二人の休日




小春との食事は楽しかった。いつもと違う雰囲気の彼女に私の心臓は柄にもなく騒ぎ立てている。アルコールで染まった頬はより愛らしさが増し、楽しそうに笑う鈴のような声が心地よい。食事を終えるとタクシーで帰った。タクシーの中でうとうととする彼女を自分の体に凭れさせる。マンションが近付くと小春を起こし、料金を支払って彼女の肩を支えながら部屋に戻った。眠気と戦いながら歩く小春の姿に笑みが浮かぶ。明日は私も休みを取った。小春も休みな為、二人で出かけようと話した。小春の呂律の回っていない返事を聞きながら、小春をソファに座らせた。

「小春、水を飲んでください。」
「ふふふ、建人さあん。」
「なんですか、小春。」
「んふ、んふふっ、すきぃ、」
「…やはり、私以外の人の前でお酒を飲むのは止めてください。」
「えー?」

小春の介抱をしながら、時折彼女の写真や動画を撮った。明日彼女に動画を見せて、自分の酔った時の異常な可愛さを知って貰わなければならない。小春は水を飲みながら、私の顔を見てふにゃりと笑っている。

「寝る準備をしますよ。化粧だけでも落としてください。」
「はぁい。」

洗面所に彼女を連れて行く。化粧を落として顔を洗うと、少しは酔いが醒めて来たらしい。欠伸をする小春にタオルを渡す。

「…建人さん、私飲み過ぎてましたか?」
「いえ、量はそれほどでも。久々の外食で気分が高揚して酒が回っていたのでしょう。」
「…お風呂入りますか?」
「入浴中に倒れるような事がないなら、入りましょう。」
「多分大丈夫です、落ち着いてきました。」

そう言ってほほ笑む小春にキスをすると、一緒にお風呂に入った。流石に今日は彼女に触れるのは我慢した。酔っていたこともあり、逆上せて倒れてしまっては困るので、シャワーで済ませる。寝支度を終えると、小春とベッドに入る。彼女に腕枕をしながら、明日はどこに行くかを二人で話し合う。水族館に行きたいという彼女の要望に応えるべく、頭の中で近場で思い浮かぶ水族館をピックアップした。

「品川にある水族館に行きましょう。」
「あ、いいですね!クラゲ見たいです!」
「ではそこで。」

小春を抱き締めて眠り、翌日。朝食を食べると身支度を整えて家を出た。手を繋いで駅まで歩き、電車で品川へ。駅からすぐのそこは休日という事もあり人が溢れていた。入場料を支払ってはぐれない様にしっかりと手を繋ぎ直し中へ入る。小春が見たがっていたクラゲの展示コーナーや、ペンギン、アザラシ、イルカ、様々な生き物や魚たちに目を輝かせる小春を見て、来てよかったと思った。彼女の横顔を見ながら、時折写真を撮った。その度に照れたように笑う小春の顔が愛おしい。館内にあるアトラクションコーナーでメリーゴーラウンドに乗りたがる小春に手を引かれ、私も乗る事に。はしゃぐ小春を動画に収めながら、幸せな時間を堪能した。

「絶対に嫌です。」
「建人さんお願い〜。一枚だけでいいですから!」

帰り際にどうしても寄りたい所があると言われ着いて行くと、小春はゲームセンターに入った。辿り着いた先にはプリクラ機。小春が私と撮りたいと言って聞かず、結局カーテンの中に引っ張り込まれてしまった。機械を楽しそうに操作する小春に、私は結局大人しく従った。カウントを告げる声を聞きながら、小春に言われたとおりにポーズをとる。…二人でハートを作った。身長差があり画面から切れてしまう私は、常に中腰だった。

「わー、最近のプリクラ凄いっ!建人さんの目が凄くデカくて可愛くなってますよ…ふふっ!」
「…だから嫌だと言ったんです。」

普段の私ではありえない程パッチリと開いた目に、小春はずっと笑っていた。そういう彼女の目も異常なほど大きくなっている。最近は目を大きくする写真が流行っているのだろうか。プリントアウトされたプリクラは財布に仕舞った。小春は満足したらしい。

「次は建人さんの行きたい所に連れて行ってくださいね?」
「…では、連休に泊りで出掛けましょう。先週の座敷童にあなたと泊りに来ますと言いましたから。」
「いいですね、行きましょう!私も座敷童に会えるといいなぁ…!」

帰りの電車で隣り合って座る。手は云わずもかな繋いだままだ。小春が私にスマホの画面を見せた。見れば内カメラになっている。小春がシャッターボタンを押す瞬間、彼女の頬にキスをした。幸せな休日をありがとうの意味を込めて。



 


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