路地裏

「ごめ、ちょっとやばいのがいて」
 勇利くんは私を肩にだき、通りを伺っている。室外機のむわっとした空気が膝裏に当たった。ガチャガチャとうるさい通りから一歩入ったこの狭い路地は、別の空間のようにひんやりしている。
「知り合い?」
「……みたいな?」
「なにそれ」
「いや……前ちょっと怒らせちゃって……面倒だから……」
「何したん」
「……思ってるようなことじゃないよ」
「怪しい……」
「行ったかな……」
 肩越しに見える通りは、もうすぐ夜ということもあって人通りも増えてきた。小さな町の小さな繁華街は、知り合いに会わない方が難しい。
「ほんと何したと」
「ん……ま、いいよ」
「よくな……っ」
 言葉を丸ごと塞ぐようにキスをされる。少しだけ荒れた唇。苦い匂いがした。
「……ん」
「……そんなことよりさ、ちょっと良くない? ここ。死角で」
「んっ……こら、誤魔化すなっ、当てるなっ」
 コンクリむき出しの壁に押し付けられた私に、彼の腰がぐりっと当たる。あっ、これ。
「こら」
「だって……◯◯とこんな所で隠れてキスしてたら、ムラっとしてきた」
「バカなこと、えっ、ちょっ」
 グリグリ硬くなってるそれを擦り付けて、大きな手が私の胸を揉む。ブラの上から、乳首、探し当てないで。
「やだ、やめてよっ、あ、ばかっ」
 ワンピースの裾から手が入ってきて、キャミソールの下からブラをずり下ろす。ぽろんとはみ出たおっぱい。捲り上げられて、道路から見えない左半身はほとんど裸だ。
「足ここに乗せて」
「でも」
「大丈夫、僕が盾になってあげるから、見えないし……どうせ、するつもりだったじゃん?」
「んっそうだけど……」
「ね、興奮するでしょ、こんな、路地裏でするの……しようよ……僕こんなになっちゃった」
 私の耳元で吐息を噴きかけるように勇利くんは囁いた。以前「声、セクシーだよね」って言った事を覚えてるんだ。室外機の上にかかとを乗せて、あらわになったショーツの上から、勇利くんの指が触れる。
「◯◯……」
 薄暗い中目立つ金髪。またさっきみたいなキス、今度はもっと激しく、食べるような、飲み込むようなキス。舌を絡み合わせて、唾液が交わる音が耳に届いて、この水音がそのままセックスしている時のよう。唾液を飲み込みきれなくて、こぼしちゃう。勇利くんの右手は下着の縁、縫い目を行ったり来たりし出した。割れ目の柔らかいところを布越しに触られる。
「ね? 駄目? 指入れさせて……」
「や、駄目……待っ」
「ちょっとだけ……優しくするから」
 指先で敏感なところをショーツの上から引っかかれる。
「あ、ふっ」
「声、抑えて」
「んんっ」
 抑えるも何も、手は勇利君の背中にしがみついてなきゃ、倒れそう。必死でその肩に口をうずめた。タバコのにおい、きついよ。吸いすぎだよ。ぷっくり熱を持ったそこを、爪でくるくるされる。ああ、邪魔、もう少しが、もどかしい。
「んっ、んっ、ゃぁ……」
「やめる?」
「や、ゃだ……入れて、お願い……ゆび、入れて」
 ショーツの横から長い指が、ずって、入る。
「ほら、濡れてんじゃん」
「んん〜〜っ……」
「ぐちょぐちょ……」
 くちくち音をさせて、中指がぬーっと入ってくる。あ、そこ、そこ、かき回して、押して。
「ぬるぬるだよ、ほら……中出ししたみたい」
「あっ、そこ、もっと、押して」
「だぁめ」
「なんで……ぇ」
「優しくするって、言った」
 体重を支える右足がびくびくがくがくしている。触ってほしいところがたくさんあるのに、勇利くんの中指は、中をただ、行ったり来たり、ぬぽぬぽするだけ。切なさというか、きゅうっとして、お腹の中が絞られる。
「あっ、ん……ね、お願い、お願いっ、ああっ」
 外気で冷たくなった指がまた中に入る。ちょん、っと気持ちいいところをつつかれるだけで、外に出て行っちゃう。ぎゅうっと締め付けたいのに、一本じゃ、細すぎる。自然と腰をかくかく振って、もっと見てほしい。ほら、見て、私、こんなことしてるんだから、見て。
「ふふ、エロ、腰」
「やだ、やだ……バカっ…」
「そんなこという子には、あげらんないなぁ」
「ううううっ」
 下半身が熱いよ、ジンジンするよ。
「ほしい、ね、お願い……」
「……何が? ◯◯」
 顔が見えなくてもわかる。かわいい顔して笑ってる。意地悪しないで。
「ずるい、ううっ……そんなの、指、じゃ、足りないってば……!」
 震えながら、必死で勇利くんの首筋に、唇を寄せる。もうだめ、我慢できない。勇利くんは私の中から指を抜いて、ズボンのポケットから何かを出した。
「ほら、足頑張って」
 自分でショーツを引っ張って、あそこの隙間が丸見えになるようにする。何にも入ってないのに腰はまだかくかく動いてしまう。勇利くんがジッパーを下ろす音がして、それだけでもう、体中が期待してる。胸が一層ドキドキする。
「欲しい?」
「欲しい、いっぱい」
「どんな風にして欲しい?」
「……優しく、しないで」
「うん……良くできました」
 足を大きく持ち上げられ、あっと思った時に、ずくって太いものが中に入ってきた。
「あっああっ」
「声」
「だって、あ……ふとっぅ……」
「ん」
 いたい、と言ったほうが正解かもしれない。太くて本当にギリギリのそれがあそこを割り開いて押し入ってくる。入り口はひくひくしてて、でも奥はきゅうっと飲み込むように、ぽっかり口を開けている。欲しくて欲しくて堪らなかった奥を突き上げる、勇利くんのペニス。体重がかかって、一番奥まで届く。たん、たん、ゆっくり肌を叩く音。こんなところで、外で、すぐそこには人がいっぱい歩いているのに、セックス。
「ひっ、ううっ、ん」
「静かに、できる?」
「むぃ、むり、口、塞いでぇ」
「しょうがないなぁ」
「ん、ふぁ、んんっ」
「……ね、どう? こんなとこで、僕に口塞がれて、セックス、するの」
 左手で私の口を塞ぎながら、勇利くんは耳元でまた囁く。
「なんか、ヤバくない? 悪いことしてるみたいで」
 返事ができない代わりに、うん、うんって頷く。苦しい、足に力が入らない、気持ちいい……!
「◯◯、エロいね、昨日より濡れてる……興奮してるんだ?」
 太ももにベトベトしたものが広がっているのがわかる。太いペニスが出たり入ったり、さっきの、奥とか、前の気持ちいいところとか、どんどん突いてくれる。
「指じゃ我慢できなかった?」
「ん、ん」
「僕のちんこで、奥までされるの好き?」
「ん」
「ああ、ごめん、言えなかったね」
「っは、好き、好きぃ」
 バッグが床に落ちて中身が出た気がするけど、もうそんなのどうでもいい。気持ちいい、中、もっとして。
「ゆうりくんの、おちんちん、すきぃ……だいすき……」
「ちんこだけ?」
 勇利くんは私の首筋を舐める。ぞわぞわってして、腰が抜けちゃう。右足もちょっと浮いて、背中と、勇利くんと繋がってる腰で支えられてる感じ。あそこからはぐちゅぐちゅと音がして、かき回される振動に、もう、どうにかなってしまう。ほとんど抱えあげられるように、体重を預けるしかできない。
「だって、だってっ」
「っしょ……あは、リフトリフト」
 とうとう勇利くんは私を壁に押し付けて持ち上げた。腕と大っきなおちんちんだけで支えられている私の体。深く刺さって、中まで入ってきちゃう。
「あっ、あ、ああぁ、あぅ」
「はー……」
「そんな、激しっ、あっ」
 ずっぽずっぽずっぽ揺さぶられて、子宮が、頭が、ガクガクする。
「優しくない、方がいい、でしょ?」
「いいっ、ひぃ、あぅっ」
「……激しいのが、好きなんだね」
「んんんっ」
 中をぎゅっぎゅって自分が締めてるの、わかる。熱くて太くて硬い……私を貫く、それ。セックス、わるいこと? ううん、いいこと、して、気持ちいいこと。ずっと、したい。
「これ、これ……なま?」
「つけたよ」
「っいつの、まに、あぁっ」
「さっき」
「んんんっ、やだ、中、欲しい」
「ごめんね」
「うぅぅっ」
「これ、だけでいいじゃん?」
「ん、うん、うん」
 粘液の泡が、プチュプチュ割れて、もう、体がもたない。足が思うように力が入らなくて、ビクビクガクガクする。強すぎる気持ち良さに、叫んでしまいそう。自分がおかしくなりそうで、怖い。
「も、むり、むり、イってよぉ……」
「でも、◯◯、まだイってない」
「いい、いい、いいからぁ」
「ふ、ぅ」
「ね、あたしで、気持ちよくなって、ねぇ」
「あーー……もう、っ」
「はぁ、うっ、あっぁぁぁ」
「あと、で、もっかい、しよ?」
「る、するするっ、するからっ」
「う、うっ……んー……、いきそ」
「うん、うんっ」
「っあ……ぁーー……ぁ、あ」
 びくびくっと震える勇利くんの腰づかいで、あぁ、いったんだぁ、と、蕩けきった頭で感じている。奥まで嵌めたまんま、ぐりぐり揺さぶられる。子宮の入り口がこじ開けられる、気がする。
「あ、あ、あぁ」
 びくびくっつ……体の奥から上がってくる熱いもの。痺れて、息をするのも忘れて、その熱いものが脳を溶かしていく。
「んな、締めない、で」
「ぁあぁ……」
「んんっ」
 最後の一滴まで、ゴム越しに私の中へ送り込んで、勇利くんの腕から力が抜けた。繋がったままよろよろと室外機の上にもたれる。
「はぁ……大丈夫?」
「だいじょうぶ、じゃ、ない」
 ぬぷ、っと抜かれたそこはべとべとして、はくはく、まだ抜かないで、とその太いペニスを愛おしそうに探している。変なふうにイっちゃった体はまだ震えて、今ちょっとでも触られたら大きな声を出してもう一度イってしまいそう。
「ばかぁ……」
「怒った?」
「違う……きもちよすぎ、ばか」
「っはは」
「わらわ、ないでよ。てか足腰、強すぎ」
「今でもスケートで鍛えてるから」
 精液がたっぷり入ったコンドームを縛り、勇利くんは私を引き起こした。
「ね、それよりさ。どうするこのあと」
「私足、もうガクガクだもん。あんまり歩きたくない」
「おんぶしてあげようか」
「いい、大丈夫」
「リフトできたから余裕だと思うよ」
 そんな無邪気そうな顔したって、だめなんだから、と私はわざと膨れてみせる。勇利くんは全く心を込めず、ごめんごめんと笑いながら私のカバンを拾った。
「どうせ歩けないんだったら、ホテル行く?」
「今の今でしょ!?」
「嫌?」
「……嫌じゃない、けど……もう一回するって、言ったし……」
「りょーかい。正直な子、好きだよ」
 お手をどうぞ、と勇利くんは私に左腕を差し出した。腰が抜けて仕方がないからそれに掴まらざるを得ない。狭い路地から出ると通りにはもう街灯が点いていて、それぞれが飲んだり食べたり熱気に包まれていた。
 それにしても、街灯がオレンジ色で助かった。顔が真っ赤になっているのがバレたら困る。もっとすごいことをいっぱいしているのに、勇利くんと腕を組んだのは、初めてで、今更こんなにドキドキして、苦しい。悔しい。


END