嘘でしょ、どうやったらいいのかわからない。え? 今までどうやってたっけ? 服を着替えて整髪料でガチガチになった髪を洗うためにシャワーを浴びて、この部屋で二人きりになって。ベッドに座ってテレビをつけて、英語だから全くわからない。くだらない話をしていたのに。急に沈黙になってしまった。今まで通りにやったらいいんだって自分を説得してるんだけど、じゃあその「今まで通り」って何? 今までと、ぜんっぜんちがう。違うんだ。
「……どうしたの?」
「っ」
布団の上に投げ出された手を握る君の手。僕が手汗をかいていることがばれないだろうか。体が心臓の鼓動に合わせて震えているのがばれないだろうか? 僕の左手、薬指にはさっき交換した指輪が嵌っている。まだ慣れない重みと金属の質感。指を握って絡ませるように、そして君は寄り添うように、ぴったりと体を合わせた。
「……しない? しよ?」
カッと頭に血がのぼる。きつく抱きしめてそのまま押し倒した。白いベッドの上に散らばっていた花びらがふわっと飛ぶ。ああ、この演出のためにこんな風にしてあるんだ。綺麗だなぁ。感動したのは一瞬で、さっきキスした君の唇にキスをする。今度は、神様は見ていないから。はふ、と深く。洗ってサラサラになった髪の毛に指を絡ませ、もう一つの手では君の体を服の上から確かめる。この肩。胸。腰。お腹。全部全部、君と僕のもの。
「ん……っふ、ん」
舌を絡ませ、君の舌を吸い、僕と君の境目がどんどん無くなっていく。かろうじて伸びてきた手のひらが僕の背中を優しく抱いた。好き。好きだ。大好きだよ。
「……好き、本当に好き」
「……ん」
「結婚、して」
「いま、んふ、してきた」
「何回も。ずっと。いつも。ずっとして。結婚」
「するっぁ……ん」
温かくて柔らかな胸に触れると君は背中をあげた。
「待って……脱ぎたい。肌、触りたい」
「僕も」
適当にTシャツを脱ぎ捨て、ズボンもパンツもどこかに放る。恥ずかしいほどに勃起しているそれは、それでも手早く服を脱いだ君の姿を見ただけで暴発してしまいそうだ。
「来て」
伸ばされた腕に包まれる。ぴったり触れ合う肌と肌。部屋の温度なんか気にならない。君が温かくて、熱くて、もうだめ、溶けてしまう。サラサラと滑らかな肌を、もっと一つになりたくて、手のひらでなぞって、あちこち触る。くすぐったがっていた君はだんだん静かになって、それから、可愛い声をあげた。
「んっ」
「ごめ、もう、我慢できない」
「うんっ、私も」
「挿れていい?」
「うん、うん」
「っぁ」
「ぁあっ……」
「ぁーー……っ、やば、うそ、っあ」
熱い君の中へ、何もつけずに挿入する。うねる粘膜、拍動が伝わってくる。何より、何より。目の前に君がいて、君を抱きしめて。君がちょっと痛そうに目を閉じているから。
「やっば、ちょ、ごめん、すぐ出るかもっ」
下唇を噛んで射精したい気持ちを精一杯に抑える。セックス、今まで何回もしてきたのに。こんなに気持ちいいなんて知らない。どうして、なんで。
「あ、ぁ、勇利くんっ」
ゆっくり揺さぶると君は少しずつ声を上げた。
「痛く、な? 大丈夫?」
「だい、じょぶっ……ぁ、あうっ、気持ち、いいよぉ……っ」
「んんっ……ぁ……」
「ひ、ぁ、あぁっ」
「好き、愛してる、◯◯っ」
「うん、うん、私も、好き……っ、愛してる、ぁあっ」
「やば、あ、ごめん、もう無理っ」
「いい、いいっ」
肘を曲げて体をぴったりと合わせ、腰をカクカクぶつける。こんなみっともない、初心者みたいなセックス。
「ぁあ、出る、出そうっ」
「いい、来て、好きぃっ……」
「ぁ、あ、あ、ぁぁ〜〜……! ……っっ…」
「っぁ……ぁあ……っ」
脳が電気で痺れている。ビリビリフワフワして、精液と一緒に頭が全部飛んでいってしまった。
「ぅ……ぅっ」
「ん……」
かろうじて、そこがヒクついていることがわかるくらい。頭は真っ白になり 、息は止まっていた。波が去り、どくどくしたまま、そのまま君の上に居る。
「……っごめん……気持ち、よすぎ……」
「私も……」
「全然イってないよね、ごめん」
「そんなんじゃない、そんなんじゃないけど……すっごい良かった、気持ちよかったぁ……」
僕の首筋に唇を寄せる。背中に回された腕は柔らかい。大きなベッドに押しつぶしてしまいそうだ。
「勇利くん」
「ん?」
「大好き。愛してる」
「僕も……」
精液が溢れて、あったかく、ぬるぬると二人を汚す。
「シーツ汚れる」
「汚くなんてないから、まだこうしてて……気持ちいい」
「うん」
「気持ちよかった?」
「死ぬかと思った……」
「っふふ」
「ふふふ」
軽く唇を合わせて、僕は体を動かし君に向かい合う。どろっと溢れるそれが、僕たちが本当に今、セックスしたんだって教えてくれる。
「お風呂、もう一回入る?」
「まだこのままがいい」
「僕も」
太陽が足元だけ照らす、ふかふかの広いベッド。もう一回したいな、って思ったけど、だめだ、眠気がすごい。君は僕の腕をそっと握ってもう目を閉じている。起こさないようにゆっくり、軽くて温かい羽毛布団を引っ張り上げて、僕と君にかけた。頬にキスして僕も目を閉じる。君の匂いに包まれてる、今。なんて言えばいいかわからない感情で身体中がいっぱいになり、とにかく君を、全部をぎゅうっと抱きしめた。
END