8−6



最初に口を開いたのは、やはり近藤さんだった。

「顔を上げなさい、真尋」
「………」

私は従わなかった。

「上げなさい」

先程よりもきつくなった声色に、私はゆっくりと頭を上げる。
目の前の近藤さんの顔は真剣そのものだった。

「お前の覚悟は分かった。だから、私にも一つ聞かせてくれ。お前は…どんな剣客になりたい?」

何だか話がずれているような気もしたが、問いかけてくる近藤さんの真摯な瞳に、私は応えようと思った。
少しの間、暝目する。
思い浮かぶは――

『ちゃんと命の重さを理解して人を斬れる剣客になれば良いってことだよ』

――左之さんの言葉。

私は、近藤さんの目をじっと見つめながら告げる。

「命の重さを理解して斬れる……殺しと誠実に向き合う事が出来る剣客になりたいです」

迷い無く言い切った私に、近藤さんは破顔する。

「そうか…よく言ったな!なぁトシ…」

そう近藤さんと共に土方さんに目を向ければ、いつも以上に皺を寄せながら黙り込んでいた。

多分、このままいけば近藤さんの一言で、土方さんは私の参加を許可するだろう。
でもそれは……残念ながら不本意で。
何だかんだであの日から一緒にいる土方さんにも、ちゃんと、認められて私は参加したかった。

だから私は。
今まで守り続けてきた秘密を明かすことを決めていた。


「……もうひとつ。お二人にお話したいことがあります」

そう私が言えば、土方さんは「まだあるのか」と少し疲れたようにため息を出す。

今から話すことに二人はどんな反応をするだろう。
というか、信じてもらえるのだろうか。

本当の私を教えてしまえば、今まで重ねた日々も関係も全て失ってしまうかもしれない。
信用は無くすだろうし、どう思われるか何て想像したくない。
やっと掴んだ今が変わる事が怖い。
けど、それでも認めて欲しいし、この二人にはこれからの事を考えたら、知ってもらわないといけないと思う。
「武士」になりたい二人がこの機会を逃すはずない。
もしもの時に自分の事が足手まといになってしまうかもしれない。
それだけは絶対に嫌だった。


「先程話した俺の一番古い記憶…その時から、俺には両親と交わした約束と秘密があります」
「約束?秘密?」
「はい。約束はその秘密を誰にも言わない事。それが俺のためになる、と」
「……その秘密ってのは」

胸が早鐘が打つ。
握り締めた拳には汗がたまっている。
それでも……決めたから。
ちゃんと、言うって。

そう気力を振り絞って出した言葉は、自分でも驚くぐらい落ち着いていた。


「俺は――女、です」




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