夏祭り
あの日あの時のように
ぼんぼりの灯りの下
はしゃぐ君の笑顔
新しい記憶に塗り替えて
出会いは遅くても
重ねる未来がある
散る火の花に
照らされた貴方の横顔
激流に呑まれて変わっていくけれど
変わらないものもあると信じてる
刻む思い出は深く強く
君の瞳に映った世界は色鮮やかに
夏祭り
「・・・・・・夏祭り?」
その単語はなんだと言わんばかりの表情で見上げてくるミヤにユッケは満面の笑み。
「そう、夏祭り!みんなで行く約束だったでしょ」
首を傾げるミヤにユッケは畳みかける。
「時間も空いてるしたまにはみんなでって、ぐっちゃが言ったんだよ。仕事ちゃんと一段落したでしょ、行こうよ」
「・・・ん、分かった。準備するから待っててくれ」
首を傾げながらも、ミヤはそう言った。
スタジオから駆けだして来たユッケを逹瑯とサトチが迎える。
「ミヤ君オッケーだって!!」
「うっそだべ!?」
声を上げるサトチにユッケはしーっ!と人差指を立てる。
「おめぇどんな手を使ったんだ・・・」
逹瑯は納得がいかないと顔をしかめている。
「内緒。幼馴染の俺の特権だもん。ヒント!ミヤ君は意外と予定や約束を忘れるってとこかな」
「もったいぶってんじゃねぇよ」
逹瑯がユッケをべしべし叩いているとミヤが出てきた。
「・・・4人で出かけるの、久しぶりだな」
「だね!」
「すげぇ楽しみ!焼そば食えるかな!?」
「ホントだ、久しぶりだ・・・」
「夏祭り!?」
一斉に首を傾げるメンバーに浅葱は照れくさそうに言った。
「うん、せっかく同時上がりだしさ。ちょうどやってるし、みんなで行かないかな、って」
「行く!」
と真っ先に声を上げたのは涙沙。
「ツネも行くやろ?英蔵君にチョコバナナおごってもらおっ!」
「え、おごっていただけるんですか、英蔵さん悪いっすねぇ」
白々しい顔で言う恒人に英蔵は慌てる。
「ええ!?なんで俺がおごること決まってんの!?」
「じゃあ英ちゃんは行かないんだ。涙ちゃんツネちゃんおいで〜良い子にはパパが好きなものおごってあげる」
「大城君おっとこまぇえ!!」
「大城さん大好きっす!!」
「ちょ、ちょっと待ってよ、俺も行くよ!おごるよ!チョコバナナぐらい!」
さらに慌てる英蔵に大城、恒人、涙沙がにまりとする。
「「「ごちになりまーす!!」」」
「えええええ!?」
「じゃあみんなで行こうか」
満面の笑みを浮かべた浅葱にメンバーは「はーい!」と手を上げたのだった。
「ここが正念場っていうことで、一発メンバーの絆を深めるイベントを行いたいんやけどねっ!」
腕組みして立つマオの前で他のメンバーはそれぞれ好き勝手なことをしていた。
「あ〜ケンゾ?今日は呑みたいんだぁ、ケンゾは暇ぁ?」
「なんだこのボス強いな、ゲームバランス悪くない?」
「ええ!?そこでそのアイテム使うかぁぁぁ!?」
ごん!ごん!ごん!
と三人の頭にマオの拳が炸裂した。
「・・・人の話を聞こうか」
机につっぷして悶絶している明希、しんぢ、ゆうやを睥睨してマオは言う。
「やはり『絆』!絆を深めることが大切!だからたまにはみんなで一緒に出かけよう!」
「ゆやー、昨日なんかマオ君が影響受けそうなテレビやってた?」
「知らないよあっきー!つーか静かにしないとまた殴られる」
「つくづくマイペースだよね、みんな」
「お、ま、え、ら!俺の言うことがきけないっての!?」
「「「はぁい・・・」」」
太鼓の音がどーんどーんと聞こえ、盆踊りを現代風にしたBGMが鳴り響く。
やぐらの下では地元の婦人団体らしき人達が浴衣を着て踊っていた。
広い公園には綱が張り巡らされ、赤いぼんぼりが淡く灯っている。
やわやわと揺らぐ光の中をムックのメンバーが歩いていた。
「つーかこんな人出の多いとこ歩いてて大丈夫かねぇ」
妙なところで常識人の逹瑯の言葉にユッケが得意げに言う。
「大丈夫だよ、さっきブログで夏祭り行くから見かけてもスルーしてねって書いておいたから」
「お前、それ逆に人集まらないか?」
「大丈夫!場所は書いてないし、夢烏はみんな良い子だもんねっ!」
「・・・そうだな」
ユッケの言葉にミヤが同意したのでそれ以上の文句は出なかった。
「ぐっちゃ!クレープの夜店あるべ!チョコバナナも林檎飴も!」
「本当だ、どれから食べよう・・・」
「『どれ』じゃなくて『どれから』ってことは全部食う気かよ!?」
「いいだろ、別に」
逹瑯の突っ込みにミヤは薄い唇を尖らせる。
「ふぅん・・・あ!射的があるよ!ミヤ君、俺と勝負しねぇ?」
「は?なんでお前と・・・」
「あっれぇ、ミヤ君俺に勝つ自信ないんですかぁ」
逹瑯の挑発にミヤの眼の色が変わった。
「やってやるよ」
ぞろぞろと射的の夜店に集まるムックの面々、火花を散らす二人にリズム隊はたじろいで静観姿勢だ。
「キャラメルとか落としてセコイ点稼ぐんじゃねぇぞ」
「はあ!?俺がそんなことするとでも?」
「じゃあ一点狙いにすんぞ」
そう言ってミヤは一番上の段の、リスのぬいぐるみを指差した。
「俺はアレを狙う・・・逹瑯お前はそっちだ」
そしてミヤが指したのはお座りしたキツネのぬいぐるみ。
「条件的には同じだね。先に落とした方が勝ちってことでいい?」
「ああ、行くぞ」
テキ屋のおっちゃんに料金を払い、射的用の銃を構える。
ミヤがあまりにも真剣な形相なので要人でも暗殺するように見えた。
「追加はなしの一発勝負、他に迷惑になるからな」
「おっけー!ぐっちゃ!負けねぇかんな!」
勝負は白熱したものの、どちらも落とせず引き分けとなった。
「そもそもアレ、5発じゃ落とせないからな、続けてやんねぇと」
「さとー・・・それ先に教えてあげなよ。つーか今からでも教えてあげたら?」
真面目な顔で頷いているサトチにユッケが呆れて言うと、サトチは目を見開いて首を振った。
「今言ったらシメられるべ!!」
「まあ、確かにね・・・」
Dのメンバーは夜店が立ち並ぶ中を歩いていた。周囲から漂ってくるのは食欲をそそるというより、懐かしい香り。
浴衣姿の少女達は一斉に羽化した蝶々のように淡い光の中で華やかな笑い声を上げている。
夜店の人達の汗にまみれた真剣な表情、はしゃぐ子供たちの笑顔、見る視点が変わったことは、そのまま自分の年齢が上がったことを示していた。
「あ、射的がありますよ。大城さんこういうの得意そうですよね!」
「もちろん!」
「英蔵さんはダメそうですねぇ」
「ええ!?なんだよ、俺も得意だって!」
「ホントですか、やってみせてくださいよ〜!」
じゃれるやんちゃ兄弟を浅葱が微笑ましげに見ていると涙沙が浅葱の服を引っ張った。
「浅葱君、見て!森の子リスと森の小狐がおるで!」
「ああ、本当だ・・・やってみようかな」
「ほんま?じゃあ子リスちゃん取って!」
「良いよ、頑張って取るね!」
力瘤を作ってみせる浅葱に涙沙はきゃらきゃらと笑った。
一方、恒人に煽られた英蔵は既に射的にチャレンジしていた、堅実にキャラメルやポッキーを狙い、それぞれ一個ずつゲットして得意げだ。
「なっ、できるだろ!」
「む!俺だってできますよ!すいません!一回お願いします!」
負けず嫌いの恒人はお金を払って射的用の銃を構える、が・・・
「こ、これ意外と重いっす・・・」
「普段もっと重いもん持ってるだろ、ベースとか機材とか」
「あれは気合いで持ってるんですよ〜」
ふらつきながら体勢を立て直すもどうやら射的自体初挑戦らしく、構えからしてなっていなかったため、一つも落とせなかった。
「・・・なんで〜!英蔵さんはできるのに〜!」
「つ、ツネ、俺が取ったのあげ・・・」
「ツネちゃん!俺が好きなの取ってあげるよ!」
英蔵の言葉をわざと遮って大城が言う。恒人もそれを分かった上で大城の前でぴょこんと跳ねた。
「ありがとうございます!大城さんっ!」
「森の小狐ちゃんにキツネのぬいぐるみ取ってあげるっ!」
「大城兄貴さっすがぁ!!」
既に始めていた浅葱に並んで大城も銃を構える。
持ち弾いっぱい使って浅葱はリスのぬいぐるみを、大城はキツネのぬいぐるみを無事ゲットした。
「兄ちゃん達運がいいねぇ!」
愛想の良いテキ屋のおっちゃんはそう言って笑った。
「さっきも兄ちゃん達みたいな男ばっかの集団が来て、そのぬいぐるみばっか狙ってたんだ、おっちゃんうっかりしてて元の位置に戻すの忘れてたから取れたんだよ」
「そうなんですか!?へへ、ツイてるなぁ」
リスのぬいぐるみを抱きしめた涙沙はご機嫌だった。
「それは、なんか逆にすいません」
浅葱は律義にあやまる。
「いいのいいの!こーいうのは運も実力のうち!」
テキ屋のおっちゃんに見送られて5人は意気揚々と次の夜店に移動した。
「パキしこっ!なんでオマエはビール呑んでんだよ!」
「え〜なんでぇ、夏はビールだよ〜」
会場につくなりビールを購入した明希をマオが叱るも明希はどこ吹く風、ご機嫌な様子でビールを飲んでいる。
「あ!射的がある!俺あれ得意だよ!!」
騒ぐゆうやにマオが目を細めた。
「へぇ、じゃあ俺、キャラメル欲しいから取ってこい」
「命令系!?別にいいけどさ・・・」
射的の夜店に向かうゆうやにしんぢが肩を竦める。
「キャラメルなんて普通に買った方が安くない?」
「しんぢってば野暮だねぇ、ああして取るからいいんじゃない」
ごくごくビールを飲みながら明希は可笑しそうに言った。
キャラメルを三個ゲットしたゆうやにテキ屋のおっちゃんは苦笑いで言う。
「なんか今日は立て続けに男集団が来るなぁ、さっきも目玉商品二個も取られちまったんだよ」
「そうなんっすか!?」
人懐っこいゆうやはすぐに興味深そうに話に乗る。
「そうそう、なんか君らと同じ派手っていうかお洒落な集団で変な取り合わせだったよ。まあ客は客だからかまやしないんだけどね、ほいオマケ!」
もう一個キャラメルの箱を差し出されてゆうやは首を傾げる。
「四人いるんだから四個いるだろ、兄ちゃん!」
「わあ!ありがとうございますっ!!」
大きく頭を下げて喜ぶゆうやにおっちゃんも笑顔。
「ゆうやって、ああいう人にウケ良いよね・・・」
「体育会系ってポイント高いよ、でなきゃ明希みたいにATフィールドないか」
「マオ君になんか悪口言われたぁ〜!」
一方ムック集団。
輪投げで取った景品を持って全員ほくほくだった。
「つーか菓子は食えるけど、このわけわかんねぇ人形とかどーすんだ」
逹瑯はケラケラ笑っている。
「え〜わりと可愛くない?俺これブログにアップするよ」
「俺は食えるもんばっか狙って取った!ぐっちゃは!?」
「この骸骨船長、俺の琴線に触れたんだ・・・」
「ミヤ君どう?このパチモンっぽいミッキー!」
「お前に似合ってるよ」
久しぶりに青春時代に戻ったかのように四人ははしゃいでいた。
地元仲間なのだ、昔はよくこんな風に遊んでいた。
いつからかそんな機会もなくなって、大人になったのかななどと思っていたけれど、こうしてみれば簡単に時計の針は逆回り、あの時代へと回帰していく。
「・・・あのころはお前、坊主頭だったよなぁ」
懐かしむように逹瑯を見るミヤに逹瑯も目を細める。
「昔はミヤ君、ちっちゃくて華奢でけっこう可愛かったのにね」
「おめぇがでかすぎるんだべ!」
「てか、みんなちょっと太ったよね、さとーはともかくさぁ」
「だからみんなも筋トレすんべ!」
ミヤがくすりと笑った。
「そーいや俺らもう30代なんだよな、あの頃は10代だった・・・」
ユッケも笑って言う。
「よく付き合ってるって自分を褒めたいよ!たつぅとか第一印象最悪だったし、いきなりプロレス技かけてきて!」
「ああん!?再現してやろうか、このキノコ!!」
「そういえばユッケとはもう20年以上のつき合いなんだよな」
ミヤが今度はユッケを見て微笑んだ。
「あ、すごいよね。人生の半分以上なんだもん。でもミヤ君・・・優しくなったなぁ・・・いや、昔から優しかったけど」
「こいつは高校時代からなーーーーんも変わってねぇ!」
サトチが逹瑯を指差してげらげらと笑うと逹瑯は不満そうに顔をしかめた。
「ちょっとリーダー!ウチの太鼓がこんなこと言うんですけど!」
「・・・そこがいいんじゃねぇの」
さらりと放たれた爆弾に逹瑯は足を止める。
「逹瑯、はぐれるぞ。お前はすぐどっか行くから」
「・・・いえっさー!リーダー」
逹瑯は照れた様子で足早にミヤの隣に並んだ。
D集団は輪投げの夜店に集まっていた。
「てぇーーーーい!」
「いやいやツネちゃん!輪投げだから!そんな野球の投球みたいに投げたって入らないって」
ころころと見当違いの方向に転がっていくわっかに恒人は情けない顔をする。
「ツネって案外・・・この手の全般苦手なんか?」
涙沙は後ろできゃらきゃらと笑っている。
「なんでも器用にこなすくせに、変なとこ不器用なんだよね」
英蔵はまるで保護者のようなことを言っている。
「ツネ、やりかた教えてあげるから」
さらに保護者のようなことを言って浅葱が恒人の後ろに立って手首を掴む。
「こう横からふんわり投げてごらん、ちゃんと狙いを定めてね」
「は、はい!」
若干照れつつ、恒人は言われた通り投げる、やはり呑み込みは良い。
手前のもの上手く輪投げを入れることができた。
「やった!浅葱さん、ありがとうございます!」
「取れてよかったね」
恒人はプラスチック製の安っぽい恐竜の玩具片手に嬉しそうだ。
「ツネ、それ欲しかったの?」
英蔵に言われて恒人はご機嫌な様子で笑う。
「好きなんです、パラサウロロフス!」
「意外やなぁ。言うたらなんやけど、ツネっぽくない感じ」
首を傾げる涙沙に「ああ」と恒人は目を伏せた。
「っていうか、昔これと似たようなの持っていて、なんか懐かしくなっちゃって・・・」
そう言って恒人はパラサウロロフスの玩具を掲げる。
口の部分がパカパカと開閉した。
「そっか、よかったなツネ!」
みんなにそう言われ、恒人はまた照れたように目を伏せた。
次の夜店へ歩き出しながら先に歩いて行く浅葱と涙沙を見て、英蔵は恒人に視線をやった。
英蔵が聞きたいことを感じ取ったのか恒人はパラサウロロフスの玩具を大切そうに鞄にしまいながら言った。
「兄貴のお下がりの玩具だったんですよ、お下がり多くて嫌だったけど、なんかそれはすごく気にいってて。でも旅行先に忘れてきちゃったんですよね。まあ年代的に別物なんでしょうけど、また手元に戻って来た気がして・・・」
「物とも一期一会ってとこかな」
話を聞いていたらしい大城が悪戯っぽい顔で言う。
「でも、また会えてよかったな」
「う、うん、そうだよ、よかったじゃん!」
「ありがとうございます!」
そしてシド御一行様。
「ねぇねぇ!」
襟の部分を後ろから明希に思いっきり引っ張られゆうやは「ぐぇ!」と妙な声を上げた。
「なにすんだよっ!」
「あの輪投げ、特賞がビール券だって!ゆうや、取ってよ!」
「・・・え、いや、なんで!?」
「ゆうや得意でしょ、輪投げの代金は払うから、ね〜〜!」
へにゃあとした笑顔で言われてゆうやは頭を掻く。
「分かったよ!やればいいのね、やれば!」
明希から小銭を受け取り輪投げの夜店へ向かうゆうやにマオが目を細める。
「もー、明希ってばマイペースなんだから」
「あえてノーコメントにさせてもらう」
しんぢは嘘くさい笑顔で言った。
二回チャレンジしてビール券をゲットしたゆうやは大喜びの明希にぺちぺち叩かれていた。
「お兄ちゃん若いのにビール券嬉しいのかい?」
テキ屋のおっちゃんに言われ、明希は可愛らしい笑顔で言う。
「はいっ!お酒大好きなんです!」
「やっぱり日本の夏はビールだよねぇ!」
「ですよね、ですよね、いっぱい飲みます〜!」
「・・・恐るべし明希様の年上転がし」
後ろで見ていたしんぢがそう呟いた。
すっかり気に入られたらしい明希はしばらく喋ってから戻ってきて、うにゅっとした顔で言った。
「なんかね、また俺らの前にも男ばっかの派手な集団が来てたらしいよ、やっぱり二組」
「うん?そりゃ不思議だね。でも只の偶然やろ」
肩を竦めるマオに明希は首を傾げる。
「でもなんだけど、最初に来た集団は、四人組で格好は普通だったんだけど、一人は変な髪形の金髪で、一人は背が高くて長い黒髪だったって言うんだよ」
「・・・それって、まさか!?」
驚くゆうやにマオはまた肩を竦める。
「アホらし。そんな偶然あるわけないだろ〜」
「そうだよ、天文学的確率だよ」
しんぢも胡散臭いスマイルで首を振った。
「ん〜。そだよね、偶然だよね」
明希も納得したのか頷いた。
「すいません、チョコバナナ3本下さい。そのピンクのと普通のと白いの」
当たり前のようにそう注文するミヤに他三名は顔を見合わせた。
「ぐっちゃ、三本も食べるのかな?」
「そうじゃね?四本なら俺らの分もって可能性もあるけど、全カラー食べ比べる気だべ」
「ぐっちゃは甘いもの好きだからなぁ!」
「しかも、この後もまだ食べる気だよね・・・」
「たぶんな」
こそこそやっていると買い終えたミヤが戻って来た。
さっそくそのうちの一本、ピンク色のを頬張っている。
「やっぱイチゴ味うめぇ!」
貴重なへにゃ笑顔大放出でぱくぱくとチョコバナナを食べるミヤに三人はまた顔を見合わせて・・・今度は笑った。
「っていうかミヤ君、なんか天辺に苺乗ってるのあるじゃん、あれは買わなかったの?」
逹瑯に言われ、ミヤはチョコのついた口を不満そうに尖らせた。
「あれはゲームに勝たないと売ってもらえないらしくてさ、無理だった」
「苺好きなのに残念だったねぇ」
ユッケに苦笑され、ミヤは拗ねた顔。
「うん、すげぇ悔しい」
「ぐっちゃ!俺は焼そば食いてぇ!買ってもいい!?」
一個先の夜店を指差して跳ねるサトチにミヤはチョコバナナを食べながら頷く。
「やった!買ってくる!」
「あ、さとー!俺の分も!」
「嫌だ!自分で買え!」
「けちーー!!」
駆けだして行くリズム隊を見送ってミヤは逹瑯を見上げた。
「・・・お前はいいのか?」
「ん、もうちょい見てから決めようかなっと思ってさぁ。あんま食欲ないし」
「・・・そうか」
「なにが良いと思う?」
「チョコバナナうめぇぞ」
「甘いの以外で。ダイエット中なの、俺」
「夜店の料理なんて軒並みカロリー高いと思うけどな」
「だからさ、厳選して食べたいんだよ・・・ってミヤ君!もう三個目食べてるの!?」
「俺はこれからかき氷とわたがしと林檎飴とクレープ食うんだよ」
「ミヤ君・・・ある意味マゾかっこいいっ!」
「なぁなぁ見て!このチョコバナナ天辺に苺が乗ってるで!」
はしゃいだ涙沙に腕を引かれた恒人もそれを見て目を輝かせる。
「ホントだ!チョコバナナの進化すごいっす!超欲しいっす!」
「ツネちゃん、子供化してるねぇ」
大城の言葉に英蔵が頷く。
「してますね、可愛いな・・・あ!別に他意はないっすよ!?」
「分かってるよ。ツネって時々見せるあどけなさがとっても可愛いよね」
ボーダーギリギリの台詞も浅葱があっさり肯定して、なにやら崇高なものに変えてしまう。
「あ〜でもこれ、このピンボールで苺のとこに入れないとダメみたいやな」
「ええ!?なんっすか、これ!やったことないっすよ!」
きゃいきゃい騒いでいる姉妹組に英蔵が近寄っていく。
「なら俺が代わ・・・」
「俺がとってやるよ!」
またも英蔵の言葉を遮って大城が言う。
「ホントですか大城兄貴!ありがとうございます!」
「いいのいいの、可愛い弟のためだしね」
「あの、大城さん・・・さっきからなんで俺の言葉に被せて言うんですか・・・」
「面白いからにきまってんじゃん」
しれっと言われて英蔵は肩を落とした。
「はは、俺はこーいうの得意やから自分でゲットしたるでぇ!」
さっそく料金を支払う涙沙を見て、恒人は薄い唇を撫でた。
「う〜ん、やっぱり欲しいのは俺なんで自分でやってみます。大城さん、コツだけ教えてもらえますか?」
「ツネちゃんは良い子だねぇ。よし!お兄ちゃんがとっておきのコツを教えてあげるよ!」
そんな風にはしゃぐメンバーを浅葱が微笑ましそうに見ていた。
無事、苺つきチョコバナナをゲットした涙沙と恒人はご満悦で、二人で嬉しそうに食べながら並んで歩いている。
「・・・来てよかったね」
しみじみと呟く浅葱に大城と英蔵は頷いた。
「最近のチョコバナナって派手だなぁ」
歩きながら横目にマオがそう呟くとしんぢが足を止めた。
「どしたの、しんぢ。チョコバナナ食べてぇの?」
と首を傾げるゆうやの腕を引いてしんぢはチョコバナナの夜店に近付き、店の兄ちゃんに声をかける。
「すいません、つかぬことをお伺いしますが・・・」
「うん?どうした?」
20代ぐらいの彼は、若さに見合ったぶっきらぼうな調子でそう言った。
「あのですね、背が低くて目つきの悪い男と、背が高くて髪が長い男と、金髪で変な髪形の男と、あと・・・」
としんぢはゆうやを指差す。
「コレと似た感じの男の四人組が来て、目つきの悪い背の低い人がチョコバナナを買って行きませんでしたか?」
妙な質問ではあったので店の兄ちゃんは一瞬きょとんとして首を傾げ、それから頷いた。
「ああ、来た来た!一人で三つも買っていったからよく覚えているよ」
「そうですか、ありがとうございます」
「質問料!一本買っていけや!」
ここでは愛想の良い笑顔を見せる兄ちゃんに、しんぢは頷いてチョコバナナを一本購入した。
「・・・やっぱムックのみなさんってこと?」
うにゅ顔で言う明希をマオが冷めた目で見る。
「そんな珍妙な集団がそう何組もいるわけなかろうて」
「だとしたらすげぇ偶然だな!」
そんなことを言い合いながら四人は顔を見合わせる。
「どうする?」と。
『まもなく花火が始まります』というアナウンスが会場に響き渡った。
夜店にとどまる人、足早に見える位置に移動する人、すでに良い場所でシートを広げている人、少し慌ただしくなった人の群れの上に再びアナウンスが響く。
『まもなく花火が始まります、立ち入り禁止区域には入らないようお願いします、混雑する場所での転倒事故等には充分注意してください、また小さなお子様からは目を離さないようお願いします』
池にかけられた小さな橋の上にムックのメンバーは集まっていた。風下で立ち入り禁止区域ギリギリというデンジャラスゾーンであるため、若い男ばかりが集まっている場所だ。
きっちり宣言通りのものを食べきったミヤは時間のかかる林檎飴だけを持っている。
逹瑯は散々迷ってじゃがバターを購入していた。
リズム隊は串カツやらお好み焼きやら牛串焼きやらがっつりしたメニューをシェアしながら食べている。
「みんなに飲み物も買っておいたからねっ!はいラムネっ!」
ユッケが差し出したラムネをミヤは頷いて受け取る。
「昔からお前は気がきくよな・・・」
「はっ!昔からパシリだったってことか!?」
鼻で笑う逹瑯を睨んでユッケは差し出したラムネを引っ込める。
「今も昔もパシリじゃないよ!もうたつぅにはあげないから!」
「あ〜今、両手塞がってるから持ってて」
「・・・分かったよ、しょうがないなぁ」
「ユケツは優しい!」
「さとー!ありがとう!・・・ん?」
ユッケがある方向を見つめて固まる。
「ほら、こんなとこにはいませんって・・・」
「おっかしいなぁ」
「はぐれたとこでじっとしてた方が良いって言ったじゃないですか」
「あ〜そうだったかも、ゴメン」
見覚えのある二人組がそんなことを言っている。
「あ、あの!恒人君じゃない!?あと英蔵さん!?」
ユッケが声をかけるとその人物は振り返った。
「ユッケさん!それにムックの皆さんじゃないですか。こんばんは。お揃いでどうされたんですか?」
「ちょっとみんなでお出かけ。そっちはどうしたの?」
「いやあ、それがウチもメンバーみんなで来たんですけど、俺らだけはぐれちゃって・・・」
「携帯は?」
呟くように言ったミヤに恒人は困った顔で言う。
「それがこの人出ですから・・・繋がらなくて・・・」
「・・・そうなんです」
その後ろで英蔵はしゅんとしていた。
「大丈夫だよ、タイミングが合えば繋がるって」
ユッケが励ますように言うが恒人は首を振る。
「いえ、一刻も早く合流しないと・・・ウチの場合は容易く最終手段を使われてしまう可能性が高いので・・・」
恒人の言う意味が分からず、ムックのメンバーがきょとんとしているとアナウンスが鳴り響いた。
『迷子のお知らせをいたします。東京都からおこしの恒人君、ご家族の方がお待ちです、至急迷子センターまでおこしください』
「・・・さ、最終手段だ!」
ユッケが思わずそう声を上げると恒人はがっくりと項垂れた。
「こ、この歳になって迷子アナウンスされるなんて、しかもご家族って、どんな説明したんだろう・・・つーか俺、子供だと思われてる!?」
「俺は名前呼んでもらえなかったけど、この場合マシなのかな・・・」
「ま、まあ、これで合流できるんだからいいんじゃね!?ドンマイ!」
逹瑯の引きつった笑顔に見送られて、D下手組はその場を去って行った。
そして迷子センター、慌ててやってきた英蔵と恒人を浅葱はほっとた顔で出迎えた。
「もう、何処行ってたの・・・」
「すいません」
と同時にあやまる二人に浅葱は微笑みを浮かべる。
「この人出だし、なんかあったらどうしようって心配しちゃって・・・ごめんね、呼びだしまでかけちゃって」
「いやあ、さすがにちょっと恥ずかしかったですけど、無事合流できたからかまいませんよ。心配かけてごめんなさい」
ちょいっと頭を下げる恒人の肩を浅葱が柔らかく叩いた。
「うん、無事でよかった。でもさすがに英蔵君まで呼ぶのはまずいかなって思ってツネだけにしたんだけど・・・」
「・・・本名のほうを呼べばよかったのでは?」
恒人の指摘に浅葱は顔を赤くした。
「あ、そっか!そうだよね、そこまで思いつかなかった・・・」
「いや、かまいませんよ。どうせ一緒にいたわけですし」
英蔵が慌ててフォローする。
迷子センターの人に礼を言って(さすがに怪訝そうだったが)三人は歩き出した。
「良い所見つけてね、るいちゃんと大城君が場所取りしてくれてるよ」
そう言って浅葱は恒人と英蔵の手をそれぞれ掴む。
「あ、浅葱さん!?」
「ふふ、もうはぐれないように・・・」
「なんか照れますねぇ」
「英蔵さんなにデレデレしてんっすか?顔変ですよ」
「顔変って!?おまえそれはないだろ〜」
「じゃあ行こうか」
「「はーい!」」
シドのメンバーは人が集まる広場から少し離れた木の陰に座り込んでいた。
「今の迷子アナウンス・・・『恒人』ってどっかで聞いたことある名前だなぁ」
明希がぽけーっとした顔で言うとマオが白けた視線を送る。
「別に珍しい名前でもなかろうて。言うならアレ、Dのベースの子」
「あ、そっか、それそれ。どっかで聞いたことあると思ったんだ」
「まさか、その御本人なわけねぇだろ〜!迷子アナウンスされる歳でもないわけだし」
ケラケラ笑うゆうやの隣でしんぢは首を傾げている。
「まあ、ご家族って言ってたし、珍しい名前じゃないし、偶然でしょ」
まさかそんなミラクルが実際に起こっているとは思わず、シドのメンバーは笑い合う。
「あっきー!ビールどんだけ飲むんだよ〜」
「明希、焼き鳥買ってきたから食べな、つまみないと酔うよ?」
「しんぢ、ありがとーー!!」
「甘やかすなよ、潰れたらほかって帰るからな」
「マオ君がドSだぁ!」
「・・・もう酔ってるよこの人っ!」
ひゅるひゅると火の玉が昇って、夜空に大輪の花を咲かせた。
会場から歓声が上がる。
幾つもの花火が立て続けに夜空を彩っていく。
響き渡る低音に揺れるような錯覚。
鮮やかな火の花は、見上げる人々の顔を照らしてキラキラと散っていった。
橋から身を乗り出すようにして、ミヤは花火を見ている。
声には出していないが表情が「すげぇ!」と叫んでいた。
少なくない煙と熱を感じることができるこの場所は、危険好きなミヤにとっては最高のようだ。
逹瑯は念のためマスクをして見ている。
「ミヤ君、すげぇはしゃいでるな」
マスク越しのくぐもった声にユッケが苦笑する。
「とてもそうは見えないけど、はしゃいでるよねぇ」
サトチは何故だか分からないが奇声を上げてくるくる回っていた。
「で、あっちの馬鹿はなにやってんの?」
「さぁ、犬だから花火怖いんじゃないの」
これにもユッケは苦笑いで答えた。
「つーか此処、マジで危なくねぇか?」
「たつぅってばチキンだよね、大丈夫だよ、立ち入り禁止区域に入ってるわけじゃないんだから」
「誰がチキンだよこの腐れキノコ!」
「あーもう!うっさい!黙って見ろよ!」
Dのメンバーは噴水の脇に腰掛けていた。先に座らせた英蔵の上に恒人が座るというお決まりのギャグを終えて、皆空を見上げている。
「大城君、なんで足踏みしてんの?」
涙沙に言われて大城は照れたように笑う。
「いや、なんかバスドラ叩きたくなっちゃって、つい・・・」
「ははは!花火の音に対抗するんや!あ、今の花火ハートマークやったな!」
「すごいよねぇ、にゃんこの形の花火とかないのかなぁ」
「こんどは星型だ!逆さまだけど!」
「おお!ドラえもん型だ!浅葱さん、にゃんこもあるかもしれませんよ!」
「にゃんこ上がるといいですね!」
楽しくじゃれ合いながら花火を見る5人は「にゃんこにゃんこ」と謎の掛け声を上げながら花が散る夜空を眺めていた。
鞄を枕に地面に寝転んでぼんやり花火を見ているマオの隣で明希が相変わらずビールを飲んでいた。
「た〜〜まや〜〜!」
「がぎゃぁぁぁぁ!!!!!」
「うるさいよ、お前ら」
しんぢは呆れたように肩を竦める。
「花火って花火だねぇ」
「ちょっとマオ君!あっきーの言ってること通訳してよ!」
ゆうやが騒ぐがマオは寝転んだまま。
「宇宙語の通訳なんてできんし」
地下活動が続く中、スタジオと家の行き帰りにしか感じることのできなかった夏を胸一杯に吸い込む。
そして誰もが恥ずかしくて口にはしなかったが、思う。
来年、どうしているかは分からないけれど、またこんな風にみんなで花火を見れたらいいと思う。
できれば、幸せな気持ちで一緒に見られたらとそう思う。
今までがそうであったように、辛いことも悲しいことも心が折れそうになることもあるだろう。嬉しいことも楽しいこともあるだろう。
そんな思いを積み重ねて、またこんな風に花火に照らされる大切な仲間の顔を見られたらいいと、そう願う。
『本日の花火大会は終了しました、皆さま気をつけてお帰り下さい。また終了後の会場周辺は大変混雑いたします、近隣住民の迷惑になる行為や会場に長く留まることはやめて下さい。交通機関やお車の混雑も予想されますので・・・』
橋から身を乗り出していたミヤは大きく伸びをした。ナイアガラの滝を間近で見られてご満悦だ。
さあ帰るかと顔を見合わせていると、逹瑯が「ん?」という顔をして携帯電話を取り出した。着信しているらしくバイブで震えている。
「明希からじゃん」と呟いて逹瑯は電話に出た。
「もしもし?悪い、今俺出先で・・・」
『ミラクル!繋がった!逹瑯さん今××の花火会場にいますよね!?』
「え、そうだけど、なんで知ってんの!?」
『えへへ、やっぱり!俺もメンバーと来てるんですけど、合流しません?飲みに行きましょうよ!』
「ええ!?かまわねぇけど。俺らは今、北側の橋のとこにいるべ」
『じゃあそっち行きますね!』
そう言って通話は切れた。
「なんかシドのメンバーも此処に来てるらしい・・・」
「ホントに!?すごい偶然だね」
感心するユッケの隣で見上げていて痛くなったのかミヤが首を回しながら言った。
「どっかでニアミスしたのかもな」
「んで、これからみんなで飲みに行こうって、お前らどーする?」
「俺行く!俺行く!俺行く!」
跳ねまわるサトチを見ながらミヤは淡々と言う。
「悪いけど、俺は帰る。今ので曲が浮かんだ・・・」
「ミヤ君ってば・・・俺は行くよ」
嬉しそうに笑うユッケにミヤは「じゃあ」と頷いて背を向ける。
「・・・ああ、そうだユッケ」
少し行ったところでミヤは振り返ってへにゃりと笑った。
「わざわざ変な嘘ついて誘わなくても、普通に誘ってくれていいから」
それだけ言うとミヤは手を振って人ごみに消えていった。
「なぁにが幼馴染の特権だよ、バレバレじゃねぇか!」
逹瑯がべしっとユッケの頭を叩く。
「分かってて騙されてくれるんだから、やっぱぐっちゃって優しいよな」
サトチは真剣な顔でミヤが消えていった方向を見ていた。
「楽しかったね」
と笑う浅葱に他のメンバーも頷く。
「でもいっぱい蚊に刺されちゃいました」
腕をボリボリ掻いている英蔵に恒人は首を傾げる。
「え?俺は全く刺されてませんけど・・・」
「ええええ!?なんで!?隣にいたのに!!」
不満げな英蔵に大城が笑って言う。
「俺も少し刺されたけど、蚊もツネちゃん見て吸い難そうと思ったんじゃない?」
「確かにな!ツネって刺されそうな要素ないもん、俺もちょい食われてるなぁ・・・浅葱君は?」
涙沙にのぞき込まれ浅葱は優雅に笑う。
「ヴァンパイアは蚊に刺されたりしないよ」
「・・・シャレにならへんって」
「冗談抜きだと体温が高い人とか汗をよくかく人は刺されやすいらしいけどね」
「ああ、俺は体温低いっすからねぇ。隣にいた英蔵さんに集まっちゃったのかも。英蔵さんすいません俺の代わりに蚊の餌になってくれて」
「ええ!?い、いや、そんな・・・」
「冗談ですよ、何を挙動不審になってるんですか」
下手組の漫才に一同は声を上げて笑った。
「なんかこのまま帰るのもったいねぇな。どっかでさ、花火買ってみんなでやらない?」
大城の提案に他の四人もすぐに乗った。
「ええな!河原かどっかでやろうや!」
「そうだね、なんだか帰るのもったいないもの」
「ですよね、打ち上げ花火を英蔵さんに発射しないと」
「ちょ、ちょっとツネ!でも俺もやりたいっす!」
「おや、自ら進んで花火の的になってくれるんだ」
「大城さーん!そーいう意味で言ったんじゃないっすよ」
きゃあきゃあ騒ぎながら、もう少し夏を楽しむためにDのメンバーは会場を後にした。
「たぁつろうさぁん」
と寄ってくる明希に逹瑯は頭を抱えた。
「既に酔っ払ってるぞ、あいつ・・・」
「まあ、お酒いっぱい売ってたからねぇ」
ユッケは半笑いだった。
「すみません突然」
頭をさげるゆうやに逹瑯は手を振る。
「いいよ、このまま帰るの勿体なかったし。ところでなんで俺らがいること知ってたんだ?どっかで会った?」
これにはしんぢが答える。
「いえ、射的と輪投げの夜店の人に男ばっかの集団が来たって言われて、最後にチョコバナナの夜店で特徴を聞いてみたら、ああムックのみなさんだって分かったんです」
「ええ!なにそれ!?時間差で同じ夜店に行ってたってこと?」
「そうなりますね」と頷くしんぢの隣でマオが呟くように言った。
「で、俺ら以外にももう一組、派手な男ばっかの集団がいたらしいんですけど」
「それも、チョコバナナの店で特徴聞いてみたら、金髪の子と赤毛の子と髪の長い人の5人組だったらしいです、『兄貴』とか言ってたから兄弟かと思ったとか・・・」
しんぢの言葉にユッケと逹瑯は顔を見合わせて笑う。
「ああ、それね・・・Dの皆さんだよ。俺ら偶然会ったんだ」
「うん、恒人君と英蔵さんに会った。メンバーみんなで来てたんだって」
ゆうやが様子を伺いながら言う。
「あの、まさか・・・ですけど、迷子放送で呼び出されてたの・・・って?」
「そう、あの二人!ちょうど呼びだされた時一緒にいたんだ!」
その時のことを思い出したのか逹瑯は腹を抱えて笑う。
「ふえ〜、俺らとムックさんとDさん、三つのバンドが偶然、しかもメンバー全員で来てたわけですか、すごい偶然もあるものですねぇ」
明希がふらふらしながら感心したように頷いた。
「ホント、妙なこともあるもんだよな。じゃあみんなで花火大会の打ち上げに行くかっ!」
逹瑯の号令に歓声を上げて、ムックとシドのメンバーも会場を後にした。
夜空には花火が残した煙が漂っていた、それも会場の人々が去っていくのに合わせるように徐々に風に流され、何事もなかったように元に戻る。
それでもまだ夏を楽しむこの夜は続くようだった。
夏祭りに起こった、不思議な偶然のお話。
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