愛に溺れる




彼が私に触れる度、体が熱を帯びていく。どうしようもない位に胸が高鳴って、彼の頭を掻き抱くように引き寄せた。胸に幾度となく振れる唇が擽ったい。壊れ物のように私に触れる優しい手がもどかしい。もっと触ってほしい。もっと、もっと、私の内を暴くように。あなたの内に潜む酷く寂しがりな心を、もっと私にぶつけて欲しい。大丈夫。私はあなたを置いていったりしないから。

「好き…、」

掠れる声でそう伝えると、建人さんはまた優しく私にキスをする。それは次第に互いの唇を貪るように深く深く…。

「小春。」

彼が私の名前を呼ぶ度に、低く掠れた声が耳に響く度に、

「建人さん…、もっと、名前を呼んで…。」

私はあなたの愛に溺れていく。焦らす様に私を見つめる優しい瞳にも。

「小春。」

胸の頂を口に含みながら、囁くように名前を呼ばれる。その度に私の中は、もっと、もっと、と彼を誘うように震えた。大きな手が私の胸を覆い、包み込むように揉まれる。吐息に熱がこもって、恥ずかしくなって手の甲で口元を覆えば、すかさず指が絡めとられてしまう。ねえ、私、本当に幸せなの。命を懸けて私の呪いに立ち向かったあなたと、成り行きとは言え夫婦になって、でもちゃんと心も通じ合えて、本当に幸せ。

「あぁっ!」
「シーッ、隣近所に聞こえますよ。あなたの可愛い声を他の者に聞かせたくない。」
「はぁ…んっ、でも…ぁんっ、」

この前はもっと啼けって言ったくせに、意外と嫉妬深い所も好き。愛されていると実感できて、喜びさえ感じる。彼の言葉とは裏腹に、耳を探るように動く舌が擽ったくてまた声が出る。耳から首、鎖骨、胸、とキスをしながら舌が這っていく。脇腹に唇が触れると、軽く歯を立てられた。噛まれるのかと思えばまた舌が這って、気を抜くと太ももを触れるか触れないかの距離で撫でられる。これが堪らなくもどかしいのに、堪らなく興奮する。私のそこはもう充分なほどに濡れてしまっているのに、彼の執拗な愛撫は終わらない。

「建人さん…、お願い…、」
「どうしました。」
「…下も触ってほしい…。」
「…どのように。」
「…ん…、いじわる…。」
「ではこのまま続けます。」
「ゃ、やだ、お願い…、我慢できない…。」

縋るように彼の手をそこに導けば、色を含んだ笑みが返ってくる。きっちりと分けられていた七三も、少し乱れて垂れ下がっているのがたまらなく色っぽい。するすると足から抜き取られたショーツを、見せつけるように彼が嗅いだ。

「やだ…!」
「…はぁ…いけませんね。厭らしい匂いがします。」
「…もう、建人さんのえっち…。」
「あなたの体の方が厭らしくえっちですよ。」

ぱさり、ショーツがベッドの下に落とされて、彼の指は私の茂みに隠れて膨れる蕾をするりと撫でた。割れ目に添えられた指が私の中から溢れ出した彼への恋慕に触れた。私の想いが通じたのか、建人さんは満足そうに微笑むと、私の唇に噛みつく。そのままゆっくりと指が私の中に沈んで掻き乱し、口付けながら漏れた私の上ずった声が静かな部屋に響いた。

「小春、愛しています。」
「あっ…んっ、私も、はぁ…建人さん、もっと、酷くして…、」
「…後悔しても知りませんよ。」
「…後悔なんてしないです。あなたの愛なら…、」

酷く優しかった手付きが少しずつ荒々しくなって、私は押し寄せる快感に身を任せた。ぐちゅぐちゅと響く水音を、聞こえますか、と問いながら返事の余裕もない程に彼は私を掻き乱した。

「はっ、ああっ!あぅ、うっ、…イ、くっ!あああっ、ダ、メ…ぁあっ!」
「…可愛いですよ、小春。」
「はっ…はあ…んっ、建人さん…っ、キス…して…、」

縋るように口付けを乞えば優しく降るキスの雨。息が乱れたままでも構わず必死に舌を絡めると、大きな手が頭を撫でた。いつの間に取り出したのか、パッケージを破る音を遠くに聞きながら、私の中に入って来た彼を受け入れる。苦しいほどに圧迫感を感じながらも、それはすぐに快感に変わる。ゆっくりと私のいい所を擦るように動く建人さんの、厚い胸板に手を伸ばす。私の手を取り、色のある吐息を吐きながらキスをする顔に見惚れた。

「小春…愛してる。」

普段より崩れた口調で囁く愛が心に沁みて彼の事を締め付けていた。私も愛してる、と返すと、彼がまた笑った。ゆっくりとした律動が次第に私の奥をトントンとノックして、私も彼をもっと奥に導こうと彼の背に足を絡めた。

「建人さ、あっ、ん…気持ちいっ!好き…っ!」
「小春…っ、はっ…、」
「んっ…もっと!ああっ!」
「綺麗だ…、小春っ、」
「ぁんっ!」

ビクビクと私の中が震えて果てると、彼がするりと抜け出して私の体をうつ伏せに転がす。脚を閉じられて、建人さんが上に覆いかぶさると同時に、また私の中に彼が入ってきた。私の中に無理矢理押し進もうとする彼のものを締め付けてしまうと、それがまた気持ちが良くて、奥を抉るように突かれた。体が快感に耐えれずに震えて逃げようとする私を、建人さんは許さない。何度も果てながら、彼を離すまいと体は勝手に締め付けていく。

「ゃ、奥に…あんっ!イってるから…っ!」
「小春、」
「あっ、なにっ!ああっ…だめ、奥っ…んぁっ!建人さん…っ、好きっ!ぁっ…んっはあ…ぅああっ!」
「小春…っ、愛してる…ぅっ!」

二人同時に果てると、荒い息の建人さんが私の背中にまたキスを降らせた。首を彼に向けるように振り向けば、今度は窒息する程激しくお互いに舌を絡め合った。心地よい愛の波に、私達は再び溺れるように交わり合った。



 


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