そんな勇者の憂鬱!
−お約束は笑って流して笑え
そ ん な 勇 者 の 憂 鬱 !
D編
はるか昔に大戦争があって、その時に封印された魔王が復活したらしく、魔物達が蠢きだしたのです。そして此処はとある田舎町。はい、スタート。
大城「はい、スタートじゃねぇよ!どれだけ適当な導入だよ!もうそれでクソゲー決定だろうが!ってゆーかなんで俺の台詞の前に『大城』ってついてんの!!小説として最悪の禁じ手だろうが!読書まともにしない中学生かっ!」
突っ込みはいいんでとりあえすお城へ行って王様へ会ってきてくださいよ。
大城「あれ!?なんかよく見たら周囲がおかしいぞ!?ドット絵になってるよ!!ってゆーか俺もドット絵!?スーファミレベルのRPGってことかっ!!」
律儀に突っ込みながらも人が良い大城さん、城へ向かいます。途中一人の村人に話しかけてみました。
村人「ここはルーベの町です」
大城「・・・絶対一人はこの台詞言う村人がいるよな。あれ?でも俺ここの住人って設定じゃなかったのか?」
首を傾げながらも城へ向かいます、といっても徒歩20秒ぐらいの距離ですが。鬱陶しいので兵隊さんはスルーするタイプのようで、さっさと王様の前に行きます。
王様「魔王倒してこい」
大城「簡潔だな〜」
ピロリン《こんぼうと布の服と120ゴールドを貰った》
大城「え?俺って今全裸なのか!?つーか王様がそんなハイレベルな討伐要求してくるのに最弱装備しかくれないって、それもう死刑宣告だろ〜」
ぶつぶつ言いながらも横の大臣っぽい人に話しかけます。
大臣「一人では苦難な旅になるであろう、冒険者の酒場に行って仲間を集めるがよい!」
予想通りの事を言われたので返す言葉もありません。
とりあえす徒歩30秒ほどのところにある冒険者の酒場へ向かいました。
大城「そもそも『冒険者の酒場』ってなんなんだろうか・・・会員制の飲み屋?」
知りませんよ、そんなこと。パカッと扉を開けると予想通りの面子が揃っていました。
英蔵「あ、大城さ〜ん!」
大城「やっぱりかっ!!」
ドット絵のメンバーというのも妙な話ですが恒人や涙沙はドット絵でも可愛いなぁなどとある意味やばいことを思いつつ三人の所へ移動しました。
大城「みんなはどういう設定なの?」
涙沙「俺は僧侶やで〜!やっぱ存在が癒しやし」
大城「可愛いから許す!ツネちゃんは?」
恒人「俺は魔法使いです。序盤はまったく役に立ちませんのでそこのところご了承下さい」
大城「その通りだけどそこまできっぱり言われるとなぁ。でも可愛いから許す!」
英蔵「俺は盗賊です!」
大城「いや、聞いてないし」
ピロリン《涙沙が仲間になった!恒人が仲間になった!英蔵が仲間になった!》
というわけで4人になった勇者御一行様、大城が酒場を見渡します。
大城「そういえば浅葱君は?」
恒人「たぶんゲーム容量の関係でパーティは4人までしか組めないんだと思いますよ」
相変わらず真面目にシビアなことを言う末っ子に大城は苦笑しますが、如何せんドット絵なので上手くいきません。
英蔵「どっかで主要キャラとして出てくるんじゃないですかね?導きの賢者的な・・・」
涙沙「もしくはラスボスだったりして〜!」
涙沙が飛ばした笑えないギャグにビビリつつ、一行は酒場を後にしました。
とりあえずしばらくは町の周辺で経験値と小銭を稼ぐため、モンスターをボコる・・・前に町を探索して箪笥やツボを漁ってアイテム収集しました。
大城「ふつーにドロボーだよな、これ」
恒人「いいんですよ、いざとなったら盗賊の英蔵さんに罪を被ってもらえば」
英蔵「ツネェェェェェ!!!ひどいよ〜〜〜!!」
英蔵の珍妙な動きはドット絵では再現されませんでしたので、なんだかわけの分からない人になっています。
涙沙「真面目人間が開き直ると怖いわ・・・」
そんなことを言いながら涙沙は積極的にツボ手を突っ込んで小銭をかき集めています。
お約束を期待して、武器屋の前をランダムに歩いていた村人に声をかけました。
村人「武器や防具は装備しないと効果がないんだぜっ!」
一人だと呆れしか浮かばないお約束も4人でいると爆笑もののギャグだったので5回ほど繰り返して笑い転げてから、武器屋で装備を購入しました。
大城「俺、防具より武器に金をかけるタイプだけどみんなは?」
涙沙「俺もそうやね〜」
恒人「俺はどちらもバランスよく買うタイプですよ」
英蔵「俺は・・・」
大城「オマエの意見は聞いてない」
というわけで町の外、モンスターとの戦闘ですが、ターン制なので緊迫感があまりありません。
恒人「かねてより疑問だったんですが・・・なんで最初の町の周辺って弱いモンスターしかいないんでしょうか?」
防御力とHPが低いため、ひたすら《防御》コマンドを選択している恒人が言いました。
涙沙「そこ突っ込むのは野暮やろ〜」
誰かのHP表示が黄色に変わったら回復魔法を使うだけの涙沙が答えます。
恒人「もしかして、周囲にいるモンスターが弱い地域の人間が魔王を討伐しに行くルールがあるとか・・・」
大城「それ言いだしたら最初っからもっと強いヤツが魔王倒しに行けばいいだろ〜」
快活に笑う大城の隣で英蔵が叫んでいます。
英蔵「雑談後にしてくださいよっ!攻撃きたっ!」
大城「死にはしないからオロオロすんなよ」
スライムを全部叩き伏せるとファンファーレが鳴り響きました。
《大城はレベル2になった!英蔵はレベル2になった!涙沙はレベル2になった!恒人はレベル2になった!ファイアーを覚えた!》
恒人「なにもしてないのにレベルが上がるなんて申し訳ないと同時に釈然としません」
大城「いいって、もらえるものはもらっときなさいっ!」
大城が恒人の肩を叩いているともう一回ファンファーレが響きました。
《10ゴールドを手に入れた!》
バラバラと空中からお金が降ってきます。
英蔵「ちょ!痛いっ!どんな状況だよこれ!!」
涙沙「もらえるもんはもらっとけ〜」
《薬草を手に入れた!》
涙沙は降ってきた薬草をキャッチしてきゃらきゃらと笑いました。
さて大城勇者御一行様、さくさく進んでゲームも中盤を越えました。
装備品も豪華になりましたがドット絵なので見た目変わりません。
大城「しかしツネちゃんが武道家になりたかったなんて意外・・・」
途中武道家に転職し、今はレベルがみんなに追いついた恒人が笑います。
恒人「いやあ、俺は身体が貧相ですから逆に憧れるんですよねぇ。ちゃんと魔法は継承したし、それに武道家だったら装備費用が少なくてすみますから」
涙沙「・・・どこまでも真面目やなぁ」
と言う涙沙も賢者に転職していました。
英蔵「しかし浅葱さんに会えないね・・・」
英蔵が寂しそうに言います、彼は盗賊のままです。
涙沙「そやな、強制負けイベントの時に助けに来てくれる人かと思ったら違ったし・・・ってあああああ!!!」
涙沙が向こうを指さして叫びました。
お城のグラフィックが見えたのですがいつものものとは違って、赤い彩りがあります。きっと薔薇を現しているのでしょう。
大城「あそこにいるんじゃね?」
大城が半笑いで言うと恒人が真顔で見つめてきました。(ドット絵なので分かり難いですが)
恒人「YOSIKIさんという可能性もあるんじゃないですか?」
末っ子の恐ろしい発言に一同フリーズ。しかし確かにその可能性もあるので、近くの町で情報収集をすることにしました。
村の中で意味もなくちょこまかしていた女の人に話しかけてみました。
村人「あのお城にはヴァンパイアが住んでい・・・・」
涙沙「浅葱君やな」
大城「浅葱君だね」
恒人「浅葱さんですね」
英蔵「うんっ!」
というわけで一同は薔薇のお城へ向かいました。話は最後まで聞いてあげましょうよ。
お城の中では予想通り浅葱が待っていました。ドット絵なのでほぼ真っ黒ですが目の部分はちゃんと赤です。
ドット絵なのになんかいい感じのオーラを出しています。
浅葱「みんな遅いよ・・・」
浅葱が本気で寂しそうに言ったので4人は微笑ましく思いながら謝りました。
浅葱「っていうか俺、中ボスなんだよね・・・」
涙沙「え!?そうなん!?」
浅葱「うん。俺を倒すと魔王を倒すための伝説の剣が手に入ります」
浅葱は『シナリオ』と書かれた本を見ながら言います。
そしてしばらく逡巡したようでしたが、意を決して言いました。
浅葱「ようこそ我が魔の領域へ、なんの用ですか?虫けら殿・・・って言えって書いてあるんだよ!」
ちょっと恥ずかしかったらしいです、浅葱さん。
大城「っていうか俺ら浅葱君とは戦えないよ〜」
英蔵「そうですよ!無理です!」
浅葱「俺だって無理だよ。だからこの『力をためる』コマンドだけ使おうかと思ってたんだけど」
恒人「オレらが浅葱さんを攻撃できないんです!」
メンバーの言葉に浅葱は心から感動して、それからまた考え込みました。
浅葱「う〜ん、じゃあどうしよう・・・」
涙沙「だったらさ、浅葱君も一緒に来たらええやん。その伝説の剣とか持って」
という鶴の一声で、浅葱も一緒に行くことになりました。パーティに人数制限があるので表示されませんが、行動は一緒です。
ついでに浅葱は『シナリオ』を持っていたのでますますさくさく進みました。
全員ゲームは攻略本を見るタイプなのでズルとかは思いません。
魔王が「え!ちょ、反則!」とか言っていましたが倒しました。
こうして世界は平和になりました。
ムック編
同じオープニングを繰り返すのも面倒なので、飛ばします。
王様から「魔王倒してこい」と言われたミヤはまず、有り金全部叩いて薬草を大量購入しました。そして村の出口からさっさと出ていきました。
ちなみにもう台詞頭に名前を表示するのはやめにします、ミヤ君に「地の文としてのプライドはないのか」とキレられたからです。
地の文といえど最強リーダーには逆らえないのです。
それからしばらく、ゲーム内では数日が過ぎた頃、『冒険者の酒場』の前で三匹の犬が泣いていました。正確には犬っぽい男子が三人泣いていました。
ミヤがそれに気づいて声をかけました。
「よう」
「ようじゃねぇよ!!」
逹瑯がキレました。
「オレらずっと待ってたのになんで来てくれなかったの!!パーティ組もうよ!一緒に冒険しようよ!俺、魔法使いだべ!後々役にたつから!!!」
かまってちゃんは放置プレイに弱いのです。ミヤは首を傾げて言いました。
「・・・いや、パーティ組むのとかめんどいし」
痛恨の一撃でした。沈んだ逹瑯の代わりにサトチが捨て犬みたいな目で言います。
「俺なっ、あのなっ!戦士なんだ!!一緒に行っていい!?」
「まぁヤスがそう言うなら、いいけど」
サトチには甘いミヤが言うと逹瑯とユッケが駄々をこねだしたのでしかたなく連れて行くことにしました。
「ってゆーかミヤ君、なんでもうレベル15もいってんの!?」
ミヤのパラメータを見た僧侶ユッケが驚きの声を上げました。
「レベル上げたから」
ミヤが答えになっていない答えを返しました。
「あと最初の鍵は手に入れたから、もうそろそろ次の町へ行こうかと思ってたとこなんだけどな」
「「「マゾかっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」」」
三人が声を揃えて叫びました。
たぶんこのリーダー、一人で魔王ぐらい倒すだろうな〜とも思いましたが、やっぱり一緒に行きたいのでついていくことにしました。
装備品を揃えてもらって逹瑯は機嫌を直した、どころか有頂天です。一番良い防具を買ってもらったのが嬉しかったようです。
(単純にHP低くて防御力も低い魔法使いだからじゃ・・・)
とユッケは思いましたが、優しいので黙っておいてあげました。実際その通りなんですけどね。
勇者ミヤのほどんど特攻なくせに合理的な戦法のおかげで、一行はボロボロになりながらも着実にレベルを上げ、リミットギリギリまで上がったところで魔王の城へ特攻。なんなく魔王を倒しました。
こうして世界は平和になりました。
ディルアングレイ編
ある国の近くにある地下迷宮に邪悪な魔導師が住みつき、国に呪いをかけました。
その呪いを解くと賞金がもらえるので、世界各国から腕に覚えのある冒険者たちが集まってきました。
そして此処は酒場です。
みなさん職業を選んでください、パラメータによっては選べない職業があります。
あと全員、属性は『悪』にしときましたんで。
「なんでオレらだけウィザードリィなん!?年齢差別!?普通にドラクエ世代なんやけど!」
堕威がさっそく突っ込みました。
「うわ〜、移動コマンドが、酒場と商店と宿屋と寺院と迷宮しかないっ!」
敏弥も叫びました。まぁドット絵ではなく人物は普通に見えるのである意味こちらのほうがマシかもしれませんが。
「なぁ薫君、帰っていい?」
「あかん。終わらないと帰れんシステムやから」
怠そうに言う京に薫が首を振ります。
「・・・京君って種族はホビットかと思ったのにオレら全員人間の設定なんやな」
心夜がざっくりと言いました。おそらく京を一言で撃沈させられるのは彼ぐらいのものでしょう。
「お、俺べつに背が低いことなんかきにしてへんもんっ!」
子供化した強がりに迫力はなく、心夜はほんの少しだけ口角を上げてまた押し黙りました。
「あれ、っていうか京君だけパラメータおかしくない?なんでレベル1なのにそんなに軒並み高いの?」
敏弥が京のパラメータを見てそう声を上げます。
「ああ、なんかバグみたいで、ボーナスポイント100ぐらい貰えたから適当に割り振っといたんや」
なんてことはないという風に言う京に他のメンバーが唖然としました。
「もうそれゲーム中盤以降しかなれない上級職選択できるやん・・・」
「なんでバグでそんな幸運が降りかかるの!?」
「しかし『京君だから』と言われてしまうと納得せざるおえんわ・・・」
堕威は呆れて、敏弥は拗ねて、薫は嬉しそうでした。心夜は無言でした。
「あ、なら俺、忍者にするわ」
と京が笑顔で言います。
「さっくり上級職選べるのが憎いっ!じゃあ俺は・・・」
「敏弥は魔術師、と」
決める前に心夜が勝手に敏弥の決定ボタンを押しました。抗議の声を上げるがさらっと無視されてしまいます。
「で、俺はビショップな」
「・・・あれ?やもちゃんもなんかパラメータ高くない?」
当たり前のように上級職を選んだ心夜のパラメータを堕威が怪訝そうにのぞき込みました。
「ああ、俺もバグでボーナスポイント80ぐらいあったんや」
「ウチのバンドって・・・」
堕威が頭痛を抑えるように頭を抱えていると、その隙に京が職業を勝手に戦士にしてしまいました。
「ちょ、京君!まぁええけど・・・」
「甘やかすからあんなんになるんだよっ!」
敏弥が噛みついてくるのをいなしながら堕威は薫を見ました。
「薫君はどーする?」
「どうするもなにも、俺が僧侶選ばんかったら回復系足らんやん・・・」
「あ、そっか」
「オマエら自由すぎるわ・・・」
「薫君の教育の賜物やな!」
京に笑顔で言われると薫はすぐに相好を崩します、とことん京には甘いのです。
というわけで、忍者の京(クリティカルヒット、錬金術、罠解除技術あり)、ビショップの心夜(二系統呪文、アイテム鑑定技術あり)、戦士の堕威、魔術師の敏弥、僧侶の薫というパーティは装備を調え、さっそく迷宮に向かいました。
「じゃ、敏弥先頭で・・・」
「HP低いんだっての!一撃で死にますっ!」
堕威に背中を押された敏弥が慌てて後列へ逃げていきます。
レベル1という名のレベル20な上級職2名を含むパーティはさくさく迷宮を進み、あっさりラスボスを倒しました。
そして世界は平和になりました。
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