」
まだ納得いかない様子のミヤに逹瑯は口を尖らせた。
「ミヤ君気にしすぎだよ。気になるのは《復活》だね。ヤス・・・あ、ヤスはいいわ、また自爆しかねないから。ユッケが《復活》でなおかつ合流できたらラッキーだべ」
自分がユッケをゲームオーバーに追いやった張本人であることは棚に上げるらしい。
「ユッケやヤスでなくても《復活》したヤツと会えたら、色々情報を引き出したい。何か知ってるかもしれないしな」
この時点で残っている参加者はゲームオーバーになった者がどんな扱いを受けているのか知らない、《復活》であるマオがゲームオーバーになってから今までのことを全部モニターで見ていたことを全く知らないが、それでも一旦はゲームオーバーになった者だ、何か知っているかもしれないとミヤが思うのも妥当だろう。
「ま、会える確立低いけどね、ぼちぼち行く?」
「ああ、地獄までの道程を壊滅しながら進むとしようか」
鏡コンビは顔を見合わせてにやりと笑った。
ミヤ
【武器】レミントンM870、ギターの弦、水倉りすかのカッターナイフ
【所属】ムック
【状態】青
【行動方針】優勝を狙う、策戦を立てて不意打ち攻撃
【特性】策士リーダー
(アイテム《鳩笛》を所持しています)
逹瑯
【武器】サイボーグクロちゃんのガトリング砲、バタフライナイフ
【所属】ムック
【状態】青
【行動方針】優勝を狙う、ミヤの立てた策戦に従う。
【特性】俺様サドモード
(ルナシー全員が《ジョーカー》である可能性を疑っています・イノランが《マシンガンのマーダー》である確証を得ています)
シドチーム+恒人のパーティが移動したのとほぼ入れ替わりで研究所に薫と京がやってきた。
周囲を確認しつつ正面玄関の扉を開ける、マオ達が電気を点けたまま行ったので中は明るかった。
「此処だけ電気きてるんやな」
「自家発電やない?薫君、《死亡カード》があるで」
さすがにもうビビリはしない。京は二体の《死亡カード》を手に取る。
「GLAYのジロウさんとソフィアのジルさんか・・・別段一緒に行動しててもおかしくはない取り合わせやな」
薫がのぞき込んでそう言った。京も異論はないので頷く。
「《鋭利な刃物で斬殺》って同じ事が書いてあるってことはお二人は同時にゲームオーバーになったんやな、そして《斬殺》って言うくらいやから、ナイフやない、もっと大きな刀剣類で襲われたってことか・・・」
「え?なんで?」
怪訝そうな顔をする薫を京は少し呆れた顔で見上げた。
「武器がナイフなら《刺殺》って書くのが普通やろ。まぁ書き方に決まりはないけどナイフで刺されて《斬殺》とは言わない・・・そしてたぶんやけど、その武器は威力が高い、ほぼ一撃で相手を倒せるものや」
今度は呆れられないように薫は少し考えてみた、すぐに京の言っている意味が分かった。
《死亡カード》はほぼ並べて置かれている。
不意をついたにしても一人を倒すのに手間取っていればこうはなるまい。薫が理解したのをアイコンタクトで受けて京は《死亡カード》を元に戻す。
「そして襲撃者はそれほどの武器を持っていてもこの二人に警戒されない人物・・・あるいは・・・」
「三人目が裏切ったってとこか」
「そやね」
ヒデの放送によってステルスマーダーの存在が知らしめられたことで裏切りが起きやすくなっている。ごっこ遊びとはいえよほど気心の知れた親しい相手でなければ疑いも持つだろう。
京は《愚神礼賛》を肩に担いだまま、フロントを見て回る。コードの切れた電話機が目に留まった。妙な物が置いてあるなとのぞき込んでみてそれに気づいた。
電話機からはもう一つコードが出ていて、そのコードはフロントの下に続いている。
「・・・・・・」
わざわざダミーのコードを用意するぐらいだ、何かの仕掛けがあるのだろう。肝が据わっているのか深く考えないのか、京は受話器を取ると耳に当てた。
「京君、なにしてんの?」
怪訝そうな顔をする薫に京は口の前で人差し指を立てた。
「呼び出し音がしとる・・・」
「え!?」
確かに受話器からはプルルルルというお馴染みの音が聞こえてきていた、しばらくそれが続いた後、通話が繋がった。
『おめでとう!この電話は《特殊アイテム》です!』
聞こえてきたのはテンションの高いヒデの声。
『この電話を取った人には《一つだけなんでも質問できる権利》が与えられます!本当に一つだけだからよく考えて答えてねっ!』
「・・・は?」
突然の出来事に弱い京は相手が先輩なのも忘れてそう声を上げた。受話器越しにヒデがけらけらと笑う。
『だから、一つだけどんな質問でも答えてあげる、なんでもいいよ〜』
「かおるく・・・」
『おっと!相談はナシ!電話を取った人だけ〜!』
受話器から漏れるヒデの声は薫にも微かに聞こえていたがそう言われてしまえば薫は黙るしかない、筆談も手間がかかるのでヒデにバレてしまうだろう。
京は目を閉じた。
メンバーの現在地・・・いや、それを教えらえても此処から遠かった場合移動されてしまえばアウトだ、確率は上がるだろうがたった一つの質問権をかけるほど有効な情報だとは思えない。
マーダーは誰か・・・その情報もさほど有益とはいえまい、今後もどんどん増えるだろうしそもそもメンバー以外を(ガラはともかく)信用する気は最初からない。
主催者反撃ルートはやる気がないし、反撃する相手にそれを聞くバカはいないだろう。
そこでふとキリトの顔が浮かんだ、彼ならば宣戦布告代わりに聞きくかもしれない。そしておそらく彼は主催者反撃ルートを突き進み、負けた。
別に勝負する気はないけれど、その点で消極的に行動している自分とは大きく差をつけられた感覚に陥る。まだキリトを意識する心があったのかと京は心の中で失笑した。
同時に一つの答えを見つける。
「あの、ヒデさん。万が一俺がした質問が答えられないものだった場合、それはノーカウントになりますか?」
『え〜!?なに、そんな変なこと聞くの!?そうだね、その場合はノーカンで』
京は口角を上げた。
キリトが無茶苦茶に見えてかなり思考を重視した論理的な性格であるのに比べ、京は考えるより直感の精度が高いタイプだ。だからこそ思いついた質問かもしれない。その情報を得てどうするといった深い考えはなく、ただそれが必要だとそう思った。
「では、どんな武器が誰に配布されたかを教えて下さい」
『・・・へっ?』
面食らった様子のヒデに京は淡々と言う。
「支給武器の一覧、その情報が欲しいです」
『・・・ん〜〜!いいけどさ・・・っていうかオマケ情報になっちゃうけど変に疑われるとこまるから言うけど、ディバッグのチャックがIDチップになってるんだよね、だから誰にどの武器が配布されたかは分かるんだよ、配布は本当にランダムだった』
良いオマケ情報を貰ってしまった。京は薫に目配せして笑う。
『じゃあ支給武器一覧、読み上げるよ〜』
京はルールブックの名簿ページを開いてペンを構える。
「お願いします」
京にしてみれば本当に直感で思いついた質問だったが、手にしてみればかなり有益な情報だった。教えて貰えたのは「武器名」のみではあったが。マシンガンを所持しているのはイノランとヒサシだが初期段階でケン・ロイドがマシンガンによってゲームオーバーになっていたことを鑑みれば、《マシンガンのマーダー》はイノランで間違いだろう。まずゲームオーバーになった人物にチェックを入れていく、有効な武器は倒した相手が持ち去っているはずだ。次に銃器を持った人間にチェックを入れていく、注意しなければいけない相手。
「着目すべきなんはこれやね、ハイドさんが持ってる《少女趣味》とユウナさんが持ってた《自殺志願》、名前のニュアンスからして俺の《愚神礼賛》と同じ《超大当たり判定武器》ってことやし・・・まぁユウナさんはさっきの放送で名前呼ばれたけど」
「そやな、なんらかの特殊な武器ってことになるからな・・・」
「とりあえずハイドさん見かけたら即刻逃げるとして、後は、これか?」
京は大城の名前を指で差す、支給武器は《簡易レーダー》。
「うん、でも彼はゲームオーバーになっとるからなぁ、Dやろ。ちょいちょい話は聞くけど人格的に評判の良い連中や、彼がごっこ遊びに乗ってたとは考えにくいから、イヤな話《マーダー》が所持してる可能性が高い」
大城の機転によって簡易レーダーは破壊されてしまっていたのだけれど、勿論そんなことまでは分からない二人は複雑な顔で頷き合った。
「にしても堕威君と敏弥は良い武器当ててるけど、心夜がいきなり心配になったなぁ・・・」
考え込む薫の腕を京がにやりと笑って引く。
「薫君、これ見て。タクヤさんに支給された武器」
「ワルサーWA2000?これがどないしたん」
「知らんのか、これスナイパーライフルやで」
確かに書かれているのは武器名だけなので知らない人間が見たら想像できないものも多かった、首を傾げる薫に京は八重歯を見せて無邪気に笑う。
「タクヤさんはもうゲームオーバーになった、誰にやられたかは知らないけどスナイパーライフルやで。持ち運びは難しい、その場に放置されてる可能性が高いと思わん?」
「そりゃ、確かにそうやけど・・・それがなに?」
京はじれったそうに目を細めて薫の腕を叩いた。
「なにちゃうで。有効な遠距離攻撃ができる武器が手に入るチャンスやん!」
「そんなこと言うたって、何処にあるかなんて・・・」
「ああもう!そのヤバイ頭ちゃんと使えや!」
「・・・ヤバイってナニが?中身?それとも髪?」
「自覚あるんやな、オッサン」
むにーと京の頬を薫が引っぱった。
「ひゃおるふん!ひひゅーふひひがしへのほーへひしんしはへ!」
「《薫君、支給武器以外での攻撃禁止やで?》」
なんで分かるのかは不明だが、京の言いたかったこと一言一句しっかり返して薫は微笑む。
「ツッコミは攻撃に含まれんのやろ〜!ほれ〜!」
べしっ!と京の掌が薫の顔面を叩いた、容赦なく顔の真ん中を狙った一撃に薫の手が放れる。
「ツッコミは攻撃やないんやろ〜!」
「子供かっ!」
「そっちがやろ。ああもう・・・スナイパーライフルやで!?これを使おうと思ったら高台に決まってるやん!」
そう言いながら京は地図を広げ、洞窟の上を指さす。
「此処!!」
「あ、そうか・・・確かに・・・ん?あかんで京君。此処もうすぐ禁止エリアになる」
「え!?あちゃー。良い作戦やと思ったのに・・・」
口を尖らせる京に薫が苦笑していると、上空から爆音が聞こえた。バリバリというそれが何か一発で分かる特徴的な音。
「・・・ヘリコプターが飛んどる」
「なんやろ、なんか意味あんのかな?それとも通過してるだけ?」
首を傾げる二人の上空で音はどんどん大きくなっていた。
薫
【武器】S&W M500、ワルサーPPK
【所属】ディルアングレイ
【状態】青
【行動方針】京を守る、メンバーを探す、優勝を狙う、強い武器を持った人間を警戒
【特性】保護者モード全開
京
【武器】愚神礼賛−シームレスバイアス−(超大当たり判定武器)
【所属】ディルアングレイ
【状態】青
【行動方針】薫に任せる、《ゲーム》の《攻略法》を探す、強い武器を持った人間を警戒
【特性】通常モード
(《支給武器一覧》を手に入れました、イノランが《マシンガンのマーダー》と確信しました)
島を旋回するヘリコプターに浅葱は目を細める、幸い少し開けた場所だ。周囲に気を配りつつ双眼鏡を使ってヘリコプターに焦点を合わせた。
窓に知っている人物の顔を見つけた気がした、いや、知っている人物だ。ヘリはゆっくりと着陸態勢に入る。
「・・・廃校の方角?いや、そもそも廃校のグラウンド以外降りる場所はない、か」
浅葱は双眼鏡を下ろし、目を閉じた。
なんらかの緊急な物資が必要となった可能性もある、ヘリコプターなら船より速いだろう。それに今はごっこ遊びの最中、参加者以外島にいてはダメなはずだ。
しかし、双眼鏡が捉えた人物のことが気になった。
知っている顔。
「いや、むしろこの面子で彼がいなかったことが変だったのかな、単純に予定が合わなかったのかと思っていたけれど、そうだとしても・・・」
何故このタイミングで?
《復活》なんてはちゃめちゃなルールがあるぐらいだから、もしかすると・・・
「《ジョーカー》さん登場?」
浅葱
【武器】斬馬刀
【所属】D
【状態】青
【行動方針】メンバーと合流、島の謎を解明
【特性】ヴァンパイア
(アイテム・双眼鏡を所持・ヘリコプターに乗っていた人物を知っています)
幕間−管理システム−
「な〜んで俺は当然のように手伝わされてるんやろ・・・」
モニターの前でそうぼやくタクヤにヒデが軽快に笑った。
タクヤは普通の制服に着替え、胸の辺りにだけ血糊をつけた姿。
「だって、たっくん最初からお手伝いって約束だったじゃんか〜」
「たっくんって呼ばないで下さい。あとお手伝いという名目の参加者じゃないですか、最初から俺も参加させる気満々だったでしょう?」
「うん」
悪びれなくヒデが頷く。
「いや〜、イノランちゃんが巻き込むかなぁ〜と思ったらやっぱり巻き込んだね!」
「・・・到着したみたいだけど」
そんな二人の会話を黙って聞いていたY・J氏が入り口を指さした。
ドアの前で一礼する彼にヒデは笑いかける。
「うん、やっぱり2日目の午後じゃん、中だるみするじゃん、ここらでいっぱつどかーんと起爆剤入れとかないとね!」
Y・J氏とタクヤは苦笑しつつも頷いた。
そして既にランプ付の制服に着替えた彼にディバックを手渡す。
「期待しちゃってるよ〜!」
西川とJの二人は山の遊歩道を進んでいた。相変わらず主催者反撃ルートの方法は分かっていない。
タネが割れてしまえばごく単純な発想の転換なのだけれど、やはり先入観があると難しいものだった。
「しかしリュウともイノとも会えねぇなぁ・・・」
「確率低すぎるやろ」
ぼやくJに西川は呆れた顔。
「まだ24人、いや一人復活したから25人おるんやから、いくら禁止エリアで狭まってきてるって言ってもそんなピンポイントで会えるわけないやん」
「でもよ、リュウかイノだったら主催者反撃ルートのやり方気づいてるかもしれねぇだろ?」
そりゃあまあJよりは・・・という言葉は友情に免じて飲み込み、西川は頷いた。
「・・・おい、アレ」
Jが指さす先を見て西川も驚いた。死亡カードが3体転がっている。
「激戦があったみたいやな」
「ああ」
Jは一番手近な死亡カードを拾ってみた。
《ネロ 銃殺》と簡潔に書かれていた。それを元に戻し、その少し先にある死亡カードを見る。
《ゆうや 銃殺(一発)》。
「銃撃戦があったのか?」
「そういえば昼前に立て続けに聞こえたのあったやん、あれとちゃう?」
西川は少し先に進み、最後の死亡カードを手に取る。
《ユウナ 大きな銃創》と書かれていたので西川は首を傾げる。
「ユウナって、スギゾウ君と一緒にやってた子やろ、なんかこの子だけ書き方が違うな」
「相打ちになったってことか、こっち側の・・・ゆうや達が強力な武器を持っていて・・・」
Jもそれを顔をしかめてのぞき込んだ。
「武器は全部持ち去られてるけど・・・まぁ聞こえたの昼前やし、俺らの前に誰かが来たのか、それとも、他にも誰かいたか・・・」
生憎ここまで低い後輩の人間関係までは把握していない二人はなにがどうなったのかまったく分からなかった、ゆうやとネロが交流があることすら知らない。
「そーいや明希はどうしてんのかな?あいつけっこう信用できそうなんだけど」
ゆうやの名前を見て、自分を尊敬してくれている後輩のことを思いだしたJはそう呟く。
死亡カードに集中していたその時。
「失礼します」
と丁重な声と風切り音が同時に聞こえた、Jはとっさにひのきのぼうでそれを受け止める。分厚い刃、視線を上げるとガラがそこにいた。
「いきなりご挨拶じゃねぇか」
笑うJにガラは神経質そうな表情で言う。
「無礼を承知で失礼します、Jさん、西川さん。主催者反撃ルートを進ませるわけにはいきませんので」
骨っぽい外見に似合わず、かなりの力を込めて鉈で押してくるのを受け止めながらJは笑みを深めた。
「優勝狙いってわけか?いいじゃねぇか気骨があって」
「いいえ」
きっぱりと否定されてJは驚きの表情を浮かべる。ガラのほうは神経質そうな顔のまま淡々としている。
「じゃあなんなんだよ、オマエ」
「目的があるんです、達成すべき目的が」
「は?」
まさかガラが京を優勝させようとしているなどということは知るよしもないJはその発言に少し動揺した。
ガラはいったん鉈を外し、距離を取りつつJの前に出る。
「そのためならば不肖ガラ、大大大先輩であろうが倒す覚悟です」
「・・・よく分からねぇけど、やる気なら相手してやる、下がってろよ!」
西川にそう声をかけ、Jはひのきのぼうを構えた。考えるのが面倒くさいタイプの男ではあるがだからこそシンプルだ。
「ありがとうございます」
ガラは丁重にそう言って鉈を構えた。
茂みの向こうへ退いた西川は慌ててディバッグを探っていた、ひのきのぼうと鉈では明らかに鉈に分がある。それに年齢的に白兵戦となればJが不利だ。
説明書には《使ってからのお楽しみ》と書かれた猫背刑具を取り出す。
今、これを使うべきではないのか?
しかし仕掛けはヒデだ、どうなるかは分からない、7割ぐらいろくでもないことになりそうな気がする。
念のためと少しJ達から距離を取ってから、一応引き金の形式をしたものに指をかけた。
・・・で?どう使うんだ、これは。
銃器の上にノートパソコンひっつけたような代物だ、どうすればいいのか?銃口らしきものがあるからこれを向ければいいのか、というか銃なのか?
Jとガラ、接近戦中なのだが危なくないのか?
離れなきゃと思って離れたら案外遠くになってしまったけど木々の間から狙ってもいいのか?
なんなんだこれは!
だんだんイライラしてきてしまった、昨日もろくに寝ていないし、疲れたし、武器の意味は分からないし、地味な緊張状態が強いられているのでストレスも溜まっている。
「めんどいわ!もうどうにでもなれ!」
引き金をひいた。
ぱかっと平たい部分が広がったその瞬間。
みゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!
大音量で猫の声が鳴り響いた。
「なんやそれぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
西川も叫んだ。
猫背刑具、このごっこ遊びにおいては《派手な防犯ブザー》であった。
「な、なにごとですか!?」
しかし効果はあったらしい、近くにいた人物が驚いて駆けつけてきた。それもGLAYのタクロウ。100%信頼できる相手。
「ああ、ちょっと今大変なんや!そっち武器なに!?」
タクロウは少し困ったようにディバックから支給武器を取りだした。
「これです・・・」
そう言ってタクロウが取りだしたのは五寸釘と金槌、しかも本物。
「なんやそれ!?」
「えっと《河本綾瀬の五寸釘と金槌》、《ハズレ》武器です、本物だから使用禁止って書いてありました・・・」
役に立たなかった、幸運の女神は微笑んでくれなかった。
下手をすると無駄に自分の存在位置を知らしめただけになる、これはまずい、Jにも言って逃げたほうが良い。
「うるさいなぁ・・・」
ふと、真上から聞き慣れた声が降ってきた。
「人が寝てるのに、うるさいよ、なにがみゃぁだよ・・・」
イノランが、あれほど探しても見つからなかった彼が、目の前にいる。
と言ってもイノランは鉄棒にやる要領で枝に膝をかけてぶら下がっていて、西川から見ると逆様に見えたが。
「あの、イノラン君!あっちでJ君がバトルになってんねん、なんか有効な武器持ってたら手を貸して欲しいんやけど」
「いいよ〜」
無表情のままだったがイノランはあっさりとそう言った、さすがに逆様だったので頷きはしなかったけれど。
よかった、よかったけれど、どうして自分の胸の辺りにリボルバー(コルト・パイソン)が向けられているのだろうと西川は笑った。
「イ・・・イノラン君?」
「手は貸してあげるよ、両方にだけどさ」
イノランがにっこりと微笑んだかと思うと、自分の胸の辺りで銃声が響いた。
タクロウはなにが起こったのかまったく分からなかった、突然聞こえた大音量の猫の声に驚いて来てみれば西川がいて、その西川がいきなり木の上から出てきたイノランに撃たれた。
まったく飲み込めない、しかし逃げた方が良いことだけは分かった、西川を見捨てるのは善人気質のタクロウには少々心苦しかったが、踵を返して走り出した。
イノランは木にぶら下がっていた、降りるのには時間がかかるはずだ、そう思って走った。木々の間を抜けていく途中何かに足を取られて転んでしまった。慌てて起きあがろうとするがまた足を取られる。見れば凧糸が足に絡まっていた。木の間に張ってあったのだろう、見ればそこかしこに凧糸が、ちょうど脛の高さで張り巡らされている。
トラップだ。
最初に転んだ時点で気をつけていれば足に絡まってしまうことはなかっただろうに、焦りすぎた。凧糸を解こうと奮闘していると、すぐ傍で草を踏む音がした。
見上げるとイノランが目の前に立っていた。
無表情でタクロウを見下ろしている。
「・・・どうも」
挨拶してみた、引きつり笑いで。
「適当に張ったのにこうも上手くかかられると拍子抜けにもほどがあるんだけどなぁ、じゃあタクロウ君、今から俺は嘘を一個だけ言うからそれを当てれたら見逃してあげよう」
淡々と一方的に話を進められる。
「いつだったかのクリスマス前に一緒にライヴやったじゃない?タイトル長ったらしくて忘れたけどドームでさ、あの時のことなんだけど、最後に手を繋いでジャンプしたでしょ、その時、俺Jとタクロウ君に挟まれてて、二人とも背が高いのに目一杯手を上げるもんだから地味に苦しくてちょっとムカついたんだけど・・・」
「は?」
確かにドームで対バンはしたけれど、今の中に一つ嘘があると言うのか?必死で記憶を辿るがイノランが言った内容に間違いはないはずだ。
「あ!ちょっとムカついたっていうのが嘘じゃないですか?」
「・・・なんで?」
軽く微笑んでイノランは小首を傾げる。
「いや、だってイノランさんはそんなことでムカついたりしないでしょう」
「俺の人格に良い評価を持ってくれているのはとても嬉しいけれどハズレです」
すっとコルト・パイソンが向けられる。
「あの、じゃあ正解は?」
「《嘘を一個だけ言うからそれを当てられたら見逃してあげる》っていうのが嘘だよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いや、それ見逃す気ないってことじゃないですか?」
「大正解」
再び銃声が木霊した。
イノランはタクヤを倒した後、マオ達は此処がタクヤの狙撃犯以内なので武器回収を諦めたであろうと予測して此処に舞い戻ってきていたのだ。
そして木の上で休息をとるので念のため、凧糸を張り巡らせておいた。
適当である。
あるいは思いつきの気まぐれだ。
ゲームオーバーになったタクロウから離れてイノランは西川の所に戻ってくる。
こちらもきっちりゲームオーバーになっていて、ものすごく色々言いたいがどう言っていいのか分からないという顔でイノランを見上げていた。
「・・・・・・キャラが違うやん」
「ん〜。どうだろうね、違うのかな?」
「違うて!イノラン君がマーダーとかありえへん!」
「ありえない?ありえないことはないじゃん、ごっこ遊びなんだから遊ばなきゃ」
イノランは軽く笑って木の上からディバックを下ろした。
そしてもう一つ、手を伸ばして荷物を下ろす。
筒の形状をした物、ネロの支給武器であったネコパンチバズ。
それをその場に放り出すと、踵を返して走り出した。
何事だと西川が唖然としていると慌てた様子でJが戻ってきた。
ガラとの戦闘でダメージを受けたのかランプはオレンジ(大怪我判定)に変わっている。
「え?今イノいなかった?」
「・・・・・・いや、俺ゲームオーバーやから答えられへんし」
「え!?なんで!?」
こっちが聞きたいというか、ゲームオーバーになっていなくても状況説明しろと言われて説明できる自信がない。
ゲームオーバーになっているとはいえ普段饒舌な西川の困惑した様子にJはますます意味が分からない。
「あ〜・・・とりあえずコレ、武器」
西川はイノランが置いていったネコパンチバズを指さした。
意味が分からないながらもJはそれを拾い上げる。
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・あの、さっき攻撃してきた、ガラ君だっけ?どうしたんや?」
「猫の声がしたら逃げてったけど、あれもなんなんだ?しかも向こうノーダメージだよ、この武器ダメだわ、ひのきのぼうはやっぱ無理があるんじゃねぇ?」
役には立っていたらしいが、マムシを追い払ったらコブラが出てきてしまったようなこの結末、どうしようもないというか、救いようがない。
「なんだっての・・・」
この意味不明な状況にJは頭を抱えた。
そんな会話を少し離れた場所で聞きながら、完全に巻き添えでゲームオーバーになったタクロウは足に絡んだ凧糸を解きながら、やっぱり意味が分からなかった。
ただ、ファンがシャレで自分の名前に「多苦労」と当てはめるのはこの状況だと言い得て妙というか、ぴったりだなとどうでも良いことを思った。
「あとはヒサシと・・・てっこか・・・」
ヒサシはともかく、テルに関しては、
「すっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっごい不安・・・」
さすがよく分かってらっしゃる。
J
【武器】ひのきのぼう、ネコパンチバズ、猫背刑具
【所属】なし
【状態】オレンジ(大怪我判定・混乱中)
【行動方針】《主催者反撃ルート》。
【特性】ベーシストホイホイ
(猫背刑具の効果を知りません、イノランがマーダーだとは気づいていません)
ガラ
【武器】鉈
【所属】メリー
【状態】青
【行動方針】京を優勝させるためディルメンバー以外の参加者を倒す(奉仕型マーダー)
【特性】?
イノラン
【武器】ミニウージー、エリミネーター、手榴弾、コルト・パイソン、自殺志願−マインドレンデル−、コルト・ウッズマン
【所属】なし
【状態】緑(かすり傷判定)
【行動方針】マーダー
【特性】危険乱数
(《回復アイテム》を大量所持しています)
【西川貴教 所属なし ゲームオーバー】
【タクロウ GLAY ゲームオーバー】
(《河本綾瀬の五寸釘と金槌》はタクロウのディバッグに入っています)
【残り23人】
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