ドウタヌキ?


明日、星が帰るまで


『今夜、星は降る』の続き、というか打ち上げの様子、その後。
ほとんど蛇足です。
逹瑯、明希、ガラ、涙沙、恒人、イノランが《余興》で女装しています。
逹瑯→黒のサマードレス ガラ→赤のチャイナドレス 明希、涙沙→ボーダーのセーター、チェックのプリッツスカート
恒人→ピンクのエンパイアワンピに白のジャケット イノラン→ノースリーブのタートルネックにロングスカートです。





明日、星が帰るまで。




やるんじゃなかったとまでは言わないけれど、少しばかり窮屈だ。
浅葱の笑顔がだんだん苦笑いになってきてるだとか、マオが本格的に沈没している(酔ってではなくメンタル的に)とか、こんな状況でも無表情なミヤがすごいとか、大城はなんでわざわざ椅子を持ってきてこのテーブルに移動してきたんだろうだとか、英蔵はいつまで隣で挙動不審でいるともりだとか(まあちょっとだけ安心するけれど)色々なことを思いながら恒人はぼんやりと会場内のどんちゃん騒ぎを見ていた。
そもそもこの面子の中で酔えるわけもないので、ウーロン茶片手に。
「ツネちゃん、《余興》やるのイヤだったの?」
大城がそう問いかけてきたので恒人は笑って首をふった。
「イヤではないですよ、これぐらいは」
「だよね、衣装でもっと凄いのあったもんね!」
英蔵の言葉には答えない。「聞いてる?ねえ、聞いてる?」とか言ってくるので「はいはい」と頷くだけで流す。
ワンピースの上にジャケットまで着ているので露出度でいけばかなり低め(当社比)だし、ピンクが恥ずかしいようなことを言ったが、ピンクの衣装だってあった。
というか英蔵、ここに長居するつもりなら大城のように椅子を持ってきたらいいのに、ずっと横で立っている。
と、いうか・・・もしかして俺に気を使ってくれてる?いや、浅葱がいるから此処にいるだけか。そんなことをふと思った。
「・・・なんかるいちゃん達、変わったダンス踊ってるね」
浅葱がそう言ったので、そこにいた面々は一斉に盛り上がっている集団のほうに視線をやった。
「は・・・《ハレ晴レユカイ》踊ってるっ!?」
マオがそう叫んでテーブルに頭を押しつけて悶えだした。
たしかに、明希と涙沙が《ハレ晴レユカイ》を踊っていた。ちなみに歌っているのはガラと逹瑯で、ある意味で脳と心臓に悪いデュエットだ。
何故、踊れる!何故、歌える!というツッコミは禁止、だろう。
「はれはれゆかい?変わったタイトルだね・・・誰の曲?」
浅葱が不思議そうに目を細めた、しばし誰が答えるかを押しつけ合うように視線が交錯するが結局、大城と恒人に目で急かされて英蔵が言った。
「アニソンですよ、アニメのエンディング曲・・・」
「最近のアニメの曲は振り付けまであるの、すごいね」
感心した様子の浅葱にミヤがぼそりと言った。
「浅葱君って、浮世離れしてるとか言われません?さすがにアレは俺でも知ってるけれど・・・」
「ああ、よく言われるかも・・・」
「ミ、ミヤさんが《ハレ晴レユカイ》を知っている、だと!?」
驚愕の表情を浮かべたマオをめんどくさそうに見返してミヤが言う。
「多少はな・・・・」

曲がサビに入ると「「あるっはれ〜〜たっひぃぃぃのことぉぉぉ♪」」と高らかに歌いながらガラと逹瑯も踊りに参加した。カオスだ。
見ている集団も爆笑の渦に包まれる。
「ああ!一人足りへん!ツネ〜〜!来て〜!」
「いやっ!踊れませんからっ!」
涙沙に呼ばれて恒人が慌てて断る。
「ちぇ〜」と残念そうにしつつも、4人で踊りは続けられる。
「「まっほういじょ〜〜〜のっゆ〜〜〜かいがっ!!かぎりぃぃぃぃぃなくっふりそぉぉぉぉぉそぐっ!!ふかのうじゃっっっないっっよっっっ!!ちゃちゃちゃちゃん♪」」
一人足りないのなんて踊る前から分かっていただろうに、気まぐれか、見た目より酒が入っているのか。
「「あしっっっったまぁぁぁぁあたああああああうときぃぃぃぃぃわらいながぁぁぁぁぁあらはぁぁぁぁみんぐぅぅぅぅっっっっ♪」」
そもそもそんなに力んで歌う曲ではなかろうに、ものすごいアレンジがかかっている。
「「うれっしぃぃぃさを!あっつぅぅぅぅめよう!かんたんなんだよ!こ・ん・なのっ♪」」
踊ってるとはいっても4人とも完璧に踊っているわけではなく、ほとんど適当だったが、涙沙と明希なぞはなまじアイドルっぽい恰好をしているだけ様になっていた。プリッツスカートがふりふり揺れて、ある意味、本家に並ぶレベルの光景。
逹瑯とガラは踊りというよりは『奇妙な動き』になっていたが。直視していたら特殊判定喰らいそうだ、体が動かなくなるとかの。特に二人ともタイトなデザインのものを着ているので軟体動物っぽい。
あと歌がだんだんデスボイスシャウトになってきていた。
「・・・行くべきでしたかね」
背もたれに片腕をついてそれを見ていた恒人がぽつりと言った。
「ん?」
隣にいた大城がそれをしっかり拾って答える。
「いや、ノリ悪かったかなぁと・・・」
「無理矢理やる必要はないでしょ」
苦笑気味に言う大城に恒人も笑う。
「恒人君、明希より年下だよね。明希しこにもその落ちつき分けてほしいわ〜」
同じく背もたれに片腕をかけて踊る4人組を見ていたマオが半ば本気っぽく言うので他の面子はみな笑ってしまった。
「いやあ、ヒデさんやイノランさん達もあれ見て楽しんでいるみたいですし、そもそも《余興》でこの恰好してるんですから・・・やるほうが正しいのかもな、と思いまして」
そんな恒人をマオはじっと見てから浅葱のほうを向いて言った。
「ベーシスト交換しません?」
「「「ダメですっ!!」」」
浅葱、大城、英蔵が綺麗にそろってきっぱりと答えたので、マオとミヤが笑い出した。
「冗談です、冗談!じゃあ性格だけでも交換・・・」
「ダメですってば!」
本気で不服そうな英蔵に「冗談だっての」と大城が呆れたように言う。
「涙沙さんも明希さんも可愛いっすね〜。違和感ないし・・・俺もあれだけ可愛ければ開き直れたんですけどねぇ」
恒人の呟きに、他の面子は一瞬なにか言いたげな顔になったが結局全員黙った。
「でもまあ、案外やってみたら楽しいかもしれないぞ、ライヴやイベントとかでぐあああああってテンション上がってる時みたいになっちゃえば、だけど」
どうやらミヤは自分に語りかけているようだということに気づいて、恒人は前を向いてミヤに視線を合わせた。
「緊張も緩和されるかもしれねぇぞ?」
「・・・緊張、してるの分かります?」
「するだろう、普通」

「「つっかまえてみぃぃぃぃぃてぇぇっぇぇfghlk;:!!おっっっっおきっっっなっ!!夢っっ!!夢っっ好きでしょ♪」うがあぁぁぁlらあらえらたえ、アナタが大嫌いですぅぅう!!ちゃらちゃちゃちゃ!ちゃちゃちゃん!!」
逹瑯のアドリブと言うには過激すぎる最後のシャウトが終わり、『ハレ晴レユカイ』は終わったらしい。『ハレ晴レユカイ・大嫌いリミックス』だったのかもしれないが。
あとよく考えたらキャラ的に全員ハルヒじゃねえか、他がいない。

「逹瑯は極度に緊張するとああなるんだ、頭オカシ・・・いやテンションがおかしくなっちまう。適度に緊張している時が一番いいんだがな・・・」
「・・・あれ緊張されてるんですか?」
「アレを見る度に大型犬用のケージに放り込みたくなるが、ああやって緊張ほぐしてるんだろう、アイツとしては」
「ちなみに明希は本気で楽しくなっちゃってるからね・・・あ!!あ〜・・・誰彼かまわずキスするなというに・・・」
マオが頭を抱えてため息をついた。
「まあさ〜、俺もけっこう人見知りするし、こーいうとこって緊張するけどね、礼儀欠かなきゃ好きにしてていいなかぁって思うよ。明希しこのあのくそ度胸を分けて欲しいと思う時もあるけど・・・まあ、そんなこと今更言われんでも分かってるだろうけど、恒人君も」
ぎゃーぎゃー飛び跳ねている集団を、見て目を細めながらマオが小さく笑う。
「あ〜、知らない間にゆうやとしんぢも混ざってるし・・・」
「そういえば、ウチの他の二人は?」
ミヤの言葉には大城が応える。
「ユッケさんとサトチさんならあっちの、入り口の方のテーブルで潰れてましたよ」
「ま、静かでいいか」

「ツネ〜〜!!《LOVEマシーン》やるから今度は来て〜!!」
涙沙が集団からひょいっと顔をのぞかせてそう呼んだ。今度は恒人も笑って立ち上がる。
「は〜い!行きま〜す!」
足を踏み出しかけると隣に英蔵が並んだ。
「ツネが行くなら俺も行こっか・・・なぁ?」
「・・・好きにしてください」


そして残ったのは、大城と浅葱、ミヤとマオ。
なんかもう凄い人数で《LOVEマシーン》を歌って踊っている集団を眺めて笑う。
「マオ君!マオ君!はやらないの〜!?マオ君がやってくれたら俺、萌えるの・・・」
と何か微妙なことを言いかけた明希がゆうやに引きずられて集団の中に紛れ込んで見えなくなった。
「ここまで来たらもういっそ踊ったほうがいいぐらいだなぁ・・・行こうかな、俺も」
結局大城も立ち上がって行ってしまって、残ったのはリーダー三人。

「「にっっっっっっっっっっっっっぽんっの未来は♪WOW!BOW!WOW!WOW!」う゛ぉい!」
たぶん全員が口ずさんでいるのだろうけれど、ガラと逹瑯の声が飛び抜けて聞こえる。
妙な合いの手を入れているのが逹瑯だ。

「あ!ハイドさんとサクラさんいつの間にか逃げてる!」
歌声で不在が分かったらしい、会場内を見渡してマオがそう叫ぶ。
潰れている人間以外(ここにいる三人を除いて)全員がいまや踊って歌っている。いや、イノランだけはさりげなく手拍子に止めていたけれど。
「しかし、プリッツスカートであの踊りって勇気あるな、明希達・・・」
「いや、るいちゃんはもっとすごい恰好もしますからね」
ミヤの言葉に浅葱がそう答えたので、ミヤは目を細めた。
「・・・どの方向に凄いんですか?」
「う〜ん、多方向、ですかね」
「多方向・・・って!?」


「「だ〜〜〜んっす!!だんしんぐっ!お〜〜〜〜〜〜るなぁぁぁぁぁいっ」う゛ぉいっ!」
大城に小突かれながら珍妙な踊りをする英蔵を楽しそうに見ながら恒人も軽くだが踊っていた。中心では「パンツ見えますよ!?」というくらい激しくかつ無駄に上手い踊りを披露している涙沙と明希。
特に涙沙の上手さが半端じゃない。
「しんぢそれじゃ阿波踊りだよ!」
「わざとだから」
「逹瑯!変な合いの手入れるな、笑えるだろっ!」
ぎゃあぎゃあわめいて、歌いながら踊る酒臭い集団。


「メイドはないな、あ、巫女ならやった・・・」
「俺、メイドならあります」
「なんだかんだでみなさん色々着てますよね」
デジカメでその様子を撮影しているミヤ、半眼で眺めているマオ、楽しそうに笑っている浅葱がそんな会話を交わす。
《LOVEマシーン》を踊り終わったらしい酔っ払い(一部シラフ)集団がぎゃーぎゃーハイタッチを交わしている。だんだん本気で無礼講になってきた。
その集団から頭一つ分飛び抜けているのが(二つ分飛び抜けているのはメリーのテツだ)こちらへとことこ歩いてきた。
「どうした、逹瑯。疲れたか?」
ミヤが差し出したウーロン茶を逹瑯は一気に飲み干して、酒で据わった目でミヤを見た。
《余興組》であるため、サマードレス姿だが偽チチをどっかに捨ててきたらしく、ある意味で衣装っぽい姿になっていた。これでいっそ目のまわり黒塗りならファンに受けそうだ。
「ミヤ君あんさ、あんさ・・・・」
「なんだよ?」
「《青春アミーゴ》歌うから来てよ」
少し首を傾げたが、しかたないなという顔をしてミヤは席を立って逹瑯についていった。


「鳴り響い〜ぃた、携帯電話、嫌なよかぁんが、胸をよぎぃぃる♪」


「うあ!逹瑯さんが急に真面目に歌い出した!てかミヤさん踊れるんだ!!」
目をむくマオにやはりどこか楽しげに浅葱が言う。
「るいちゃん嬉しそうだなぁ」
「一人だけ踊りのレベルが地味に違いますね・・・」
「元アレなもので」
「アレというこコレですか」
ある意味年寄りくさい会話を交わして軽く笑った。
「しぃぃっ!お〜れたちはいつでぇぇも、2人で1つだぁぁった、地元じゃまっけっしらっずぅ〜、そうだろ、しぃぃっ!お〜れたちは昔から、この街にあこがぁれて、し〜んじていっきってっきたぁぁ♪」
適当に二人一組になって踊り出す、何人かあぶれてしまった者もいたが。
此処から確認出来るのは、わざわざ引っ張り込まれたミヤと逹瑯、しんぢと明希(ゆうやがあぶれた、というかしんぢに蹴り出された)、ガラと結生、涙沙と大城、英蔵と恒人の組み合わせ。ヒデはイノランを引っ張り込んで一緒にやっていた。
「て、いうか逹瑯さん・・・ミヤさんを呼ぶタイミングが・・・」
「ねぇ?やりたかったのか、な?」

「ふ〜るえ〜る手のひぃらを〜強く握ったぁぁぁぁ!しぃぃっ!お〜〜れたちはあのこぉぉろ♪」
もはや踊ってるのかじゃれ合っているのかよく分からない状況になってきた。



SI 故郷を捨て去り でかい夢を追いかけ 笑って生きてきた



「あ・・・」
「シンクロしたよね、今、何かが・・・」
小さく声を漏らしたマオに浅葱がそう言った。

不思議なことに全員が、いや、やっていた全員が気づいたからこその《シンクロ》か、もっともリアクションはそれぞれに別れたけれど。組になった相手と視線を逸らしてしまったり、一瞬はっとした後、何事もないような顔をしたり、笑い合ったり。

「いやあ、まさか《青春アミーゴ》にシンクロするとは驚きです。ちょびっとだけ混ざれば良かったなとか思った」
そう言った時丁度、あぶれて寂しげにしているゆうやと目が合ったのでマオは手を振ってやった。
「・・・うちはあれで2:2だから、オレが入るとややこしくなるからね」
「ああ、踊りたくないわけではなかったんですか」
「踊りたかった、かな?」
浅葱のその言葉にマオは乾いた笑いを漏らす。
《青春アミーゴ》が終わってまたぎゃーぎゃーハイタッチ。スタッフやらライターさんやらも混じっているのでかなりの人数。理性を保っておかなきゃいけない立場の人間しかもはや正気ではなかろう、これだけ騒げば酒を呑んでいなくても空気に酔っ払う。
「マオく〜〜ん!いいかげん来てよ!来てくれないと脱ぐよっ!?」
集団から出てきた明希がそう叫ぶ、酔ったところに激しい運動をしたのでもうフラフラだ。
「ははははは!!めっちゃ面白い!!その誘い方!!なら浅葱君、来てくれんと脱ぐでっ!」
明希について出てきた涙沙もきゃらきゃら笑いながら明希のマネをした。
「意味分からんし・・・」
「面白いじゃない?」
「いや、明希の場合は本気で脱ぐ可能性が・・・」
マオは頭を抱えながら席を立って明希の方へ歩き出した。浅葱もそれに続く。


どうやら宴はまだまだ続きそうだった。





- 11 -

*前次#


ページ: