後輩

「……あの、めんどくさいこと、言わないので、もしよかったら……」
「なにそれ、誰に聞いたの」
「うっ噂で……」
「噂かぁ……」
 勝生先輩は自転車のカギを開けて、鞄をカゴに入れた。怒ってるだろうか、断られるだろうか。手渡したそれを手に取った勝生先輩の顔が見れない。視界には、学ランと、足元だけ。
「いいよ」
「!」
「いつがいい?」
「き、今日で!」
「ははっ、元気がいいね」
 じゃあ乗ってよ、と先輩は自転車の後ろを指さした。

 今日なのは、お父さんもいない日だし、お母さんは夜勤で、お兄ちゃんも塾。夜まで家に誰もいないからだ。結局私も自転車通学なので、勝生先輩を先導しながら家に帰る。誰かに見られたらどうしよう、と思いながら時々後ろを振り返ると、先輩はちゃんとついてきてくれた。
「ここです」
 車はない、大丈夫。普段私が停めるスペースに自転車を置いてもらい、私は壁に押し付ける様にして自分の自転車を置いた。
「誰もいないの?」
「はい、お兄ちゃんも遅くなるし」
「そっか、お邪魔します」
 シーンとした玄関。靴がないことを最終確認して、私は先輩を自分の部屋に案内した。部屋の中は一応きれいにしているつもりだけど、先輩が気に入らなかったらどうしよう。鞄を床に置いてもらう。
「かわいい部屋、いいにおいする」
「すみません」
「なんで、いいよ」
「あの、ほんと、すみません」
「いいって」
「何か、お茶か何か、飲みますか?」
「いい」
 部屋のドアを閉めたとたん、先輩はぎゅっと私を抱きしめた。こうなることは分かっていたけど、でも、びっくりして声が出ない。
「……」
「していい?」
 うなずくだけ。先輩の襟足からはほんの少しだけ、タバコのにおいがする。近づかないとわからないにおい。タバコ吸うのって、本当だったんだ。
「◯◯、初めて?」
「……すみません」
「なんで謝るの、嬉しいよ」
 髪、耳にちゅっとキスされて、先輩の手が背中をゆっくり、円を書く。
「っ……」
 ドキドキしてしょうがない。何度も確認したけど、私、今日、ブラとショーツセットのやつだよね? あっ、ていうか、お風呂入った方がいい? そんなこと考えている間に、セーラー服の上からブラのホックがプチンと外された。
「ベッド行こうか」
 抱えられるでもなく、でも、部屋は狭いし、くるっとターンしただけでもうそこはベッドだ。私の上に先輩が、勝生先輩が。掛け布団の上にそのまま寝転んでしまって、先輩はその私の足の間に入った。
「大丈夫、怖いことしないから」
「はい……」
 蛍光灯に透けて、赤茶色の髪の毛。それと同じ色の瞳。優しそうな表情を見せる眉毛。目をつぶった、と思ったら、瞬間、顔が近づいて、唇が重なった。
「んっ……」
 柔らかくて、厚い唇。ちゅ、ちゅ、っと音が鳴る。ちょこっと出てきた舌が唇をなぞる。
「口、あけて」
 力を緩めると、舌が入ってきた。私の舌をなぞる。口の中から溶けていくみたい。はぁ、と吐息が勝手に出る。先輩の手が私の頬をなぞった。耳をくにくにされる。
「んんっ」
 ぴちゃぴちゃ音がする……。いつの間にかセーラーのチャックがあげられて、広くなったそこから手が入ってきた。あったかい手。ブラの上から胸を触られる。
「おっぱい大きい」
「んっ」
 外されたブラはゆるゆるで、胸がもまれる。恥ずかしい、くすぐったい、ちょっと気持ちいい。
「あっ」
 思わず声が出ちゃって、私は手の甲で口を押える。
「いいよ、大丈夫」
「すみませ……」
「すみません、禁止ね。嫌なことはやめてって言ってくれていいから」
「あ、あっ」
「かわいい」
 まくり上げられて、胸もお腹も全部丸見えになっちゃう。恥ずかしくて恥ずかしくてしょうがない。乳首をちゅって吸われる、初めての感覚。
「んんっ」
「気持ちいい?」
「分かりま、あっ」
 するするっと手がお腹を触ってぞわぞわする。勝生先輩が足の間に入って、スカートをたくし上げた。ショーツの上から、温かい、ちょっと大きい、男の人の手がそこに触れる。
「自分で触ることある?」
「ちょっとだけ……」
「どこ触る?」
「中、中をちょっと」
 割れ目をなぞる指。
「ここは?」
「っっ……!」
「大丈夫、大丈夫だよ。気持ちよくなるから」
 勝生先輩の手が、ショーツの上をくりくりなぞる。ドキドキが半端ない。ぎゅうっと布団を握りしめる。
「力抜いて」
 膝裏を持たれて、足が開かれる。下着の上から、あったかい息が。先輩が、そこに、口を当ててる。
「やっ、汚いですっ」
「今からセックスするのに」
「そうですけどっ」
 ふーっと息をあてられて、あったかくて、ゆるんじゃう。だんだんじわじわしてくる。指先が、下着の上からソコの周りと、それの一番上の部分をひっかく。
「!」
「痛い?」
「なんか、すごい、刺激がっ、くすぐったいです」
「触ったことある? クリ」
「ない、です」
「そっかー。じゃあ初めてだね、イケるかなぁ」
 お尻上げて、と素直にお尻を上げると、ショーツを脱がされた。私は、靴下と、おへそまでまくり上げられたスカートと、胸が丸見えになったセーラー。先輩は、学ランをしっかり着てて、私だけ、恥ずかしい。体が熱い。真っ赤になってる気がする。
「濡れてる、もうちょっと触るね」
 ソコの間に指を入れると、ぷちゅんって音がした。足の間には、勝生先輩の茶色の髪。そっと手を伸ばす。ちょっと傷んでごわごわしている髪。勝生先輩は顔を上げて、太ももにキスした。
「指、入れるね」
「ぅっ……」
 大きくて、硬くて、つるってした指が、中に入ってくる。奥まで進んでくるのが、お腹の中、押されてるみたい。
「ぁ、あぁ」
「痛くない?」
「だいじょぶ、です」
 中指と思われる長い指が中に入って、先輩はそのまま体を私の横にずらした。寄り添って、手は私のソコの中に。あそこ全体をあったかく掌で包んでくれる。
「どんなふうに触るの?」
「ちょっと、入れるだけです」
「今度クリと一緒に触ってごらん。気持ちいいよ」
「あ、あっ」
 中指が入ったまま、親指がさっきのびりびりするところをこする。
「ちょっと我慢してみて」
 勝生先輩は私の体を横から抱きしめる。あそこに伸びてる腕を必死でつかんでしまう。体が跳ねるのを我慢していると、だんだんびりびりがじんじんしてきた。
「どう?」
「せんぱ、い、熱い、熱いですっ」
「うん、かわいい、いい子。もうちょっとだから」
 ぬる、もう一本指が中に入ってくる。ぬるぬるしてるから全然痛くない。くりくりしたところを、ぎゅっと押しつぶされて、奥までなんか、強くて気持ちいい電気が集まってくる。
「はぁ、はぁ、はぁっ」
「あ、イキそう?」
 イクって何? どんな感じなの? つかんでる指先にぎゅって力が入る。
「こわ、こわいです」
「大丈夫、すごく気持ちいいよ……◯◯、上手」
「なんか、集まって、手、足」
「うん、うん」
 かわいい、大丈夫ってずっと言ってくれる。ありがとうございますって言いたいのに、息が上がっちゃって、手と足の先がぎゅうってなって、やだ、やだ、なんかおかしい。頭の後ろに学ランのボタンを感じる。
「あ、あ、あ、やだ、なんか」
「いい、大丈夫、いいよ」
「あっーーーー……! ーーーーっ、う、んんっーー……! ……!」
 目の前が真っ白、息ができない、苦しい、体が勝手に……
「……っは、はぁ、あ、あぁ」
「いいな、気持ちよさそう」
「いま、今の……」
「いっちゃった? きゅんきゅん締め付けてたよ」
 全身に汗をじっとりかいて、思わず先輩に体を預けてしまう。腰に触れる硬いのは、先輩の、アレかな。こんなに硬くなるんだ。勝生先輩の顔が近くに、タバコのにおいだけじゃなくて、制服のにおい、ちょっといいにおいもする。指が抜かれると、何にもなくなっちゃって、自分でもひくひくしてるのが分かる。ここが、早く入れてって。
「ありがとう、ございます」
「まだ終わってないよ?」
「……はい」
「そんなに緊張しないで」
 勝生先輩はにこって笑って、それからよいしょと体を起こした。学ランのボタンを一つずつ外す。見ていられない、恥ずかしすぎる。布団の中に隠れて、私もスカートを脱いだ、あと、靴下も。ベルトをかちゃかちゃ外す音がして、ジッパーが下りる音がして、ズボンとベルトがとさっと布団の上に落ちる。
「みつけた」
 布団をめくってその中に勝生先輩が入ってきた。あっという間に私の足の間に入る。色白の体、触ると温かくて、すべすべしている。
「先輩、肌、きれいですね」
「ん、うち、温泉だから」
 布団の中で見上げる勝生先輩。肩の筋肉、喉仏、口元は髭を取った後がある。小さな透明のピアスをしてる。部屋の電気がすけて、ピンクの光で満たされる。勝生先輩は、そんなにまじまじ見て、と笑いながら頭の横に両手をおいて、さっきみたいにまたキスしてくれた。いつの間にか私が渡したコンドームの箱が枕元にある。
「今度入りにおいでよ」
「っはい……」
 ビニールを開封する音がして、箱の中からひとつ、四角い袋が出される。私の胸に顎を預け、ぴりぴりって開ける。
「ちゃんとつけるから」
「……」
 ちらっと盗み見ると、見たこともない、それが、大きく赤くなってて、そこにかぶせられるピンクの薄いゴム。くるくる伸ばすと、表面がてかてかした。
「挿れるよ」
「はい……」
「ゆっくりするね」
 足を大きく上げて、熱いのが当たったなって思ったら、指じゃない、硬くて熱い、太いのが……!
「力抜いて」
「んんっ」
「こーら」
「っふ」
 舌を入れられるキス。体がぐぐぐと押し付けられて、ぬるぬるでぱくぱくしてたそこに、太いものが、それが入ってきた。太い棒で、刺されているみたいな、入っちゃいけないものが入ってきて、ぁぁあって、変な声が出る。
「はぁ、は、あ、あぁ、入り、ました?」
「入ったよ……あー……気持ちいい」
「あ、あ、よかったぁ……」
先輩は私の体の上に乗った。重たい。こんな感覚、初めて。あったかくて、思わず背中をぎゅうっと抱きしめてしまう。
「このまましようか?」
「?」
「ん」
「あ、あ、ああっ」
ズルズル引き抜かれてまた中にはいってくる。圧迫感がすごい。中を擦られて、少しずつ奥まで。
「気持ちいいか、わかんないでしょ」
「ん、んっ」
「気持ちいい、って思って。言ってみて?」
「えっ、でもっ」
「いいから」
にゅるにゅる濡れて、先輩の毛がチクチクしてじゃりじゃり音がする。ずく、ずく、ぱちゅん、ぱちゅん。
「気持ち、いい……きもち、いいですっ」
「敬語、いいから」
「あっあ、いい、気持ちいいっ」
「は、そうそう、続けて?」
あ、あ、頭がだんだん、とろとろになっていく。先輩が突く、あそこが、奥までたくさん。
「きもち、ひぃ、いいっ……」
「ん……ちょっと変えるよ」
「ひゃっ」
両足をぐっと上にあげて、足を先輩の肩にかける姿勢になった。
「あっ、恥ずかし」
「大丈夫、よく見える、エッチ」
「そんな、あぁっ」
「ほら、目ぇ開けて見て?」
閉じていた目をあけて、下を見る。私のそこに、入ってくる大きなペニス。
「あっ、あぁん」
「ね、セックスしてる……したかったんでしょ?」
「うん、うんっ」
「◯◯、エッチだね……僕とやりたいから、コンドーム、買ったんだ」
「ひぃ、いいっ」
ばちゅばちゅ奥まで、さっきより。
「ふか、ふかぁぃ」
「ん、子宮まで、ね?」
顔がかあっと熱くなる。誰も触ったことがない、自分でも届かないそこに、勝生先輩が。
「だめ、もっと見て。ほら」
 ぬるぬるひかる大きなペニスが、私の粘液がついて、で、そこを開いて入っていく。
「見てほら、抜くとき、追いかけてくるんだよ」
「ぃやあ……あっ、ああ」
「どっちがいい? 奥まで入れるのと、この辺、こしこしするのと」
「お、奥まで、奥がいい、です」
「うん、いいね」
 ぐうっと体重をかけられて、先輩の体がもっともっと近くなる。
「体、柔らかい。何かしてる?」
「あっ、あぁ、バレェ、してますっ」
「じゃあ、きっとばれちゃうよ」
「えっ、何が、んんっ」
「んーー? 僕と、セックスしたこと」
「セックス、あぁ、そこっ」
 勝生先輩が私の腰にぐぐっと押し付けて、中でぐるぐる回した。
「ひぃ、ああぁ、やぁん……! あっ、こわれ、あっ」
「奥、こりこりしてる」
「んんんっ」
 ずっぽ、ずっぽとすごくいやらしい音が聞こえる。頭がふられて、ぐちゃぐちゃになる。
「もっと、してください、もっとぉ」
「エロ、本当に、初めて?」
 かくかくと頷くしかできない。
「いつから、僕とセックス、したかった?」
「あっ、前、前からですっ」
「敬語なしね」
「前からっ」
 指先が私のクリトリスをいじる。叩きつけられる体。
「こんな、かわいい部屋で、セックスすること考えてたんだ」
 目を開けるといつもの私の部屋、でもそこに、裸の勝生先輩がいて、棚においてるぬいぐるみたちも、壁に貼ってる友達との写真も、全部全部が私を見てる。セックスしている、私を見てる。
「うん、うんっ」
「かわいい、いいよ、いっぱい気持ちよくなって。初めて、だもんね」
「んんっ〜〜……!」
 おっぱいを触ったり、乳首を吸われたりして、もう体が、いうことを聞かない。
「あっあっ、んんっ、吸っちゃ、だめぇ」
「どして?」
「気持ちよく、ああ、なっちゃう」
「いいじゃん……あー……ちょっと、激しくしていい?」
「いい、いいっ、っあ!!」
 体を起こして、太ももを持たれる。パンパンパンっと打ち付けられる。
「ああぁっ」
「痛い?」
「だいじょぶ、だい、ああ、やば、やばいぃ」
「んっ、あーー……出そう」
「やばいぃ、あ、いい、きもち、ひぃっ」
「いい? 出すよ?」
「いぃ、ひぃですっ、くださ、い」
「ふ、くださいとか、えっろ」
「あぁぁ、あぁ」
「つ、っ……」
 今までで一番激しく、ずんずんされて、そして、奥のほうに押し込まれるように、がく、がくってなった。あ、勝生先輩、いってるんだって、思ったけど、もう、体中がじんじんしてて、ふわふわしてる。
「ぁーー……はあ……」
「ん、んんっ」
「ふ、はぁ……」
 勝生先輩は私の体の上にどさっと寝転ぶ。汗をかいた肌がぴったりくっついて、ドキドキしているのが胸に伝わってくる。くらくらして、どうしたらいいのか、分からない。
「はぁ、はぁ……」
「……重くない?」
「だいじょぶ、です」
「はぁーーっ……よしよし」
 汗をかいた私の頬にちゅってキスしてくれる。だんだん意識がはっきりしてきて、熱かったからだがひんやりしてきた。脇へ寄った布団を引っ張り、私と先輩の上にかける。
「寝そう、やばい」
「あの」
「ちょっと待ってね、抜くから」
「んっ」
 ぬぽ、っとぬけるとき、最後精液の入ったコンドームがずるずる引っ張られる感覚がとてもリアルだ。先輩の熱が離れて行って、急に恥ずかしくなって私は体を丸めた。
「かわいかったよ」
「そんな……ありがとうございます」
 この後どうしたらいいの? 恋人でもないし? とにかく、足の先に引っかかっているショーツを履いて、スカートも履いた。先輩は、コンドームを外して、暑いなー、といいながらTシャツと学ランを着る。胸ポケットからピアスを出して、透明なそれから付け替えた。布団の上でぐちゃぐちゃになったズボンも引っ張り出して履く。
「あの……ありがとうございました」
「初めて、どうだった?」
「……気持ち、よかったです」
「良かった」
 またにっこり笑ってくれる。恰好は派手だけど、この笑顔、かわいくて、素敵。今更だけど、立ち上がると私より背が高い。ベッドに腰かけたままの私に、先輩は手を差し出した。
「歩けるかな?」
「そんな、歩け……」
 立ち上がったはいいものの、変なところに力が入って、歩きづらい。
「え、なんで」
「そりゃ、あんなに激しくセックスしたから」
 ぼっと顔が一気に赤くなる。
「バレエの先生には、黙っててもらうように言っとくよ」
「えっ、えっ」
「見たらわかるんだって、セックスしたかどうか。僕昔、バレエやってたから」
「バレエやってたんですか」
「意外でしょ」
 学ランのボタンをすべて閉めて、勝生先輩は髪をちょっと整える。あ、帰っちゃうのかな。
「あの、お茶か何か」
「そうだね、トイレ借りていい?」
「あっはい、どうぞ!」
 トイレに行っている間に、よたよたと歩いて冷蔵庫からお茶を2人分持ってきた。部屋にまた入ると、そこはいつもの部屋なんだけど、においがなんか、生々しいにおいがする気がして、どきどきする。
「ありがとう」
 戻ってきた勝生先輩は、いつもの、学校で見る姿とまったく一緒だった。引き留める理由もないし、どっちかっていうと早く帰った方が安全なのは安全だ。でも、お茶をもう少しだけ、ゆっくり飲んでくれたらいいのに。体はじんじんしてとても疲れているんだけど、ぼーっと、そんなことを考えながら先輩を見ていた。
「……だだもれだよ、セックスしたって、顔に書いてる」
「えっ」
「やばいよそれ」
 面白そうに笑う。
「どうしよう」
「もう帰るから、その時ちょっと外出る? コンビニ行ってこれ捨てなきゃだし」
 白いティッシュに包まれたそれは、さっき使ったコンドームだ。お茶を飲んで、それから一緒に近くのコンビニまで出ることにした。こっそり鍵をかけて、自転車を引っ張り起こす。サドルが、ひりひりしたそこに食い込んで痛い。少しだけ腰を浮かしながら、短い距離を並んで走った。
「買ってあげるよ、アイス。何がいい?」
「いいですよ」
「いいから。いつもこうしてるし。じゃあこれね、ダッツ」
「あっあの、すみません……」
「すみませんは、禁止」
 コンビニの店員は、さっきまで私たちがセックスしたことを知っているんだろうか? 恥ずかしくて目をそらしてしまう。
「じゃあね」
「はい」
 あっさりと、勝生先輩は自転車に乗って帰って行ってしまった。私は、買ってもらったアイスをそこで食べる気がせず、持って帰る。セックスしていただなんて、信じられないほど、何も変わらない。まだ誰も帰っていない家で、冷凍庫にアイスをいれて、部屋に戻った。
「タバコのにおい、ついてるかな……」
 布団に寝転がったけど、いつもと同じ、何のにおいもしない。あんなに気持ちよかったのが、嘘みたい。急に寂しくなって、布団を剥いで中にもぐりこんだ。
 カツン
 何かが落ちた音がする。フローリングを見ると、そこにはあの透明なピアスが落ちていた。

 翌日。
「あの、勝生先輩、これ」
「何、◯◯、また持ってきたの?」
「違います、これ、その、わす……落とし物です」
「ああ、ありがとう」
 学食で会った勝生先輩は眼鏡をしていた。今日コンタクト合わなくってさ、と笑うその姿、なんだかすごく新鮮で、ドキドキしてしまう。
「そうだ、ねぇ」
 先輩はこっち来て、と手招きする。近寄ると、手をとられてぐっと引き寄せられた。
「また、やりたくなったら声かけて」
 耳元でささやかれる。昨日より強いタバコのにおい。
「……はい」
「あと、だだもれ、だよ」
 チュッと、髪にキスされる。じゃあね、とそのまま通り過ぎていく勝生先輩。一瞬で昨日の感覚が全部、体中によみがえって来る。
 ああ、もう無理。知らなかった私には、戻れない。


END