プロンプトくんとチョコボ
ふらりと立ち寄ったチョコボポスト。
昼ご飯を食べてアイテムの補充してチョコボ見たり、観光気分で楽しもーってことで来たんだけど。
「チョコボいないじゃん!」
「ありゃ…一匹もいない」
あんなにデカデカと看板を出しておきながら、肝心なチョコボの姿は一匹もいなかった。
「楽しみにしてたのにー」と文句を零しながら食事の注文をしていると、おじさんがハッと気付いたように声をかけてきて。
「君たち、ハンターかい?ちょっと頼みがあるんだけどーー…」
こうしてオレ達はスモークアイと呼ばれるベヒーモスの討伐に向かったんだ。
ーーーーーーーーーー
ドカーーーン!
「グアアアァァッ」
派手な音をたてて大爆発を起こすドラム缶でトドメをさされたスモークアイは、雄叫びをあげてゆっくりと地面に倒れてぴくりとも動かなくなった。
「つっかれた…デカすぎだろコイツ」
緊張の糸が切れて、ノクトも地面にドサッと座り込んで伸びている。そこらじゅう、ドラム缶の爆発で延焼してるから熱いと思うんだけど…
「プロンプト、よくやってくれた。助かった」
「イグニスもお疲れ様ー。指示してくれたから戦いやすかったよ」
「めーっちゃカッコ良かったよプロンプトくん!惚れ直しちゃった!」
「褒めすぎだよなまえさんはー」
イグニスに褒められると嬉しいし、イグニスの戦略のおかげって返せるけど、なまえさんに褒められるとなんかちょっと違う嬉しさがあって照れちゃうんだよな…
イグニスがドラム缶を利用しようって言った時に誰もファイアを装備してなくて必然的にオレの銃でドラム缶を撃つって事になったんだけど、まあドラム缶の一撃はかなり大ダメージな訳でスモークアイもかなり痛そうだった。
もちろん最後の一撃もオレの銃!
いやー、自分でも分かる。今日のオレはカッコ良かった!
「プロンプトくんが弾こめる動作も好き!」
「えへへ、そうかなぁ?」
もぉーなまえさんてば褒めるの上手なんだからー。きっと今オレの顔はゆるみっぱなしなんだろうなぁ。
何なら期待に応えて今リロードしておこうかなとか思ってたんだけど…
「体ベタベタで気持ち悪ぃ…早くチョコボポストに帰ろうぜ」
立ち上がったノクトの一声にみんなが賛成して、オレの華麗なリロードを披露する事もなくスモークアイの住処を後にしたのだった…残念。
そしてチョコボポストに着くと、さっき来た時にはなかった黄色くてふさふさの大きい塊がたくさん……
「チョコボだー!」
「かわいいー!!」
「うおっ、めっちゃいるじゃねえか」
冷静に驚いているグラディオ達を置いて、オレとなまえさんで近場にいたチョコボに駆け寄る。
すっからかんだった柵の中にはチョコボが何匹もいて、そこらじゅうに小さいヒナチョコボが歩いていた。そして満面の笑みを浮かべて待っていたウィズさんがこちらに歩いてくる。
「ありがとう、チョコボ達も安心して羽根を伸ばしているよ。本当に助かった」
「まぁあれくらいなんて事ねーし」
「へばってたくせによく言うぜ」
「グラディオは余計な事言うな!」
見栄張ってるノクトは放っておいて、柵の中からこちらを見ていたチョコボに気付いて歩み寄る。くりっくりの大きい瞳が真っ直ぐにオレを見つめて首を傾げた。
「触ってもいい…?」
もちろん返事はないけど差し出した手から逃げようとはしなくて、そっと背中を撫でてみる。
うわぁぁ……超ふわふわ!羽根柔らかい!
嫌がらずに撫でさせてくれて、気持ちよさそうに目細めてるし…
「超かわいい…!」
「可愛いだろう。この子達は特に人慣れしているからね」
「へぇ〜、ウィズさんが愛情込めて育ててるからだよね、きっと」
「そうだ、助けてくれたお礼にチョコボにいつでも乗れるようにしておいたよ」
「まじか?!」
「ありがとうおじさん〜!」
「あぁ、気に入った子を連れて行ってくれ」
ウィズさんって神…?優しすぎじゃない?五匹もオレ達に預けていいって事でしょ?
「ノクト、ウィズさんからも啓示してもらわなきゃ」
「はあ?何言ってんのおまえ…」
ノクトから注がれる冷ややかな目にあははと笑って「ジョーダン」と返してから、撫でていたチョコボに向き直る。
「オレ、この子にする!」
「プロンプトくん早っ」
「オレの第六感がこの子って言ってる!」
「なんだそれ」
だってすごく懐いてる気がするよ。「あ〜〜かわいい…」って抱きついても嫌がらないし!
みんなも続いてチョコボに触れたりウィズさんにどんな性格なのか聞いたりして自分のチョコボを選び始める。なまえさんは一匹のチョコボの前で悩んでいるみたいだった。
「なまえさんはその子にするの?」
「え?あー、ううん…まだ決めてないんだけど…」
チョコボから離れてなまえさんに歩み寄ると、眉間にうっすらシワを寄せて腕を組み、うーんと唸っていた。何か気になることでもあるのかな?
「この子、プロンプトくんに似てない?」
「…え、オレ?!」
「うん…いや元々チョコボ頭ではあるけどさ、ホラ見て、このおでこの羽根…寝癖みたいな感じかな?ハネてるんだよね」
チョコボ頭っていうのが引っかかるような……
まぁそれはおいといて、確かにちょっとハネてるところオレそっくりなんだけど。
「……ちょっと似てる、かも」
「でしょ!何回見直しても似てるんだよね。……ちょっと触らしてくれるかなー?ごめんね」
オレが頷いた事で確信を持ったのか自信満々に言うなまえさんに、調子に乗っちゃうから否定しとけば良かったと思っても遅くて。よっぽどハネてるところが気になるのか、チョコボに声をかけながらゆっくり手を伸ばして、ぴょんとハネている羽根に優しく触れた。
やっぱり初めて触る時は嫌がったりしないかとか緊張してしまうのは誰でも同じで、なまえさんの表情も少しだけ強張ってる気がしたけど、当のチョコボは気にしていないようだった。
「…あ、触らせてくれた」
「キュ〜」
「気持ちよさそうにしてるね」
「ね。ていうかホントこの子プロンプトくんに似てる……名前プロンプトにしようかな」
「ええ?!」
「よーし決めた!今日から君はプロンプトだ!おいで!」
「クエッ!」
「名前安直すぎない?!ってかややこしくなるって!」
慌てるオレをよそに、もう決めたといった様子のなまえさんと抱き締められて嬉しそうに撫でられるプロンプト(チョコボ)。
いやだってさ、誰かが「プロンプト」って呼んだらオレもチョコボも振り向くよ……。どっち?ってなって「チョコボの方」って言われた時のオレ、ちょっと切なくない…?
「かわいいね〜プロンプト。よしよし」
「……」
いやほら、オレがよしよしされてるみたいじゃん。今なまえさんがよしよししてるのはチョコボのプロンプトだからね?!
なんかオレがよしよしされてるみたいで恥ずかしいんだけど…
「…どうしたのプロンプトくん」
「ややこしいしオレが恥ずかしいから、その名前やめない…?」
困ったと言わんばかりなため息を聞いて、なまえさんがチョコボを離してオレを見てきたのでゆくゆくの事を考えて提案してみる。きっとやめておいた方がいい…ハズ。
「あ〜なるほど、プロンプトくんもよしよししてもらいたいって事ね」
「オレの言葉通じてないの?!」
「よぉーし、おいでっ」
おかしい、日本語話してるつもりなんだけど。って首を捻るオレを無視して、屈むようにジェスチャーするなまえさんに仕方なく従えば、チョコボの首に抱きついていたように頭を抱き締められる。
いや、おいでって言っといて自分からきてるし…
「よーしよし、かわいいね〜」
小さな手のひらがオレの頭を優しく撫で始めると、照れくさいし恥ずかしいしで超複雑なんだけど……いい匂いするし、おっぱい当たってるし、これは……
「…なんか悔しいけど、ちょっとイイかも…」
「うふふ、プロンプトくんのえっち」
「っち、違うって撫でてもらうのが!!」
「はいはい、嘘が下手ねー」
「もー!!」
「なんであいつら付き合わねーの?」
「目に毒だな…」
「ピュアだねぇ」
to be continued...