8−7



固まってしまった土方さんと近藤さんは、鳩が豆鉄砲を食ったような顔で、口をぱくぱくさせている。
近藤さんはともかく、あの土方さんまでそんなだから、珍しいものが見れた気がする。
その顔が本当に面白く、尚且つ秘密にしていたことを言ってしまったためか、私は何だか色々すっきりしてしまった。

しばらく呆然としていた二人だったが、いち早く我にかえったのは土方さんだった。

「……今何つった?」
「あれ、聞こえなかったんですか?だから〜俺は女なんですって!全く普段は地獄耳なのに……」

すっかりいつもの調子の取り戻した私にかその言葉にか、土方さんの口はひくひくと引きつる。

「真尋が女子だと…?」
「どこを見てそう判断しろってんだ…。まぁ顔は確かに女に見えないこともないが……」

やっと自分を取り戻した近藤さんと土方さんのあんまりな言葉に少しばかりへこんだのは仕方ないと思う。

「…そうですね。あの日から俺は両親に『男の子』として育てられてきました。女の子の俺の記憶は無いし、自覚も無い」

何かミツさんの時も言ったよなぁ…と、思わず遠い目になる。
ならばこうするしか無いよな、と私は胸元の左の襟に手をかけ――

「でも、確かに体は女なんです」

一気にずり下げた。


またも目を白黒させる二人。

私の体にはサラシが巻いてある。
その左半分を露にした今、納得頂けるものと思う。
……これで信じてもらえなかったら、別に意識して隠さなくていいんじゃないだろうか。
しかし、そんな私の心配は必要なかった。

「い、いいいかん!いかんぞ!女子がこんな男二人の前で肌を晒すなど!」
「分かったから服を戻せ!」

二人が信じてくれないからこうしたんだけど…とどこか釈然としない心持ちで私は着直す。
すると土方さんはまたいつものように皺を作り話し出した。

「お前が女の自覚が欠片もない女ってのは分かった」
「いや、まあその通りですけど……黙っていてすいませんでした」

私がそう頭を下げると、近藤さんが慌てたように答えてくれる。

「謝らなくていい!ご両親との約束だったのだろう」
「そうだ、別に言わなきゃ分からなかったのに…何で話した?」
「…浪士組の事もありますし、ご迷惑になる要素を少しでも減らそうと思って」

土方さんにちゃんと認めてもらいたい。
これは死んでも言わないつもりだが。

「…確かに、お前の判断は正しい。――女が浪士組に参加するもんじゃねぇ」

やはりそうきたか。
予想していた言葉にため息が出る。

「お前の剣客としての覚悟は分かった。でもな、女がやっていける程甘いもんじゃねぇぞ」
「そんなの土方さんだってまだ知らないじゃないですか。ていうか女だと知った途端女扱いしないでもらえますか」

私の言葉に言い返せないのか、土方さんはう、と言葉を飲む。
近藤さんは困ったような顔をしながら口を開かない。

――このままでは埒があかない。

そう判断した私は、横に置いていた脇差を手に取り、鞘から抜く。
左手で結われた髪の毛を持ち、肩ぐらいの位置に刃を当てる。
私の行動の意味を悟った土方さんが膝を立てた。

「おい、まさか」

その言葉が最後まで紡がれることはない。

刃物がすれる、小気味良い音が鳴る。

――私が右手に力を入れたから。




口を開けたまま二の句が継げない二人。
そんな二人を気にもかけず、私は自分の手にある髪を取り出した懐紙の上に置く。
それをすっと二人の前に差しだし、私はにっこり笑った。

「髪は女の命――と言うのでしょう?」

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